パートナー選びは慎重に
綱吉にあう動物を選べぇ??
京子ちゃんと一緒にいたらリボーンが現れてまた変なことを言い出した。私たちにだけではなく綱吉の周りにいる人間ほぼ全員に頼んでいるらしい。
綱吉にあう動物なんてわかんないよ。私忙しいんだけど、と断ろうとしたができなかった。それぞれ用事があるだろうから現地集合でいいぞとリボーンが先手を打ったのだ。
そりゃそうだよね。みんな用事あるよね。前日に急に言い出す方が悪いよね。そちらを優先させてあげるのね。優しい。でも遅くなってもいいから動物園には行かせたいのね。
動物園集合メンバーをリボーンから教えてもらう。獄寺くんに山本くんにハルちゃんに笹川先輩にビアンキさんにフゥ太くんにイーピンにランボ。大所帯。
「わぁ〜〜〜〜!! いいの? リボーンくん。ありがとう! 楽しみだね紗夜ちゃん!」
「ぇ……うん、そうだね」
一緒にいた京子ちゃんが行くと決めてしまった。流れで全員行くことになっていた。なので断れませんでした。私のおバカ。そもそもリボーンがチケットをくれた時点で断らせる気がないのが伝わってくる。お金はそちら持ちか。費用は全て負担してやるぞか。リボーンなのかボンゴレなのかどちらなのか。
「紗夜ちゃん用事ある?」
「……開園時間から行けちゃう……」
「私も! よかったら一緒に行かない?」
現地集合ということはそこまで一人じゃん。一人で動物園とか寂しくて涙が出そうになるよね。一人で動物園に入る勇気私にはないよ? 現実が充実している家族恋人友人の集まる場所なんか、と卑屈になりかけていたところに天からの救いの声が。京子ちゃん!! 貴女はなんなの!? 天使なの!?
「うん、行こう。ゲート前で待ってるね」
友達と動物園だ〜〜。楽しみだなあ。前は近くに動物園や遊園地や水族館といった娯楽施設何もない田舎に住んでいたから友達とはショッピングぐらいしかしたことなかった。並盛って充実しているよね。動物園があるなんて。遊園地や水族館もあるし。
おしゃれしてこっ、と外に出ない程度にるんるんしてしまう。いやいやだったけど楽しみになってきた。
「悪りぃ。そのことなんだが紗夜と京子にはツナの迎えにきて欲しい。一緒に動物園まで行ってやってくれ」
「いいよ。ね、紗夜ちゃん」
「う───」
……ちょっと待てよ。うん、とか言うのやめよっか私のお口。
綱吉のもとに京子ちゃんがお迎えに行くんだよ? 綱吉の好きな人は? はい、京子ちゃん。動物園までという短い時間でも好きな人と一緒にいれるんだよ? そこに私が入ると? ……思いっきり邪魔だな。二人が会話しているのを後ろから眺めて気配を隠しているシーンが想像できる。少しでも視界に入れば綱吉から『邪魔だなぁ……』という視線がくるのも想像できた。
「……ごめん、用事あった」
「そうなの? 残念だなぁ。リボーンくん、私だけでもいい?」
「……。もちろんだ」
リボーンが一瞬私をまんまるお目目で見つめてきたがすぐに笑顔で了承する。
いや、分かれよ。綱吉にとったら好きな人との憩いのお時間だよ。そこにもう一人いたら邪魔でしかないじゃん。京子ちゃん、綱吉の想い何も気がついてないから絶対に私にも話振ってくるでしょ? その度に綱吉から『うわっ……っ』て思われるんだよ。みんなと合流するまで綱吉の家からずっとそんな目で見られて平気なほどメンタル強くねえよ!! 他に人がいるならまだしも綱吉と京子ちゃん二人っきりのところに一人で入りたくない。
ごめんね、と京子ちゃんに謝る。京子ちゃんは「平気!」と笑ってくれた。私の嘘を信じてくれている。嘘も方便だよね。私が嘘をつくことでみんな救われるのだから。
「紗夜は京子みたいに鈍感でも天然でもないくせに自分のこととなると鈍感になるよな」
また明日、と京子ちゃんと分かれるとリボーンが呆れたように首をすくめた。
あ"あ"ん"、とどこかの不良みたいな返事が口から出そうになった。いけないいけない。
汚い言葉は飲み込もう。
「リボーンの空気の読めなさはびっくりしたけど」
家庭教師は生徒の恋路を応援しようよ。リボーンは綱吉より人生経験少ないしマフィアの家庭教師だけど恋の家庭教師もしてあげてよ。ビアンキさん4人目の愛人なんでしょ? 聞いた時腰抜けたけど。マフィアの世界を恐ろしいと思い、関わりたくないと強く思った瞬間だった。
「しょうがねえだろ。ツナが無自覚の二股野郎なんだもん」
「そうなんだーー。……………………ん?」
「二股野郎というより本命に気が付かないふりして京子を本命だと思い込んで───」
「ええ!? 綱吉京子ちゃん以外にも好きな子いるの!?」
ええ!? うわーー!! 知らなかった!!
クラスの誰もが知らないことじゃない!?
流してしまうところだった。驚きすぎてリボーンの言葉途中で遮っていることも気にならなくなってしまう。
綱吉はよくリボーンがいう愛人云々を学んじゃったの? マフィア世界の真似てはならない部分だけは気がつかずに吸収しちゃったの!?
「……ハルちゃんか? ハルちゃんしかいないよな綱吉と仲の良い他の女の子は」
ハルちゃんだよな。他に綱吉が飾らなく話せる女子はビアンキさんとイーピンか……。ビアンキさん怖いってよく綱吉言ってるしイーピンまだ5歳だし……。ハルちゃんか? 確かに私はハルちゃんも応援してるよ!? ハルちゃんと綱吉に結ばれて欲しいという思いもあるよ! え、うわっ、……えええぇぇぇぇ……!!
