2-1

慣れとは恐ろしいものである。


「深瀬おはよ」

「…」

「…あれ?無視?泣きそう」

「福田の泣き顔とか誰得?清々しい朝にそんなもの見せんなよ」


だってこんな扱いされるとは思わないじゃん。
あの頃は「福田君」「深瀬君」って呼び合ってたんだよ?ほらよく言うじゃん。初心忘るべからずって。もうちょっと深瀬はあの頃みたいに俺に優しくしてくれてもいいと思う。

まぁ今更言うまでもないが、席が近いこともあって俺は深瀬とよく話すようになった。そして彼の俺に対する当たりもどんどん強くなっていった。
というか俺、未だに深瀬ぐらいしか話す相手がいない。


「俺、お前ぐらいしか友達いないかも…」

「え、俺ら友達なの?」

「…え?」

「え?」


そうか、俺は一方的に友達だと思い込んでいたらしい。これはすまなかった。


「僕と友達になってください」


そもそも友達って、こんなふうに改めて「友達になろう」とか言ってなるもんなのか?
そんなことを考えながらプロポーズするかの如く差し出された右手は握り返されることはなかった。
まったくシャイなやつだぜ。

俺の迫真の1人演技を無視した深瀬は、バナナ味の豆乳飲料を飲み始めた。昨日は白桃味だったな。おいしいよね、キッ○ーマンの豆乳。俺も好き。


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