おもちができるまでの間


並盛川、河川敷に来てファミリー対抗合戦というものをした。いろいろ言いたいことはあったが割愛させてもらおう。

例えば一回戦目の笹川先輩はおみくじでの勝負でよりによってマイナス点を10枚も引きやがって。相手は一枚取れば勝てるじゃないか。その方法するなら後攻でやってほしかった。
二回戦目の山本くんの羽根つき。山本くんは豪快にホームランにした。全て野球フォームになるのか。この勝負に至っては相手チームの方にいろいろ言いたかった。なんで元プロテニスプレーヤーがマフィアに転職した。何があった。
その後もハルちゃんの百人一首は始まる前に足が痺れる。どういうことだ。ランボは福笑いのルールを把握していないで棄権。選出が悪い。イーピンの凧揚げは体重が軽すぎて凧と一緒に風に流されてしまう。獄寺くんはすごろくで途中棄権。ファミリーの仲間を褒めるということができなかった。綱吉褒めとけばよかったんじゃないの!!?

途中でランボは違うファミリーだよなと疑問が浮かんだが黙っといた。確か……ぼゔぃーの? とかそんなところだった気がする。

人に文句を言う私はどうしたって? 書き初めに挑戦させてもらって勝利をもぎ取ったよ。イタリア人がなのか対戦した人がなのかわからないが、筆を持つことすら初めてだったらしく余裕だった。綱吉に感謝されまくったが私の勝利なんて意味がないほどの点差になっている。
後残っているのは京子ちゃんと綱吉だ。一人100点ぐらいもぎ取れば勝てるんじゃないかな?

この年で一億円の借金か……。ここには私含めて9人いるから一人約1000万の負担を覆うのか……。先程リボーンに相談したらボンゴレに入ればチャラにしてやるだって。それなら頑張って働いて1000万払う……。


「はぁ……」

「なぜ始まる前から諦めてんだ鳴神!! 最後の最後まで何が起こるかわからないのが勝負なのだ! 逆転右ストレートが入ることだってある!」

「……はぁ」


ため息をついていたら一番絡まれてはいけない人に絡まれた気がする。正月早々から熱い男。一人だけ袴姿なのはすごいなあ。着付けは自分でしたのか親御さんにやってもらったのかどちらだろうか。


「ため息をつくと幸せは逃げるんだ。吸え」

「……はい」


吸うのはため息か幸せか。とりあえずため息をつく原因の流れを作った笹川先輩が何をいうのだろう。
笑わせるためでも元気付けるためでもなくて本気の表情で話しかけてくる。いつどこでも全力でぶつかる人だ。


「お兄ちゃん、紗夜ちゃんに何やってるの?」

「話してただけだ!」

「…………お兄ちゃん?」


お兄ちゃん? お兄ちゃんとは……ブラザーのこと?
並んだ笹川先輩と京子ちゃんを見比べる。そういえば京子ちゃん名字笹川だっけ? 似て、似て…………似て、るのかな?


「あ、その、義理の……」

「え?」

「何がだ?」


口から無意識に滑って出ていた。口を押さえたが出た後だった。でも義理だけで私の考えていたことはわかっているわけはなくお口チャックしてこれ以上は喋らない。片方が橋の下で拾ってきた、または再婚で連れ子同士などの血が繋がっていない兄妹なのかもしれない。複雑な家庭事情が存在している可能性があるのだ。お口バッテンだ。気まずくなりたくない。


「紗夜ちゃんはツナくんと仲が良いんだね」

「まあ……」


この中では一番付き合いが長い者同士だから。小学校からずっと一緒で半ば腐れ縁にもなっている。
京子ちゃんはにこにこと微笑んでなぜか隣に立った。うっわあ気まずい。あまり話したことがないクラスメイトと二人っきりにされるとか話題に困る。だけど沈黙の方が辛いから適当に振っていくしかないのだ。お餅どのくらい食べたとか宿題の進みどうとか。笹川先輩はいなくなっちゃうし他のみんなは来てくれないし。だからといって呼ばれてもないのにこの場から逃げるわけにもいかない。


「最近ツナくんなんか変わったよね」

「そうだね」


京子ちゃんも話題を出してくれるので甘んじて受け入れます。あははと笑い合いながら会話をしていくとルール変更とのこと。今までのは全てチャラとなり次勝った方が優勝。そのかわり負けたら10億払うという借金が10倍になりえるもの。


「一人約1億……。京子ちゃんのところは笹川先輩と二人で約2億だから大変だね……」

「ふふふ 子どもって夢があるよね」


本当に夢ならいいんだけどね。本気で徴収する気でいると思うんだ。一億って何年働いたら返せるかな。……あはは。


「次が最後か……。後やっていないの京子ちゃんと綱吉だよね」

「うん。楽しみなんだ」


うきうきした返事。もしかしたら何も背負わないでいた方が勝てるのかもしれない。頼みの綱は京子ちゃんと綱吉なんだ。お願いだから勝ってもらわないと私は返す目処がつかない借金を負わされてボンゴレに身を売らされる。


「頑張って京子ちゃん……!」

「うん!」


一応唯一勝った女なんだ。両手を握って勝利パワーを送る。お願いっ私を借金まみれの人生にしないでっ。京子ちゃんは終始にこにこ微笑んでいて闘志が全く感じられないから少し不安。


だが最後はファミリー全員参加の餅つきになった。美味しいアンコロもちを作った方が勝ち。パワー注入は全く意味がない。


「わぁ楽しそう! 行こっ紗夜ちゃん!」


注入していた手を引っ張られて輪の集団に連れていかれる。後ろからでも京子ちゃんが楽しんでいるのはわかる。喜びをほほに浮かべているのだ。


「……楽しそうだね。お餅つき好きなの?」


私とは違っていつも周りの人まで笑顔にさせるような無邪気な笑みをしている京子ちゃん。私は圧倒的にその場を凌ぐためだけの笑みが多い。なんでそんなにいつも満面の笑みを出されるのだろう。
私の何気ない質問に京子ちゃんは顔だけを私に向けた。


「みんなで何かするのは楽しいよね。だけどそれだけじゃないんだっ! 紗夜ちゃんといっぱい話せて嬉しいのっ!」

「……ありがとう」

「うんっ。美味しいお餅作ろうね」


そうだねと微笑んどいた。
京子ちゃんは私と話せて嬉しいのか。そうか……。


「!? 紗夜どうかした? 頬すっごく緩んでいるけど?」

「え」


顔に出ていたようだった。綱吉に指摘されるまで全然気が付かなかった。ぱっと頬を抑えて京子ちゃんに視線を向けるとぱっちり合って手を振られる。


「紗夜ちゃんも一緒にアンコ作ろう!」

「うん」


誘われた。嬉しいな。
餡子とは一朝一夕で作れるものではない。ハルちゃんと京子ちゃんとわいわいしながら作った餡子はやはり素人が作ったとわかる出来物で、それでもとても美味しかった。つぶあんだったことが私にとって大衝撃だった。こしあんのアンコロもちしか食べたことがない。

なんだかんだボンゴレ式お正月なんとかは両ボスの引き分けで終わった。借金を負わなくてほっと息をつき、今度ハルちゃんと京子ちゃんとお出かけする約束をした。