呼んだのはそっちのくせに
恭弥と私の好物をじゃんじゃん作ってお弁当を完成させた。なんで私が重箱レベルのお弁当を作っているかというと……………なんとっ!! 今日は!! お花見です!!
お弁当担当が私で場所取り担当が恭弥である。二人で重箱は大量だけど恭弥男子だし食べるよきっと。足りないより多い方がいい。残ったら夕ご飯にするからいいの。とにかく……さっくらさっくら!
珍しく恭弥から人混みへのお出かけに誘ってきた。この時期に花見をしたら人わんさかなのに恭弥が私をお花見に誘った。今ごろが満開だというのに。絶対に人が群がってくるだろうに。頭がぱーんしちゃったのかな。うっふふ。
おっはなみにさっくら!! 楽しみっ。桜の下でからあげやだんごを食べる。いつも以上に美味しく食べれるよね! もちろん大好きな抹茶スイーツは盛りだくさん持っていくよ!! 春といえば抹茶だから間違ってないよね! 春と言わずに365日抹茶はふさわしいよね!
ふっふふ〜ん、と鼻歌まじりで少し前にお願いして作ってもらった抹茶スイーツをカバンに入れてお花見場所に軽やかな足取りで向かう。何をどのくらい用意してくれたのかな? ついてからのお楽しみにしてるからまだ中身見てないの。和菓子は専門外だから洋菓子だろう。ということでコンビニに寄って和菓子買っていこう。お花見といったらおだんごは必須だから。
たくさん買って持って、荷物のほとんどが食べ物になった。レジャーシートは恭弥が用意してくれることを信じよう。私は忘れちゃった。
ふふふ ふーん、ふふふ ふーん、と桜に関係する歌を鼻歌混じりで口ずさんでいると集合場所にたどり着く。
満開の桜。辺り一面桃色。桃色のカーペットはまだできていないが上は真っピンクだった。天気は晴天。うん、いい花見日和……のはずなのだが人がいない? あれ? ここ立ち入り禁止区域だったかな? 春休みなんだから人でわんさかしていると思ったんだがみんな実は春休みの宿題を片付けるので忙しいのかな?
並盛にだってお花見を楽しむ人はたくさんいる。そこはどんな世界でも変わらない。昔から桜は嗜まれている。それなのに……。
人気が無さすぎて少し怯えながら桜並木に足を踏み入れる。
なんでいないんだろう……。
回覧板で今日は花見禁止とでも書かれていたっけ? 今日花見をした人は千年に一度起きるか起きないかの希少な確率の不幸に見舞われるのかな?
変なことを考えながら桜景色を歩んでいくと……
「………………きょうやーー!!!」
叫んでしまった。木霊した。何度も私の声が桜の下で残響した。
仕方ないと思う。というより叫ぶのが普通だ。だからそんな目でみんな見ないで。綱吉も山本くんも獄寺くんも目を見開いて頭の狂った女を見るような目をしないで。いや、していないのはわかっているけどさ。みんな驚いているんだよ。恭弥は眉を顰めてうるさいというのを伝えてくる。
いやいや仕方ないんだ。みんな叫ぶだろう。ようやく集合できたと思ったら恭弥がトンファーで殴っていたんだから。花を見にきたのであって血を見にきたのではない。それに殴られた人どこかで見かけたことあるなと思えば並盛の校医だ。あなたの学校の校医なんだよ?
「きょ、きょうや? 今日ぐらいは……いや、今ぐらいは暴力やめよう? 確かに花見は酒瓶が飛ぶわゴミは捨てないわマナーは守らないわセクハラする人はいるわで風紀が乱れるけど……」
「へえ。じゃあ僕のやったことはあってるね」
何もあってねえよ。
はぁ、とため息をついてしまう。恭弥は自分が正しいのを疑わない。校医さんの名前忘れちゃったけど、あの人が何の風紀を乱すのだろうか。飛んでいった木の根本に視線を移すと……酒瓶を持っていた。それか? それが恭弥が自分が正しかったと思ってしまった原因か?