「無自覚が……。紗夜以外いねぇだろ」
自分の世界に没頭して三角関係をしている友人たちの未来を考えていた私にリボーンの呆れ果てていた声は届くことはなかった。
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綱吉には今度何か奢ってもらおう。貴方のせいで私は一人で動物園に入園するという苦行を味わうんだから。京子ちゃんとデートさせてあげているんだ。本当だったら私が京子ちゃんとデートするところだったのに……っ。
やだな、入園したくないな、とゲート前で立ちすくんでいると後ろから声をかけられた。
「入んねーのか?」
「……獄寺くん」
この人空気読めたんだ。読めずに綱吉をお迎えに行くんじゃないかと少し心配していた。リボーンが阻止しているのは知っていたがそれでも全てを振り払って獄寺くんは綱吉の元に飛んでいくと思ってた。なぜリボーンは私だけを邪魔者にしようとしたのだろう。私に対しての嫌がらせ。気がつかないだけで何かしたのかな?
「聞いてンのか?」
「一緒に入ろうよ」
「……はあ!?」
そしてここでも空気読んでくれ。私は一人で入りたくないんだ。係員さんや他のお客さんは私なんか視界に入れないかもしれないけれど、この赤髪は目立つのだ。多分一度はみんな見る。そしてあいつ一人じゃん、となる。そんな目で見られたら吐血する。
いいところに来たカモを逃すわけない。ぐるりと見回すと他に知り合いはいない。事前に気を遣ってくれる人に限って用事があったのだ。……山本くん、昨日は電話ありがとう。部活があったんだね。それなら我慢して一人で行くよ、と思った矢先に獄寺くんが来るんだ。一緒に入園するしかない。
もともと一匹狼みたいなところがある獄寺くんは一人で行くことになんとも思ってなかったのだろう。私同様目立つ風貌なのに気にもしない。獄寺くんの場合は『あ、あの人一人だ。カッコいい〜〜』で終わっちゃうんだろうな。モテ男だから。
私の一緒に行こう発言は予想外だったのだろう。口を開けて目をギョッとして少し顔が赤い。イケメンはどんな顔でもサマになるから憎たらしい。じゃらじゃらしている不良きどりが。
「お願い。今度昼ご飯奢るから」
綱吉が。
「……仕方ねえな」
よしっ。ガッツポーズしそうになったが抑える。獄寺くんがお料理できない一人暮らしという情報は入手済み。お昼一緒に食べることあるからね。獄寺くんはコンビニか売店で昼食を用意している。私も獄寺くんと似たり寄ったりだけど。違うよ。誤解を招きそうなこと言ったけど私はたまに買うだけだよ。大体は持参しているよ、と前に綱吉と山本くんの前で言い訳した。白米とふりかけオンリーの食事をしているときに。獄寺くんはその日焼きそばパンだった。作ってもらってる二人と違ってこっちは自分で用意しているだ。あんな顔される覚えはない。
ということで獄寺くんと私からしたらお昼が一食だけでも用意されるのはありがたいこと。
わーい獄寺くん簡単でよかった、と鼻歌を歌い出しそうになるぐらいるんるんだった。獄寺くんが入園の手続きを済ませてくれて仲良く動物園に入園した。
「綱吉にあう動物は何かな?」
「10代目のように凛々しくて強くて迫力がある動物だ。……10代目にはもちろん劣るが百獣の王であるライオンとかか?」
「あはは 誰それ」
「なっ!?」
「ちょっと調べてきたんだけどねえ」
「10代目にあう動物をか?」
「一夫一妻の哺乳類って5%未満なんだって」
「何を調べてきてるんだよ!!」
たぶん綱吉は将来マフィアを継ぐなら一夫多妻を目指すから調べて来たんだよ、とは綱吉を神聖化している獄寺くんには言えず飲み込む。
モモンガかわいい、と立ち止まると獄寺くんは「10代目にあう動物を探しに来てんのに……」と文句を言いながら私が満足するまでずっと見させてくれた。触れ合いコーナーにも回ったしショーを見たり楽しかった。写真も撮ったし、獄寺くんも巻き込んで一緒に撮ったりして……最初嫌だったのが嘘みたいに楽しく過ごせた。
だが最後の最後は動物園の人に怒られた。不良に絡まれた私と獄寺くん。きっかけはニヤニヤと厭らしい目で話しかけてきた男どもに私が目をつけられてしまったことだ。中学生にしては胸が大きいのは自覚しているから“そういう”目を向けられることはある。いつものように気づかない見えない聞こえないを徹底して俯いていたら獄寺くんが私の肩を掴んで歩いていた場所を変えてくれたのだ。男性たちから見えなくなるように。それが男の人たちの気に障ったようで喧嘩腰で獄寺くんが話しかけられて……沸点の低い獄寺くんはダイナマイトをぶっ放した。その爆発で檻は半壊してライオンが逃げ出し、同じく動物園にいたらしい笹川先輩とビアンキさん、そして獄寺くんが捕まえたけれど原因である私たちはこってりと叱られた。私と獄寺くんだけではなくみんな。その時動物園にいなかった山本くんやハルちゃんもみんな。ごめん。
それとよくわからないけれど綱吉と合流してしまった時、綱吉は私と獄寺くんを釈然としないように見つめてきていた。なんでだ? ……………デートの邪魔をしたからか。
とりあえず、動物園を一通り見終わって私が考える綱吉にあう動物は獣耳が生えた小動物です。飛べない系統の。
リボーンが決定したのはライオンだったが。よかったね獄寺くん。100点満点だ。