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「ふぅ、スッキリした」

「なんかやりすぎだと思うんだけど…」

「でも気持ちよかったでしょ?」


笑顔でそんなことを聞くもんだから、「ま、まぁ…」と曖昧に答えた。
深瀬はコンドームの端をキュッと縛り、そのままゴミ箱へ捨てようとする。


「いやいや、ダメでしょ!絶対バレる」


とか言いつつ他に捨てられる場所も無かったから、せめて教室じゃないゴミ箱にしようという意見でまとまった。
バレたらバレただ。もう知らん。


「というか、なんで今コンドーム持ってるんだよ…」

「いつ何が起こってもいいように。男の身だしなみの1つ」


ちゃんとしてるんだか、してないんだか分からないな。

時間を見たらもう5時だった。8時から朝会がある。それまでの間少し眠れるなと思った俺は横になった。相変わらず俺の毛布は深瀬の抱き枕になっている。


「一緒に入る?」


にやにやしながら毛布を片手でまくって言ってきた。憎たらしいったらありゃしない。俺は意地を張って「大丈夫」と断れば、あっさり毛布を返してくれた。なんだよ、だったら余計なこと言わないで最初から返せ。


「じゃあ福田が抱き枕になって」


そう言いながらものすごい腕力で抱きついてきた。苦しい…。
そのまま深瀬は目を閉じて寝てしまった。

スースーと寝息をたてるその端正な顔を見たら、起こすのも悪い気がしてきてそのまま俺も目を閉じた。


***


「えー、それでは朝のラジオ体操をするので広がってください」


…眠い。とにかく眠い。このまま倒れそうだ。

あれから成瀬に起こされた俺たちは、ちゃんと予定通り朝会に参加している。我ながらえらい。
深瀬に目をやれば、彼も気だるそうに動いていた。二人して寝不足なのを気にした成瀬が心配してくれたが、まさか「抜きあってました」なんて言えるはずもなく罪悪感が募る。

近くで女子たちが「なんか深瀬君の色気やばくない?」とか言っている。寝不足でさえも味方につけるなんてさすがイケメンだ。

ぼーっとしながら深瀬を見ていると、突然こっちを向いた彼と目があった。
そのまま深瀬は軽く笑うと、また前を向いて体操をはじめた。
「キャー!今深瀬君がこっち向いて笑った!」という女の子の声を聞きながら、俺は自分の心臓の鼓動が早くなるのを感じた。

三章終わり



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