「紗夜!? なんでここにいるの!?」
「触るな」
綱吉が私に近寄ってきて多分恭弥から距離を取らせようとしたのだろう。私の安全のために。だが触れる直前に恭弥が私を後ろに引っ張った。転ぶかと思うほどの勢いだった。恭弥が支えてなかったら転倒していた。
「え……っと、その、お花見。……恭弥と」
「えーーーーーーーーーっっ!!!」
そんなに驚くほどか? と問いたくなるほど綱吉は大げさに表現した。そこまで驚くほどではないだろう。恭弥が誰かとお花見をするぐらいで……驚くなあ。私でも叫ぶわ。あの恭弥が他人と!? 誰その猛者!? 激務続きで頭壊れた!? など絶対に頭に浮かぶ。人と群れるのが嫌いで孤高の恭弥が。……あれ? じゃあなんで私は呼ばれたんだ? お弁当係か? そんなの私が作るより恭弥の権力で老舗のお店に頼んだ方が絶対に美味しいのに。……なんで?
今となってこんな簡単なことが疑問になってしまった。何年も恭弥と一緒にいるのに。なぜ今……。うーん、と首を傾げる。
「ねぇ 勝負するのしないの、どっち」
「勝負?」
恭弥がイラついている。口調が強まり整っている眉が歪む。
勝負とはなんだろう。ふと周りが視界に入った。不思議なことに人がいない。ここにいる私たちしかいない。……もしかしてお花見に来た人たち全員恭弥が追い払ってる? 勝負して負けたら出てけ、に似たようなこと言ったりしてる? ……ありそうでなさそうな、だけどありそう。
周りを見回している間に話はついたらしく、綱吉たちは戦うことにしたみたい。最初に獄寺くんが戦う。
「紗夜、邪魔」
「……うん」
やはり戦うんだ。私は舞う桜ではなくて飛び交う血を見に来たのかもしれない。「はぁ」とまたため息が出てしまった。価値観が違うと難しい。お花見は群れるものだろう。今日ぐらい我慢して欲しかった。
「だからオレが誘ったら断ったのか」
「ダブルブッキングになっちゃうからねえ。先に約束している方を優先させてもらいました」
少し離れたところでしゃがむ。するとリボーンがしゅたっとスマートに上から降りてきた。桜の枝の部分にいたそうだ。
獄寺くんが新技を出した。ボムスプレッズ。すれ違いざまに恭弥にダイナマイトを放った。逃げる時間はなく、恭弥へ直撃したかと思ったがトンファーで防いで当たってなかった。
獄寺くんは恭弥の反撃を避けた反動でヒザをついた。ヒザをついたら負けというルールらしい。だが恭弥は攻撃の手をとめない。恭弥らしいが。恍惚した笑みを浮かべて続ける。戦闘狂の頭の中見てみたい。
なんて呑気に考えていたら山本くんが恭弥のトンファーを刀で受け止めていた。うわあ素早い。
次はいつの間にか真剣を握るようになってしまった一般人卒業した山本くん。しばらくの間やりあっていたそうだが、恭弥のトンファーに仕込まれている仕込み鉤で刀を封じられてトンファーで殴られて山本くんが負けた。応酬が早すぎて私には山本くんが殴られるところしかわからなかった。
……やべえ、興味無さすぎて帰りたい。桜思う存分見たし帰ろっかな。
「次はツナだな。一発入れてくるか」
リボーンは拳銃を取り出して綱吉のもとに行っちゃうし。暇だ。ケンカなんて微塵も興味ない女が眺めて待っていれるわけがない。私、桜は満開より散り際の方が好きだし。
綱吉がまた半裸になって豹変した。一ヶ月に一度は見ている気がする。どこからか持ち出したはたきを武器にして恭弥を攻撃する。はたきを持つ前にレオンと叫んでいた。なんだあれ。早すぎて何も見えないが実力は拮抗しているらしい。
本当に興味がない。帰っていいかな? 帰ろうかな? 恭弥だって私と花見をするより誰かとケンカしている方が楽しいだろうし。帰ろう。時間の無駄だ。