次に目覚めた時は
綱吉たちが黒曜ヘルシーランドにやってきたと骸に聞いたのは数十分前。柿本くんが起きてボンゴレ10代目の正体が嘘ではなかったとわかったのも、更なる骸の援軍の脱獄囚が綱吉たちを倒しに行ったのもほんのちょっとだけ前のこと。城島くんはいない。一足早く綱吉たちを迎え撃って山本くんに負けた。そのことに少しだけほっとした。誰も死んでいないことに、山本くんが無事だったことに安心した。山本くんなら城島くんを必要以上にぼっこぼこにしたりはしない。二人とも命があることだけは見てもないのに確信できた。
「紗夜は正直者でしたね」
「っ…………」
「クフフフフフ」
時間の問題だった。私が綱吉のことを言わなくても柿本くんの口から全てが暴かれていた。
「骸は、嘘つき、だね」
「綱吉くんには怪我させてませんよ」
綱吉以外の人は戦って傷ついている。私の視力では遠いところで戦っていた山本くんと城島くんの戦闘は見ることができなかった。だけど怪我はしているだろう。今も次々と勝負をしているらしい。なぜかは教えてくれない。
綱吉の名前を出したらご褒美とか言って恭弥を一目だけ見せてくれた。気絶しているのか動くことのなかった恭弥。名前を呼んでも反応することはなかった。怪我の手当も何もかもさせてくれなかったけれど、生きていることだけはこの目で確認できた。
みんな怪我をしている。綱吉以外の人には関係ない怪我を負わせてしまっている。そんなことをしてまでなんで綱吉たちは黒曜ヘルシーランドに向かってきているのか、私には理解できなかった。
「少しお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「……なに、を?」
「沢田綱吉と共にいる女性と赤ん坊は誰ですか?」
生気がない沈んだ声の私を骸は心配しながらも目的を尋ねてくる。
綱吉と共にいる女性に赤ん坊……。赤ん坊はリボーンだとなんとなく分かるが女性とは誰だろうか。顔が見えない私にはその質問に答えることができなかった。
「あのおしゃぶりをつけた赤ん坊……もしかしてアルコバレーノですか?」
「あるこ、ばれーの……」
おうむ返しして、数秒後にコクリと首を縦に動かした。
「黄色の、おしゃぶりを持つ……」
「黄色? ……もしかして紗夜は他のアルコバレーノにも会ったことがあるのですか?」
またまた肯定する。少し前のマフィアランドのことを思い出した。マフィアランドについて少し話したが出会ったリボーンのお仲間については話してなかったらしい。
骸は少し驚いて柿本くんに視線を送っていた。何を意味しているかはわからないが私は膝を抱えて目を閉じる。
呪われた赤ん坊、アルコバレーノ。七人いるうちの一人がリボーン。虹の色のおしゃぶりを持っていてリボーンが黄色の担当。
青と紫にも出会っている。艶かしい女性が教えて、くれた。あの人も今の私みたいに捕まったことってあるのかな? あったらどのように切り抜けてきたんだろう。
「紗夜、聞こえてますか?」
目を閉じたまま首を動かした。横に動かしても縦に動かしても返事をすれば聞こえているという意味だ。
「黄色のアルコバレーノ以外に何色に会いました?」
「青、と紫」
「……それらは沢田綱吉の近くにいますか?」
左右に首を振る。いるのかもしれないけれど私は知らない。見たのはたった一度だけ。
「アルコバレーノがここにいるとは……」
なんか、全て疲れたな。
たくさん寝たはずなのにまた眠くなってきた。目を開ける気力がもうない。
遠いところで骸と柿本くんの声がする。
「骸様これは何者ですか」「マフィアに巻き込まれただけの可哀想な子ですよ」とかなんとか。
─────ああ、だめだ、眠すぎる
辛い現実から目を背けるためだけに閉じた瞳だったが本当に眠気が襲ってきた。うつらうつらと首をこいでいたら身体が宙に浮いて固いソファーにおろされる。
「少し寝ていてください。起きる頃には全て終わっていますから」
「行きますか千種」「はい」と足音はしないのに扉がしまる音だけが耳に入る。ここの建物は古く手入れもされていないからそこら中が錆び付いている。扉なんて半分以上が変な音が鳴る。だけど骸も城島くんも柿本くんも足音がほとんどしない。扉が急に音を鳴らして開くから驚くし、音のしない扉の部屋の時は気がついたら目の前にいるから叫びそうになる。
たくさん寝ているはずなのに、睡眠時間を奪われたことは一度もなかったのにおかしなほど睡魔が襲ってくる。
次起きたら全てが終わる、と骸は最後に優しく宥めるように告げていった。
終わるって何が?
私はたくさんの友人を傷つけたよ。それなのに終わるって何? 終わったところで私の帰る場所なんてなくなっているのに。
それなら、それならいっそうのこと、前世の記憶を持った私を認めて変ではないと教えてくれた骸のそばにいたい。
この件が終わっても、ずっ……………と…………。