2-3 そんな話をしていたら身体測定の時間になったので体育着に着替え始めた。 深瀬がネクタイを外し、長い指でワイシャツのボタンを1つ1つ外していく。 うわーうわー動作1つとっても格好いいなこいつ。 これを見られない女子は可哀想だ。 深瀬が完全に上裸になったとき、無意識にちらっと体を見てしまった。ほら、同性でも友達の体格とか気になったりするだろ? 彼の体は色白で細身なわりに程よく筋肉がついていて、正直男として羨ましいと思った。 「福田見過ぎ」 「…へ!?いや、えっと…程よく引き締まってて良い体してるなぁって。なんかスポーツとかやってんの?」 「セクハラで訴えよ」 「なんでだよ!羨ましいなと思ったから褒めただけじゃん!」 「さっきから見方が変態っぽいんだよ」 あ、チラ見してたのもバレてた。 だって人間は男女問わず美しいものに目が行くものじゃん。別に変な目で見ていたわけではない。 てぃくびがピンクだったとか決して思ってない。断じて思ってない。思ってないからな! 「小学生の頃から剣道やってる」 俺が深瀬のてぃくびを思い出していると、彼は体育着を着ながらそう呟いた。 なるほど。筋肉があり過ぎず程よく締まっているのはそのためか。その様子だと部活は剣道部あたりに入るのだろう。 1人で納得していたら、先に着替え終わった深瀬が俺のネクタイで蝶々結びを作りながら待っていてくれた。待ってくれるのは嬉しいが、皺になるのでその手遊びは是非ともやめて頂きたい。 「男女に分かれて名前順で班をつくれー」 先生の指示通り俺たちは班を作るために指定された場所に集まった。 どうやら班員は4人ずつらしい。 「あ!俺は羽柴太一!よろしくな!」 「成瀬翔です。よろしくお願いします」 俺と深瀬以外のメンバーはこの2人のようだ。なんていうか、性格が真反対の2人だな。 「俺は深瀬優太です。そんでこいつが福田結斗。福田は地下アイドルの『ロリっ子☆プリンセス』が好きで、休日はいつも会いに行ってるらしい」 「まて、なぜお前が俺の紹介までしてるんだ!しかも虚偽情報ばっか言いやがって!ロリっ子☆プリンセスってなに!?」 「恥ずかしがることは無いぞ、福田。誰しも隠したいことの1つや2つはある。それを言い合える仲が本当の友達だろ?」 さっきまで友達を否定してたくせに、都合のいいときだけ友達とか言いやがって…。 「え!?福田もロリっ子☆プリンセス好きなの!?俺もめっちゃ好きなんだよ!特にりんちゃんの、あのあどけない表情がたまらないんだよなぁ!福田は誰が好きなの!?俺たち気が合うね!」 まてまてまて。 羽柴お前、全然地下アイドルが好きなタイプの人間に見えないじゃないか。というかマシンガントーク過ぎてあまり聞き取れなかったが、俺まで本当にロリっ子☆プリンセスが好きみたいなことになってないか? そもそもロリっ子☆プリンセスってなんなんだ?そんなに人気なのか? おいどうにかしろよ、と深瀬に視線を送らせて見れば、もう興味が無くなったのかスマホをいじっていた。 あいつ覚えてろよ…。 一方成瀬はというと、身体測定で使うカルテみたいな紙にいろいろ記入していた。 真面目な人だなぁと感心していたら、顔を上げた成瀬と目が合う。 「俺たちの班は、最初に身長と体重を計測しに行くみたいだね。混まないうちに早く行こう」 「うん、そうだね。しっかり者の成瀬君がいてくれて助かるよ」 そう言うと成瀬は、目を細めてふっと微笑んだ。 なんていうか、泣きぼくろがこんなに似合う人はなかなかいないと思う。 「成瀬でいいよ。君付けは、なんかよそよそしいから」 「あ、じゃあ俺も福田でいいからね!」 「福田君」 「なんだい深瀬君」 「俺はあえてよそよそしくするね」 ただの嫌がらせとしか思えない深瀬のだる絡みを軽くあしらって、俺たちはその場を移動した。 10 目次しおりを挟む |