二度目の人生


あなたは前世を信じますか?


友人、家族あるいは恋人でも構いません。『前世の記憶を持っているんだよ』と喋り出した相手に対してどう思いますか?


私は頭おかしいのかな、そういうお年頃なのかな、と十数年前までは思っていました。信じる気なんてさらさらありませんでした。だけど今は信じようと思います。


誰が思っていたでしょう。自分がその立場になるなんて。










私にはみんなに内緒にしていることがある。それは前世の記憶を持っているということだ。

私の前世、それは悲しい終わり方だった。青春真っ只中だった私の一度目の人生は呆気なく終了してしまった。

しかしとある日、ふと思い出した。まだぎゃあぎゃあと泣くことしかできない言葉は話せない、身体は思うように動かせない赤ん坊生活を送って少し経った頃、急に前世の記憶が脳に入り込んできた。
それはすんなりと受け入れた。今世は前世とはまた少し違う世界らしい。魔法が使えるなどのファンタジー世界だったら戸惑ったかもしれないがその辺は同じだった。魔法も使えない必殺技も持っていない正義のヒーローや敵もいない空も飛べない、普通の世界と普通の人間。
だが前世の記憶を持っているというのは厄介で赤ん坊の私にはキツかった。口で言うのも耐えがたいのでご想像にお任せする。いろいろあったけれど……まあ、なんとか今日まで生きてきました。


そんなこんなで今日から二度目の中学校生活を送ることになりました。ピッカピカの新入生だよ。


「紗夜! 同じクラスだっ…………どうしたのそれ」

「…………うん。出世街道まっしぐらみたい……」


私を人混みの中から見つけて意気揚々と手を振ってクラスを伝えてきたのは私の友人だ。紹介しよう。友人が私しかいないらしい男の子───沢田綱吉。綱吉とは小学校からの付き合いだ。仲良くなるよね。ドジっ子なのかよく転んでいたりしたから甲斐甲斐しく世話をしてしまった。小学校だと私は今よりも浮いていたが周りからは私と綱吉は世話好きのお姉ちゃんと手のかかる弟に見えたらしい。女の子のほうが早熟っていうから。もちろん姉弟は比喩表現だよ。姉弟に間違われるほど見た目は似ていない。

今日は入学式。一年生は今日から始まる中学生活にうっきうきのわっくわく。中学校からは部活やら上下関係やらで環境も変わる。周りはみんなきゃっきゃっうふふと笑い合っているので私は少し浮いていた。かなり浮いていた。

話ずれたけれど友人が私しかいない綱吉は同じクラスになれたことが嬉しかったようだ。私は沈んでいるのに。腕につけているこれが重たくて重たくて泣きたいのに。
それをこれを渡してきた奴に言ったら

は? 100グラムないけど

とバカにしてきた。そうじゃないんだ。


「……生徒会長?」


綱吉が指さすところにあるのは生徒会長と書かれた腕章。


「……唯我独尊野郎が私を任命していたらしく……」

「誰!? ……その、オレが言える立場じゃないけど、友達は選んだほうがいいよ」

「そうする……」


友達が一人しかいない綱吉に言われると心が痛むね。









二度目の人生、二回目の中学校。
始まりからおかしかった。

並盛町というそれほど大きくも小さくもない名前通り並の町で生まれ育った私。
友人は多くはない。それでも学校生活はなんとか送ってきたがお隣さんには恵まれたのか恵まれなかったのか。お隣さんには雲雀という家族がいた。同じくらいの年だから仲良くできるよね、というこちらの親のよくわからない思い込みでつきあいはとても長い。
この世界で一番長いつきあいとなる唯我独尊野郎こと雲雀恭弥。恭弥が私を生徒会長に任命していた。クソがッと叫びたかったけど叫んだら私の命が危ういので従って逃げてきた。だからここで叫ぶ。


クソがッッッ!!!


唯我独尊野郎恭弥はいつものことだから慣れっこだ。諦めが肝心。

だが目は死んでいたらしく綱吉がとても心配してくる。平気平気……、と誰がどう見ても平気ではない顔で私たちは校舎に足を踏み入れた。






並盛町で産まれた私に待っているのは平凡な第二の人生、だと思っていたのは去年まで。隣にいる友人が私の価値観を全てぶっ壊して生活を180度変えてしまうなんてこの時の私はまだ知る由もない。