新年から大騒ぎ


「あけましておめでとうございます皆さん」


クラスメイトとの挨拶は冬休み明け教室でやるものだったが今年は違うようだ。綱吉の家に全員集合となった。綱吉といつも一緒の獄寺くん山本くん、それにハルちゃん。そして京子ちゃん笹川先輩。珍しい二人もいるがみんなからしたらそこまで珍しくないらしい。


「紗夜ちゃんあけましておめでとうございます!!」


わ〜〜とハルちゃんが手を握ってきた。振袖だ。可愛い。


「おめでとう紗夜ちゃん」

「京子ちゃん」


にこにこと近づいてきたもう一人の美少女。京子ちゃんも振袖だった。目がやられる威力。眩しい。


「……知り合い?」

「はい!」

「うん」


京子ちゃんとハルちゃんは普段からよく一緒に遊ぶ仲らしい。……ハルちゃんは気まずくないのだろうか。好きな人の好きな人と仲良くするなんて。綱吉の想い気付いてないのかな?
他校で部活が被っているわけではないのに知り合いなのはケーキ屋さん巡り仲間だから。月に一回第三日曜日にケーキを好きなだけ食べると二人は決めているらしい。1月は一緒に行こうと誘われたがお断りした。ただでさえ冬はお餅や美味しいものがいっぱいで太るというのにケーキまで食べれるか。月一とか頻繁すぎてついていけない。


「紗夜ちゃんはハルちゃんと仲よかったんだね」

「……うん」


京子ちゃんとは必要最低限しか話したことないからどんな対応すればいいかわからない。空笑いを浮かべてしまう。絡み方がわからなくてさささっと逃げてしまう。悲しそうに笑っていたがごめんなさい。

ちょうどよくリボーンがみんなを集めた理由を話した。


「今日はボンゴレ式ファミリー対抗正月合戦だぞ」


……なんだと?


対戦相手として呼ばれたのはディーノさんとその他黒服さんだった。獄寺くんに「あの集団は何?」と質問したらキャバッローネファミリーだって教えてくれた。ディーノさんが率いるファミリーらしい。日本の平凡な並盛町にマフィアがいくつ集まる気だ。ボンゴレにキャバッローネに……。いつのまにか並盛が戦争地域になりそうで……これフラグかな……。

あれ? ボンゴレ式?
ボンゴレ式といえばリボーンの誕生日会もボンゴレ式だったような……。


ボンゴレ式ファミリー対抗正月合戦は同盟ファミリーが戦ってその年のファミリーの意気込みを表明するボンゴレの年始行事だと説明があった。同盟と聞けば平和な気がするが誕生日も身内でやる内容だったが死が関わるものだった。


「……それじゃあ私はここで」


よし、帰ろう。回れ右。さあ歩こうと一歩踏み出したら綱吉が飛んできた。お願い帰らないでと。力いっぱい引き止める綱吉には悪いがボンゴレ式と聞いた時に私は嫌な予感がしてたんだ。警鐘が鳴り響いていたんだ。グヮングヮン鳴っているのだ。第六感というものは信じた方がいいと思うんだ。人間が生き残るための生存本能だから。


「お願いだから! 紗夜!!」

「嫌だよ! 敗者は死ぬとかそんなルールでしょ! 帰る!!」

「オレだって嫌だよ!」

「違うぞ」

「「え?」」


「そんなわけないじゃないか」とリボーンは何を考えているかわからない目で私と綱吉に訂正をした。とりあえず腕を抱きしめるようにつかんできている綱吉を振り払う。好きな女の子と好いてくれている女の子の前で他の女子に抱きつくとかやってはいけないことだろう。ばっと振り払うと綱吉はショックを受けていた。京子ちゃんのこと好きなんだよね!? それならわかるでしょ!? そんな捨てられた子犬みたいな目で私を見ないで!!


