はじまりの予感に騒がしい


家で堕落した一日を送ろうと考えていたら携帯に着信が。
今から遊ばないか、との連絡にオッケーの返事をする。

自堕落的な一日はおしまい。おしゃれをしようとクローゼットを開く。


今日がまた新たな事件の始まりとなるなんて知るわけがない。













大所帯になって商店街で遊ぶことになった。集合時、最後の方でみんなを待たせたことに焦って走ったら転びかけた。日曜日の日中の街中で転んだら大注目になる。危なかった。今日いきなりじゃなくてもっと事前に言ってくれたら焦ることなかったのに……なんでだろう。
約二名制服だし。そういえば今日補習日か。サボりだ。いけないんだー綱吉と山本くん。


「ごめんね、紗夜にまで来てもらって」

「お暇だったからだいじょーぶだよ」

「それならよかった。……オレ紗夜が来てくれたことが一番嬉しい」


はにかむ綱吉に微笑むが、心の内では私は安心して息を吐いていた。
野球部の大会前日になぜか気まずくなった日以来二人で会話することがなかった。少しギスギスするかもしれないと構えてきたのだが杞憂で終わった。あの日は少し機嫌が悪かったのかな。迷子の子には当たれないから私に当たっちゃったのかな?


「あのね、綱吉……まあいいか」


一番嬉しいなんて私には使っちゃいけないよ。話しかけにいくのも京子ちゃんかハルちゃんにしないと。それなのになぜ私のところに来たのか。気遣ってくれたの? 京子ちゃんとハルちゃん仲良しだから私が一人にならないように気遣ってくれたの? それはありがたい。たまに感じちゃうんだよね。ハルちゃん京子ちゃんの仲良しさには入れないって。蚊帳の外というか、少しだけいづらいというか。もし二人組作って、との指示があったら多分私が一人になるだろうな、という関係な気がする……けど、あの二人優しいからそんなことしないんだろうな。それが余計に辛い。
京子ちゃん、クラスにも花ちゃんという親友がいるからペアになることほとんどないんだよね。山本くんにどれだけ助けてもらっていることか。女子どうしの時辛い。自由にペア組んで制度消えればいいのに。


「みんな急なのによく集まれたねぇ」

「お兄さんは部活で来れないらしいけど」

「…………前から思ってたんだけど……綱吉って結構ぐいぐい行くよね」

「何が?」


お義兄さんなんてよく呼べる。つきあう前からそんな呼び方私にはできない。つきあってからもできる気しない。結婚してようやく言えるんじゃないかな? 想像上だけど。
それなのに綱吉はもうすでに笹川先輩を義兄さんと呼ぶなんて……。心臓どうなっているんだろう。

綱吉の疑問は笑って流した。自覚していないんだから。自覚したら真っ赤になるはずだから自分で気づくのを待とう。


「そういえばなんで今日補習ボイコットしたの?」

「あーー……。……山本と獄寺くんが気をつかってくれたんだよね」


どういうこと?
首を傾げると意味が伝わったのか綱吉はため息をついて重い口調でじめじめとした雰囲気を出す。


「今父さんが帰ってきているんだよ」

「…………例の!?」

「あれ? オレ 紗夜に父さんが二年間一度も帰ってこなかったこと話してたっけ?」

「ええ!? 失踪してたの?」

「っんーー……失踪というより出稼ぎで外国で石油を掘っているみたい。日本に帰ってくる前は南極や北極みたいなところで掘ってたみたいだよ」

「出ないよそんなところで石油」


失踪していたわけではないらしいが綱吉の家にお父さんがいなかった訳は今知った。見たことないなぁ、とは思っていたけれど私のような家庭や、私のはあまりないと思うが、例えば獄寺くんみたいな家庭の場合もあるから深く聞かないんだよ。亡くなっているとか言われたら適切な反応できないし。
でも…………


「綱吉のお父さんって……石油なんか掘るのかな?」

「どういうこと?」


ペンギンがいる氷床の写真が送られてきたらしいがそこでは絶対に石油取れないと思う。下は海だよね?

今度は綱吉が小首をひねった。私の言葉がわからないらしい。今の発言は最初の『例の!?』に繋がる言葉だ。
もしかしたら石油掘ることもあるかもしれないよ? だけど、主な仕事がそれじゃないことは私は知っているよ。ディーノさんがそんなことしているところ見たことないし。


「……もしかして、まだわからないの?」

「なんのこと?」

「………………ちょっと耳貸して」


いつだったかは忘れちゃったけれど一度伝えようとしたら妨害が入った。家族には隠しているらしいが綱吉はもう巻き込まれている。骸の件は思いっきりマフィア関係だろう。9代目からトマトもらったからお裾分け、と私もいただいた。もらうのは微妙だったけど、とても美味しいトマトだった。みずみずしくて甘い。じゃないね今は。
周りをコソコソ伺って誰も近くにいない、耳を傾けていないことを確認して綱吉の耳に唇を近づける。


