3-6

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「…晴人…またトイレかよ…一人で行ってこい…」


俺の毛布が引っ張られる感覚がして、また晴人が起こしに来たんだと察した。

…ん?晴人?

いや、俺は今学校にいるんだった。
どうやらあのまま寝てしまったらしい。
じゃあ毛布を引っ張っているのは誰だ?


「…福田うるさい」


そう言いながら深瀬は俺の毛布を剥ぎ取り、その毛布を抱き枕にして目を閉じた。ふざけんな。


「おいっ返せ!」

「んー…」


寝ぼけてやがる。
今は午前4時だ。大きな声は出したくない。
俺は深瀬に奪われた毛布を引っ張ってみたが、びくともしない。こいつの腕力どうなってんだ。

仕方なく毛布を諦めて寝直すことにした。そう、俺は諦めの良い男なんだ。良くも悪くもね。

そして再び横になったときに気づいてしまった。いや、薄々分かっていたのかもしれない。


「朝勃ちですなぁ…」

「うわっ!」


寝ていると思ってた深瀬が急に横から話しかけてきた。
まぁその通りだ。
俺の股間は元気に上を向いている。正直これは生理現象だから仕方ないのだ。最近抜くタイミングがなくて溜まっていたのもあるかもしれない。
「男は難儀なものだ…」とか思いながら、再び寝直すことにした。


「そのままでいいの?」

「そのうち戻るからいい」

「女子部屋行く?溜めるの良くないよ」

「…なっ!」

「冗談だよ」


冗談にしては質が悪すぎる。
深瀬はふふっと静かに笑った。
でも確かにこのままだとツラいなと思ったのは事実だ。溜めるのも良くない。トイレでこっそり抜いてくるのもアリだな。


「トイレ行ってくる…」


一声かけて立ち上がろうとすると、ものすごい力で手を掴まれた。だからこいつの腕力どうなってんだよ。


「消灯時間すぎてるよ」

「トイレぐらい大丈夫だろ…」

「それ抜くんでしょ?手伝おうか?」

「はぁ?いいよ一人でやるから!離せっ…」


なんてことを言うんだ!俺は早くこのめんどくさい作業を終えて寝たいんだ。お前の相手してる暇はない。


「つれないこと言うなよ。自分でやるより他人にやって貰う方が気持ちいいだろ」

「余計なお世話だ!俺は早く済ませて寝たいんだ」

「恥ずかしがるなって。それに、この時間に教室出ていくの見つかったら厄介だよ」


そう言うと深瀬は、俺と一緒に毛布にくるまるように近づいてきた。


「…え、ま、まじ…?」


「本気でやるのかよ」って聞けば、人差し指を口元にあてて「しー」と言われた。
この教室は俺と深瀬以外にも何人かクラスメイトがいる。バレたらそれこそ厄介だ。

不意に深瀬が俺の股間を撫でてきた。
さっきまで我慢していた分敏感になっている。


「あっ…ちょっ急に…」


深瀬は俺の表情を見てにやにや笑った。
ゆるゆると触るその手付きにもどかしさを感じる。そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、ずっと服の上から撫でてきた。


「…やるならちゃんとやってよ」


そう言うと深瀬は笑みを深くして俺の下着の中に手を入れた。待ち望んでいた直接的な刺激にビクッと体が揺れる。


「あっ…」


深瀬の暖かい手が俺の中心を包み込み、上下にゆっくり動かし始めた。先走りがぐちゅっと音をたてて恥ずかしい。


「気持ちいい?」

「う、うん…」


ときおり裏筋や根元の部分を緩急つけて刺激してくる。
正直自分でやるより全然気持ちがいい。同じ男だからどこが気持ち良いとか分かっている分、的確に刺激を与えてくるのだ。
あくまでもゆっくり焦らすように擦ってくるもんだから、ぴくっと体がいちいち反応してしまう。


「ふっ…んっ…」

「ここは?」

「あっ!…ふっ…」


深瀬が尿道にぐりっと爪をたててきた。
急な刺激に思わず大きな声が出てしまい、慌てて自分の口を手で抑える。そんな俺を見て深瀬は薄く笑い、裏筋を擦りながら尿道をぐりぐり刺激してきた。


「んっ!…んっ…ふっ」


やばいやばい、声が出ちゃう!
「そこはやめて」と目で訴えると、視界が深瀬の顔でいっぱいになるぐらい近づいてきて、そのまま「ねぇ」と耳もとで囁かれた。
まぁ、お綺麗なお顔だこと。


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