2-4 場所は体育館。 まだ生徒は数人しかいない。この調子だとすぐ計測できそうだ。 「俺この1年でだいぶ身長伸びたと思うんだよなー。なんか、バッターボックスに立ったときの視線の高さが全然違う」 羽柴が自信有り気な顔でそう言った。 なんだその弱すぎる根拠は。 「羽柴は野球やってるんだね」 とりあえずバッターボックスという単語が出てきたので話を広げてみた。 「いや、やってない。俺はテニスをやってる。野球はほとんどやったことない」 やってないんかい。 え、じゃあなんでバッターボックスを背が伸びた根拠に出してきたんだ?テニスやってるならネットの高さとかもっと他にあるだろ。 そもそも、ほとんどやったことないのに視線の高さが違うとか分かるのか…? 「お前バカだろ」 羽柴に対する一連のツッコミを心の中で終えたところで、深瀬が俺の言いたいことを一言にギュッとまとめて羽柴に言い放った。 身長計の前まで行くと、係の人に名前順で測りますと言われたので成瀬・羽柴・深瀬・俺の順に並んだ。 1番後ろはみんなに注目されるから嫌だなぁと思ったが、この際は仕方ない。 「成瀬!お前身長いくつだった?」 羽柴が、計測が終わった成瀬に聞いた。 「171cm。1年で11cm伸びた」 11cmだと!?急激に成長しすぎじゃないか!?どんな生活すればそんな伸びるんだ。 「すげー!お前めっちゃ成長期じゃん!」 「毎晩足の成長痛が半端なくて地獄だよ…」 やつれた顔で成瀬はそう言った。 確かに11cmも伸びれば成長痛は相当なものだろう。全く贅沢な悩みだ。 俺が成瀬の急激な成長ぶりに驚きを隠せないでいると、今度は成瀬が羽柴に聞いた。 「羽柴はいくつだった?」 「俺は185cm!1cmしか伸びてねぇ…」 でかいな。 そんだけあればもう十分だろって思ったが、スポーツやってる人からしたら高ければ高いほど良いらしいからな。俺はスポーツの習い事とかしたことないから分からないけど。 「さっき羽柴、バッターボックスの視線の高さが違うとか言ってなかった?1cmしか伸びてないじゃん」 呆れたような笑みを浮かべながら成瀬が言った。どうやら矛盾に気づいたようだ。俺もそれ気になってた。 「おっかしいな…。地味にショックだわ」 「その…野球したのいつぶりなの…?」 「6年ぶり」 「「「そりゃそうなるわ!!!」」」 いつの時代と比べてるんだ!? ここまで馬鹿だとは思わなかった! 計測中の深瀬までツッコんでしまい「あっ、動かないでくださいっ」って言われてるではないか。 11 目次しおりを挟む |