「ボンゴレファミリーのボスって血筋だって聞いたんだよね」

「う、うん。オレもそうやって聞いてる」


ボンゴレは世襲制だと聞いた。初代のボスの血を遺伝子に持っているものだけがなれる、と。だからボスになるための第一条件は生まれた時に決まるのだ。初代の家系に生まれた子ども。養子ではいけない。義理の子どもではいけない。血の繋がった家族ではないと。両親のどちらか一方だけでも、またその両親のどちらかも、またまたその両親のどちらかも。
そういうことだ。綱吉が10代目に選ばれるためには両親のどちらかがボンゴレファミリー初代の家系であることが条件。
それに綱吉の存在が今のボンゴレボスに知られているということはリークしているものがいる。綱吉が産まれたと現ボスに教えたものがいる。その人物になる可能性が一番大きいのは両親だろう。ということは両親のどちらかがボンゴレファミリーに関わっているのだ。


「予想でしかないんだけどね」

「うんうん」

「綱吉のお父さんって───」

「近すぎです!!!」


ボンゴレ関係者の可能性大きいよ、と伝える前に剥がされる。ぐいっと綱吉と私を遠ざけるように押したのは……予想通りハルちゃん。


「ツナさんはデレデレしすぎですよ!!」

「なっっ!!?」

「ハルというものがありながら!!」

「お前は関係ないだろ!!?」

「あります!!」


ぷんぷん怒るハルちゃんは綱吉を一通り叱った後今度は私の前に立った。ふくれっつらのハルちゃん。


「紗夜ちゃんだって誤解されたら困るじゃないですか!」

「怒る姿も可愛いね」

「はひっ! ……紗夜ちゃんはいつもそうやってハルをからかって……! 紗夜ちゃんの方がキュートなんですよ!」


からかった覚えはないんだけどなぁ。
好きな人に異性が至近距離で話していたらハルちゃんのかわいさでも焦っちゃうんだろうな。ごめんね、と手を合わせて眉を下げるとハルちゃんは少しずつ丸くしていた頬を戻す。


「紗夜ちゃんだってディーノさんに誤解されたら困るじゃないですか……」

「……ん!? 待って、それが誤解っ」

「いいんですよ正直になって。ハルは応援してますから!」

「ねえ? 聞いて? お願いだから人の話聞いて?」

「歳の差なんて関係ないですよ!」

「それ誤解だから。ほんと。私もディーノさんも困ってしまう誤解だから。ねえハルちゃんっ!」


まだハルちゃんの中で誤解は続いていたとは。どうすれば誤解は解けるんだろう。
私の恋路を応援してくれるハルちゃんに何度も声をかけるが聞いてくれない。この話題になるとハルちゃんはなぜか話が通じなくなる。必死に解こうとしている私は綱吉に伝える内容が途中だったことも忘れていた。











ゲームセンターで撮った友達との初プリクラ。京子ちゃんとハルちゃん可愛い。可愛い女子たちとの加工写真に内心うっきうきだった私の心は一瞬で崩れた。灰になった。


「う"お"ぉい!! なんだぁ? 外野がゾロゾロとぉ。邪魔するカスはたたっ斬るぞぉ!!」


この人たちの登場で。
銀髪のロングヘアーの歳上の男性。粗暴な言葉遣いでよく見ると左腕には剣が……くっついている、のかな? 銃刀法違反で捕まってしまう。全身黒を基調としている。
ビルの建物の上から叫んでいる声は地上にいる私たちにも普通に届く。声大きい。

あと、もう一人。原因らしき人が。
綱吉の上に倒れてきた額に青い炎がある少年。綱吉と色違いの炎。たぶんこちらは私たちと同じ歳ぐらい。長い前髪で右目が隠れている。亜麻色の髪に青色の瞳。こちらも同じく手には武器らしきもの。問答無用で捕まりはしないだろうがブーメランみたいなのを持っている。

銀髪の人がなんやら腕を振り回す。風圧だけでコンクリートの地面に斬撃を残していく。


…………………まだ日中なんだけど……。


ヤのつく職業さんが活動するのは早すぎないか? 一般人多い街中で暴れるなよ……。最近危険なことあったから脳がおかしくなっている。怖いことに間違いはないけれど冷静になれちゃう。……マヒしているな。これは重症だ。


「女 子どもは避難するぞ」

「………………はーい」


驚きと恐怖でぺたんとつけていたお尻をあげて立ち上がる。避難するといいつつリボーンに逃げる気配はない。邪魔者になる私たちだけが逃げろということか。


「ぐぴゃっ! 、紗夜……! ランボ……ランボさん動けないんだもんねっ!!」

「よしよし。おいで」


手を出すとランボが四つん這いになりながら動いてきて手に触れる。軽いランボなら運べるから難なく抱えて立ち上がった。


「度胸がついてきたな」

「いらなかったんだけどね。慣れって怖い」


じゃああとはよろしく、とリボーンに伝えてハルちゃんと京子ちゃん、イーピンにフゥ太くんの元へ行こっと。っと、その前に。


「……これってまたそっち関係?」

「……片方はボンゴレだ。なんでいるかはわかってねーけどな」

「……そっか」


イーピンは場慣れをしているんだろう。私たち中学生より機敏に動けている。怯えているフゥ太くんとも手を繋いで早くこの場から離れよう。

今まで見てきたマフィア関係者とは違うような緊迫さ。一波乱来そうだよなぁ。綱吉に同情してしまう。

私には関係ないだろう、とよそごとのように考えていた。そんな考えを持っていられるのは後何日だろうか。