ふたりの呪いの色が違う


マフィアランド入島手続きをミスして、私と綱吉は地下鉄に乗せられて裏マフィアランドに連れてこられた。なぜか綱吉は招待状を持ってなかったらしく一人だけ出すのも見捨てるみたいで嫌だったから私も持っていないことにした。代わりに実技審査でワイロを渡すことになったが失格して不法侵入者扱いされた。しかし一度だけ再審査のチャンスをもらえれるらしい。そのための鍛える場所がマフィアランドの裏側の島。表と違って質素で人も少ない。同じ場所とは思えなかった。
裏側には教官がいて鍛えてくれるそうだ。元イタリア海軍潜水奇襲部隊COMSUBINのコロネロ。元軍人の赤ん坊。リボーンと同じ所で生まれて育ったんだって。

貴重なごく一部の人間しか手に入れられないような情報をどんどん話していくもので、私は聞いていないフリをするのに精一杯だった。興味なんて全くないのに「あ、鳥さんだ〜」とか言ってないといけなかった。鳥なんて雀やカラスなどのメジャーなものしか知らないのに。
綱吉は空を眺めている私とは違って赤ん坊二人に海に蹴落とされている。理不尽に殴られ蹴られている。綱吉には悪いが女子だからの一言で免除された私は幸福ものだ。とりあえず直視しないように石を積み重ねて遊んでいた。

リボーンとコロネロの故郷はどうなってんのか。そこで生まれ育った赤ん坊凶悪すぎるだろう。


「ねえリボーンコロネロ」

「なんだ?」

「なんだコラ!!」


石を積み重ねながら口を開いた。綱吉はちょうど海に落とされているらしく悲鳴だけが聞こえてくる。渦に巻き込まれている。……あれ? 綱吉って泳げたっけ?


「二人は生まれ故郷が同じで一緒に育ったんでしょう? 年も同じなの?」

「故郷は違うぞ」

「リボーンの年なんてオレは知らねえぞコラ!」


石の積み上げは新記録に達した。バランスと選ぶ石の平さ大きさが重要なのだ。がんばれ、私。がんばれ、石。

まだまだ綱吉の悲鳴は轟く。


「この前ディーノさんに聞いたの」


ボウリング案内中に学生時代の話を教えてもらった。凶悪で怖くて近づきたくない同級生や老若男女自由自在に化けれる同級生がいたこと、いじめられていたこと。
それに


「リボーンはディーノさんの家庭教師だったんだね」

「ああ。言ってなかったか?」


コツンと石が音を鳴らす。
私は石を眺めたまま紅で赤くなっている唇を開く。化粧落としてくればよかったなあ。


「なんで成長しないの?」


リボーンとコロネロから音がしなくなった。喋らない動かない。
また一つ石を乗せる。綱吉の絶叫が響き渡る。「リボーン助けて!」や「紗夜リボーンに頼んで!」と大声を張り上げている。


「ディーノさんの家庭教師をしていたのって何年も前じゃないの?」


石ががらがらと崩れ落ちた。「あーあ」と全く残念そうではない声が出てしまった。せっかく新記録出たのに。


「この前の誕生日、一歳になったって言ったのは嘘だったんだね」


ボンゴリアンバースデーに巻き込まれたみんな。奇数歳の誕生日だからって命の危険に遭わされて入院した綱吉。半年以上も前だ。


「ずっと赤ん坊から成長してないのかな? なんか───」


石から赤ん坊二人に顔を向ける。お二人ともポーカーフェイスがお上手みたいだ。何もわからない。


「───呪いみたい」


生まれた時の体型から変わらないのなら呪いだ。
悪き魔女に呪いをかけられた可哀想な赤ん坊二人。


「リボーンもコロネロも、綱吉たちはもちろん……私とも違う世界の人間なんだなと思ったよ」


ここに来てから拳銃やライフルをバンバン撃つ二人。綱吉を笑顔でしめる赤ん坊たち。そこらの子どもとも違う。私のような前世を持っていて赤ん坊にしては大人びている子でもない。もっと違う異質の存在なのだ。レベルが違う。私なんかとは比べものにならない、全てを超越した存在。

