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あの後ちょっと仲が悪くなった俺たちは、午前の身体測定を終えて、午後まで空き時間があるので教室で休憩をすることにした。


「何食べたら1年で11cmも身長伸びるわけ?」


俺は、元チビから見事抜け出すことに成功した成瀬に質問した。
いいか深瀬、俺はやられたことを根に持つねちねちタイプだ!お前が俺の身長をバカにしたこと、絶対忘れないからな!

自分で言っといてあれだが、俺すげーめんどくさい奴だな。


「そんなこと言われてもなぁ。普通に生活してただけだよ。ただ単に成長期なだけだと思う」

「そうだぞ福田。身長は遺伝だから諦めろ」

「深瀬に聞いてない」


…おや!?深瀬のようすが…!

某モンスターゲームのタマゴが孵化するときのセリフみたくなったが、ただ単に深瀬がヘソを曲げただけだ。
ちょっと言いすぎた、ごめんて。

頬を膨らませ、あからさまに不機嫌な態度を示す深瀬のほっぺたをつつきながら色々考えていたら、「遺伝かぁ」と心の声が漏れた。
あ、余計なこと言ったかもと一瞬焦ったが、その一言が拾われることは無く安堵した。
いくら気にしてないとはいえ、自分の親がどんな人だったか思い出すことはある。とはいえ、ろくでもない思い出しかないから、考えたところで後悔するだけだ。

1人でそんなことを考えていたら、いつのまにか3人ともスマホに夢中になっていた。まったく現代っ子め。スマホの相手してないで俺の相手しろ。俺は寂しがり屋なんだ。

特にやることが無くて、手持ち無沙汰で手遊びをしていると、羽柴に話しかけられた。


「福田の連絡先教えてよ!ロリっ子☆プリンセスの話とかいろいろしたいからさ!」


まずい、そうきたか。
ロリっ子☆プリンセスを全然知らないことがまずいのではない。俺は携帯を持っていないのだ。もちろん啓介や春香たちも持っていない。これは施設のルールだ。
でも高校生になったらバイトもできるし、雅人さんに相談してみるのも良いかもしれない。


「お、俺、今携帯壊れてて持ってないんだよね」

「えーまじかよ!それは大変だな!じゃあ治ったら教えて」

「治ったらね…」


壊れたとか余計なこと言うんじゃなかった…。羽柴の屈託無い笑顔を見て、嘘をついてしまったことに罪悪感が募る。


その後俺たちは適当に昼食を済ませ、午後の検診を再開した。ちなみに深瀬はまた豆乳飲料を飲んでいた。今回の味はさくらだ。春だな。


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