守護者強制招集


マフィアに関わると人権がなくなるのかもしれない。


本日学校より帰宅したらポストに一通の手紙が入っていた。守護者は今日の23時並盛中に来いとのこと。命がある守護者は全員集まるようにだとのこと。
……この書き方……誰か、亡くなったのかな……?

………………違うよね。断りたいなら死になさい、もしくは守護者を辞退しなさいという脅迫だよね。わぁ嬉しいな。行かなければ守護者辞めてもいいんだから。よし、無視しよう。

すやぁと眠りの世界に入っていたのだがまた起こされた。今度はチェルベッロさんではなくて恭弥だった。一緒に行こうってか。守護者の自覚芽生えてて素晴らしいと思います。恭弥の中では私も守護者なのかな? だけどさ……お願いだから鍵かかっていたら入ってこないで……! 鍵が意味ないじゃない。
恭弥はチェルベッロさんと違って着替える時間を与えてくれた。適当な私服に着替えて適当に身支度を整えて共に夜の学校に向かう。


「朝も思ったんだけど恭弥が一緒に行こうと誘ってくるの珍しいよね。頭打った?」


睨まれた。降伏の意を表して両手を上げる。頭打ったか思われるほどの衝撃的な行動をしていることを自覚した方がいいよ。
しばらくすると恭弥は視線を外して、それでも私の隣を歩き続ける。


「頭打ってなかったらディーノさんに感化された? ディーノさん紳士でカッコいい本物のイケメンさんだよね、…………恭弥はディーノさんの名前もNGなの?」


形相な顔つきだ。骸の名を出した時と同じように眉を曇らせていた。……ということはディーノさんに負けたのか? 修行で並盛の土地を離れていたのは知っているけど、その時に負けたのかな?


「……ほら、ディーノさんマフィアのボスだし強いの当たり前だよ」


だからあまり気にしない方がいいよ。
フォローするのだが恭弥の顔は変わらない。
ディーノさんは恭弥より窮地に立たされること多かっただろうし、ディーノさんの方が戦闘経験豊富だろうし、ディーノさん恭弥の家庭教師できるほどの強さだし、とフォローすればするほど恐ろしくなる。居心地が悪い。


「紗夜は」

「うん!?」

「紗夜は強い奴が好きなんだ」


強い人?

そうだなぁ……。これからマフィア世界に足を踏み入れるとしたら私を守ってくれる強い人がそばにいてほしい。あとマフィアとか関係なく守ってもらうというシチュエーションに憧れている。マンガとかであるいじめっ子を成敗する主人公とかカッコいいと思うし。……それらから考えると………。


「うん。そうかもしれない」


単純な力比べもそうだが人として強いというのかな。現実世界ではあまりわからないけれどマンガではよく見るよね。かっこいいよ。そういう人。
だけど現実世界は強い人というより性格になる。ディーノさんや骸は好きだけど、暗殺部隊は論外。


「恭弥こそ強い人好きでしょ?」

「………………………そうかもね」


恭弥の好きなタイプはわかりきっている。リボーンだ。リボーンは強い強い、とみんな言うけれど本当に強いのかは知らない。恭弥の攻撃を受け止めたのは見たことあるので、イコール強いだよね。あ、それなら恭弥の頭をスリッパで叩いた綱吉も強いだ。……綱吉強いのか?


「だけど」


もしかしたら綱吉は暗殺集団より強いのかもしれない。今まで見てきた綱吉は本当の姿を隠すために演技されていた綱吉であって、本当は恭弥や骸より強かったりして……。
そんな人が今まですぐそばにいたの? 命握られてたじゃん。


「弱いのも好きだよ」

「は?」

「着いたね」


学校についてしまえば恭弥は私を置いていく。私のこと無視してどんどん歩いていく。


「嘘だろそれは……」


弱い人は存在すら認識しないじゃないか。強い人は一度で名も顔も覚えて探すのに、弱い人は記憶に残していないだろう。草食動物と嫌っているじゃないか。有象無象だろう。それが恭弥じゃないか。とんだ嘘をつきやがって。誰が得するんだその嘘で。信じるやつは世界中どこを探してもいないぞ。
やっぱり恭弥は何かおかしくなったな。ディーノさんのイケメンオーラに感化されて性格が柔らかくなったら万々歳なんだけど。












並中にはランボも集められていた。昨日の私と同じようにチェルベッロさんに意思関係なく無理やり運ばれて。酸素ボンベつきで。よく見ると違う人だったけどランボを連れて来た人もチェルベッロさんらしい。チェルベッロって名前じゃなくて組織名なの? それともたまたま名前が同じなの? とりあえずチェルベッロさんは鬼だ。
暗殺部隊ヴァリアーも怪我人がたくさん集まってくる。招集がかかったらどんな姿だろうが集まらないといけないらしい。ベッドのまま連れてこられたモヒカンさんが綱吉たちに諭していた。なんだあの重症患者モヒカンさん。守護者の鏡じゃないか。私なんてピンピンしているけどバックれようとしたのに。

あれ? 少ない? ひぃふぅみぃー……とヴァリアーの守護者を数える。目つきの悪いリーダーに、昨日もいた二人。守護者の鏡のモヒカンさんにアルコバレーノらしき赤ん坊……ではなく藍色のおしゃぶりがあるから正真正銘のアルコバレーノ。……うん、やっぱり二人足りない。確か、あと二人は…………。


「声がうるさくて憎たらしいほどきれいなストレートの長髪の人は?」


機械のような巨躯は昨日恭弥がぶっ壊していた。だからいないのは一人だけ。ランボやモヒカンさんはいるのにロン毛だけがいない。
ただの疑問になぜかみんな静まり返る。特に山本くんが悔しそうに辛そうに唇を噛んでいた。ごめんなさいと言いたくなるような雰囲気だ。