何を言ってもポーカーフェイスは崩さない。それでも呪いという言葉が出たらこの場の空気は重くなった。


「お前……何者だ」

「平凡で並な女子中学生です」


コロネロにあははっと笑いかける。前世の記憶を持ち日本人にしては髪色と目の色が珍しいというだけで私は普通の人間。うちの家系のどこかにもしかしたら外国人がいたのかもしれない。最近獄寺くんとかビアンキさんとかディーノさんとか内藤くんとか見ていたから髪が赤だろうか気にならなくなってきた。今まで黒とか茶色が多かったけれど最近そうではない。

でも、


「いいね君たちは。生まれた時から仲間がいるんだから」


私と違って。


「はぁはぁ……ひでーよお前ら!! オレ泳げないんだって!!」

「ガケ登ってきたの? すごいね綱吉」


積んであった石を足でならして綱吉の元に行く。
びっしょびしょ。でも髪だけは形が崩れていない。すごいなこのヘアーは。セットしているわけでもないらしいし。自然となるんだ。タオルを持っていないドレス一枚の私は四つん這いになって息を整えている綱吉と目を合わせるようにしゃがむ。綱吉って運動できないくせにたまにとんでもない身体能力を出すよな。カナヅチで泳げないプラス崖を登れと言われても私はできない。サメが出て火事場の馬鹿力を出せてもガケは登れないと思う。


「びちょびちょだね」


笑いながら綱吉の髪に触れる。綱吉は笑い事じゃないと怒ったけれど私の口元はずっと緩んでいた。


「……あの女は何者だ?」

「紗夜だ。将来ボンゴレの一角を補う女だぞ。すげぇだろ紗夜と紗夜を見つけたオレは」

「ボンゴレ10代目より頭は回るし察知能力もある……。もしかしてあの女の方が10代目かコラ」

「……よし、ツナをもう一度蹴落としてくるか」












この後すぐにカルカッサファミリーというマフィアが攻め込んで来て再試験どころではなくなった。女性は後方で飯炊だったが、情報屋と名乗った女性にカルカッサファミリーについて語ってもらっていた。聞きたくないけれど勝手に喋り始めた。ビアンキさんと料理したくなかった私にとってはありがたかったので料理せずに色気ムンムンの女の人の話を聞いていた。


「あなたはどこのファミリーの子なの?」

「……ボンゴレファミリーです」

「まあ」


マフィアではなかったがマフィアランドにいる限り否定をしたら外に放り出されて抗争中の流れ弾に当てられそうだったので利用させてもらった。メロンのような大きなお胸が揺れていて同性なのにクラクラしそう。赤い口紅と赤いドレスがよく似合う女性。


「それは安泰ね」


女性はふふふとご上品に微笑んだ。


「カルカッサファミリーにはボンゴレ一の殺し屋であるリボーンと同じアルコバレーノがいるの」

「あるこ、ばれーの?」

「ええ。日本語では虹という意味ね。この世に存在する7人の最強の赤ん坊をアルコバレーノと言うのよ」


色香ある動作と声。耳にすんなりと入ってくる。


「カルカッサファミリーにいるのは紫色のおしゃぶりを持つ軍師のスカル。不死身と言われているわ」

「不死身……」

「だけど黄色のアルコバレーノと青のアルコバレーノの方が戦闘に関して上だから安心しなさい」


黄色がたぶんリボーンで青がコロネロ。7人のアルコバレーノ。虹なら後は…… 赤橙緑藍だ。最強、か。


「可哀想よね呪われているなんて」


艶やかな声が耳元でした。
女性にしては背が高い色気たっぷりの女の人は赤い唇をにっこりと三日月にした。


「今後とも仲良くしてね。ボンゴレファミリー様」


ちゅっ、とリップ音を出して頬にキスした女性。外国人のスキンシップってすごいな。きれいな女性からの頬への口付けは同性でも赤くなっちゃうよ。


「……無防備だね」


すっ、と女性は耳元に唇を寄せた。


「そんなんじゃ簡単に食われるぜ」

「え、」


離れた女性はまた男を簡単に落とせる妖美な笑みを浮かべて踵を返した。


「……声、ひっく」


最後だけ男性と間違えるほどの声の低さだったが……んなわけないよな。あの人が男なんて。


私が女性と話している間にカルカッサファミリーとの戦争は終わった。獄寺くんもいたらしい。行きの船でガードマンが忙しなく無銭乗船した輩を探していたがその犯人も獄寺くんだとわかった。綱吉のこと好きすぎだろう。
そして遊ぶ時間もなく帰る時間。

マフィアランドではマフィア界でも出回っていない情報を手に入れて私は並盛に戻ることになった。