2-2 「今日の身体測定と健康診断、名前順の班で周るんだって。はぁ、また福田と一緒かよ」 そういえばそんなことを昨日先生が言ってたな。 確かに深瀬と俺は名前順が前後なので最近一緒になることが多い。しょうがないじゃないか。お前は深瀬で俺は福田なんだから。 それに「福田」という名字は無戸籍の俺に市長さんが付けてくれた大切な名字だぞ。 あと、人見知りの俺からしてみればお前がいてくれてだいぶ気が楽だ。正直感謝している。 「俺はお前と一緒でうれしいぞ!」 「…あっそ」 お、深瀬の耳が少し赤い!さてはお前ツンデレだな!うふふっ 「れいかちゃん今日も可愛い…」 とんだ俺の勘違いだったらしい。 勘違い男はこの世で1番嫌われる存在だと春香が言ってた。気をつけよう。 「深瀬ぐらいイケメンだったらすぐ付き合えそうだけどな」 「付き合ったらそこまでじゃん。他の子とも遊びたい」 さすがプレイボーイだ。言うことが違う。 俺なんか、とりあえず彼女が出来ればいいと思っているレベルだ。 「福田って彼女いたことあんの?」 「えっ!い、一応あるけど…」 「へぇ、なんでその子と別れたの?」 なんで1人しかいない前提で話を進めるんだ。 いやまぁ、1人しかいないんだけど。 別れた原因は、春香と一緒に帰ってるところを見られて、浮気と勘違いした彼女にビンタされて振られたんだっけ。懐かしいな。 でも春香と帰る場所同じなんだから仕方ないじゃないか。もっといえば、一緒に暮らしてるんだぞ。物心付いたときから春香とは一緒にいるから家族みたいな存在で、恋愛感情なんてあるはずがないのに…。 もちろんそんな諸事情を言えるはずもなく、そのまま別れてしまった。今となっては良い思い出だ。 「…聞いてる?」 「あ、ごめん。なんだっけ?」 「別れた理由」 なんで今まで俺の話に一切興味を示さなかったのにこの話にはこんな食いついてくるんだ。そんな平凡の恋愛事情が気になるかね?え? そうやってまた平凡のくせにって嘲笑うのか?いいよな!お前はイケメンだから! ………だめだ。拗らせすぎて偏屈になってきている。俺めちゃくちゃ嫌な奴みたい。 「はやく」 「え、えっと…簡単に言うとですねぇ、違う女の子といるのがバレまして…」 「福田のくせになかなかやるな」 「ありが…とう…?」 「褒めてないけど。ちんちくりんな見た目の割に、やることが最低だなって言ってるの」 ちんちくりん…。確かに童顔だとは言われるが、ただ年齢より若く見えるだけで、いわゆる「男の娘」とかそういう類の顔ではない。もっと中性的な顔だったら、女の子からチヤホヤされていたのだろうか…。 というか、深瀬に最低とか言われたくない。 9 目次しおりを挟む |