「スクアーロの生存は否定されました」


あのお姉さんもチェルベッロさんなのかな? 組織名か名前かよくわからないけれど、こちらも羨ま憎たらしいストレートが今日はいい天気だね、といったように普通に答える。私の身体が硬直したよ。来た時から隣にずっといてくれるクロームちゃんが手を握ってくれた。


「っ、悪りぃな紗夜……その、オレスクアーロを助けることできなかった……」

「いやっ! 山本くんが謝ることじゃないよ!! 今みんながやっているのはそういう世界の勝負なんでしょ!!? だから、山本くんが………謝ることは……」


そっか。そういえば山本くんがロン毛との勝負だったけ? そんな感じのこと前に言ってた、ような。ロン毛の名前スクアーロって言うんだ。初めて知った。

今行われているのは命をかけた勝負。これから行われるのも命をかけた勝負。それは聞いているし今聞いたけれど、本当に死人が出ているなんて思わなかった。…………死んじゃ、ったのか。……それは悲しいな。
知らない人だった分まだ哀しみは薄いけれど、それでも辛い、な。
あんなに痛いのに。スクアーロさんがどうやって死んだかはわからないけれど、お腹に刃物が刺さるのはとても痛い。簡単に死なせてくれないから何度も突き刺してきた。意識を失うことはできないし反撃する力もなかったから何度も何度も刺されて痛くて……───思い出したくない。あの日は───


「紗夜ちゃん……?」

「! ごめんね。どうしたのクロームちゃん」

「紗夜ちゃん痛そうなかお、してる」

「ほんと? どうしたんだろう」


何やってんだ私は。私の勝手な悩みと問題で周りに迷惑をかけるとは。しっかりしろ。
自分の世界に入っている間に大空戦についていろんな説明があったそうだ。フィールドにルールに小型カメラに大型ディスプレイ。守護者にはカメラ搭載型モニター付きリストバンドの配布。私にはないよ。私は今回関係ないそうだ。守護者の命をかけた大空戦なのに私は出なくていいんだって。もうそれ守護者じゃなくない? 簡単に説明してもらったけれどよくわからなかった。クロームちゃんや他のみんなも大雑把にしか教えてもらってないそうで大空戦の内容はまだ把握しきってないそうだ。


「では、やるなら今しかないか…」


何を?


「円陣だな」

「気合いいれましょう!」

「! そ……そうだね」


円陣? 円陣するの? スポーツ勝負ならまだしも殺伐とした殺し合いで円陣するの? ……士気を高めるためには……あっているのかな? なんとも言えないけど。


「そうだ。紗夜も入ってよ」

「私出ないよ?」


綱吉も説明聞いてなかったのだろうか。私は参加しないよ。白虹の守護者候補は一人しかいなくて片方に依存するのは不公平だから、だと。見つけてこなかったヴァリアーの過失じゃない? 関係なくない? などといった疑問はたくさんあったが黙っといた。出なくて良いならそれでいいじゃない。どちらかに肩入れしても不利になるのは綱吉たちだけだと思うけどね。もし私が綱吉たちの味方になったらヴァリアーは私との思い出なんて何もないから簡単に殺せる。それが職業だから。そうすると綱吉たちは私を庇ってくれるだろう。きっと。そうじゃなかったら逃亡する。まぁ、とりあえず足手まといが増えるだけなのだ。
逆にヴァリアーについた場合、顔見知りである私を綱吉たちは攻撃できないだろう。ヴァリアーは思い入れのない私を守ってくれない。放置する。だからどちらについても不利なのは綱吉たち。どちらかに依存するのは不公平だね、綱吉たちが。

一応守護者という肩書きをもらっているけれどいてもいなくても同じ。


「参加すればいーだろ。出なくても鳴神はこっちの守護者なんだから」

「拙者も守護者ではありませんが円陣というものには参加させてもらってます」

「そうだな、来いよ紗夜」

「みんなでやった方が力が入るだろ!!」


みんなが嫌そうな顔をしないなら……じゃあ。クロームちゃんは断固拒否らしくて首を振られた。それなら私は一人で行かせてもらおう。密かにわくわくしている。不謹慎ながらも。
入ろうとひょこひょこと足を引きずるように歩いて向かう途中に笹川先輩から円陣10メートルルールの説明が入る。10メートル以内にいるものは円陣をしているという極限ルールだ。……すげぇ。


「お邪魔しまーす」


綱吉の隣にいれさせてもらう。


「あれ? 何を持ってるの?」

「ランボのしっぽ。……今回は本人いるし……いいかな」

「…………………服の切れ端ね! はいはい!!」


ポケットにしまった綱吉に一瞬躊躇した。しっぽというから人体の一部かと思った。けれど綱吉が持っていたのはランボの牛柄の服のしっぽ部分。ああびっくりした。
もう片方には獄寺くんが来て。綱吉と獄寺くんの背中に手を回す。二人の腕は肩にある。


「沢田ファイッ!!」

「「「「「オーーー!!!」」」」」


び、びっくりした〜〜……。
私も声を出そうとしたがみんなの声が思っていたより大きくてかき消されて途中から出なかった。円陣、侮りがたし。今も耳がキーンと痛い。
綱吉に一言ずつかけて持ち場につく守護者たち。手を振ったら恭弥以外は振り返してくれた。恭弥は笹川先輩の極限円陣ルールにお怒りだった。


……がんばってねみんな。私は綱吉 獄寺くん 山本くん 笹川先輩 ランボ 恭弥 クロームちゃんを応援しているから。

手を無意識にぐっと握っていたら残っていた綱吉が上から手を重ねてくれた。