「勝ったファミリーには豪華賞品で」


うんうん、そこは誕生日と一緒だね。


「負けたファミリーは罰金1億円だ」

「帰る」

「紗夜!? 見捨てないで!!」


ふざけるな。罰金1億円をどうやって中学生が返すんだ。大人ならまだしも私たちは学生だぞ。守られる立場であり学生の本分は働くことではなく勉学だ。1億円を稼ぐ時間もないし持っているわけがない。親のスネをかじっている身じゃないか。
後ろから抱きついてくる綱吉から逃れようと奮闘する。だからっ、好きな子と好かれている子の前で他の女子にべったべたすんな!!


「しかたないよ掟だもん」

「その口調ムカツクぞ!!!」


綱吉に激しく同意だ。初めて一歳児の赤ん坊を本気で殴りたいと思った。

そしてこれを冗談だと思い込んでいる山本くんとハルちゃんと京子ちゃん。子どもの遊び、お正月のイベントで楽しそう、1億円なんて夢がある、とハハハと笑っているがなぜだ。今までのリボーンを見ていたら本気だとわかるだろう。あまり一緒にいない私でさえわかるのになぜあの三人は遊びだと思えるんだっ!! 天然なのか!? ちっくしょおーー!!


「まってくださいリボーンさん。なんでファミリー対抗戦にファミリーじゃない奴がまじってるんスか」

「獄寺くん……!!」


獄寺くんが神に見えた。後光を放っている。指しているのは笹川先輩だけどファミリーでないことに関しては私も同じ。綱吉に捕まったまま獄寺くんを崇める。綱吉が裏切り者と顔で語ってきたが私は一般庶民なのだ。当たり前じゃないか。
そしたらリボーンはキャバッローネに比べてボンゴレは人数が少ないから特別に綱吉の知り合いもファミリーと認めることにしたんだと。伝統ある行事のくせにアバウトすぎるだろっ!! 地団駄を踏むところだった。最近口が悪くなって心が荒れるようになった。原因はなんだろうと考えるがわかりきっていて認めたくない。私は平和に暮らしたいだけなのに。生きたいだけなのに。


「紗夜ちゃーん!」


諦めて額を押さえているとハルちゃんが走ってくる。せっかくの振袖なのに走り回ったら崩れちゃうよと注意すると嬉しそうに頬を緩めるのだ。


「ハルは応援しますよ」


にこっと笑ってハルちゃんは私の背中を押した。結構な強さだった。よろけてしまって転ぶかと思ったが、「うおっ」と誰かが受け止めてくれた。


「大丈夫か?」

「………………………はい」


きらきらと王子スマイルで受け止めてくれた。新年早々縁起の良いものを見せてもらえた。


「ご、めんなさい……ありがとう、ございます」

「いいや」


朗らかに私の頭を撫でる。ディーノさんといると乙女の心が出てきてしまうのは何故だろうか。ディーノさんは絶対学生時代からもってもての女に困ったことはないタイプなんだろうな。こんなことは慣れているだろう。ディーノさんときっかけを持つために当たり屋みたいな女子は増大していたんだろうなあ。私だってある意味当たり屋もどきのことをしている。

ハルちゃん!

きっと視線を向けるとぐっと親指を立てられた。なんだと……? もしかして怒っている? 綱吉とくっつきすぎていたから怒っているのかな? 邪魔者排除しようとしているのかな? でもあれ私じゃないよ? 責任転嫁しているように見えるかもしれないけどくっついてきたのは綱吉だよ。綱吉もくっつくというより裏切りは許さない逃がさないという気持ちでくっついていたのだから恋だの愛だのそんな雰囲気はなかったんだよ?


「紗夜はキモノ着ないんだな」

「その、苦しいので」


全くもって自慢とかではない。辛い時もあるということだけはわかってくれ。あまり言葉にはしたくないが私は着物が似合う体型ではない。着るときは胸を潰さないといけない。苦しいし動きづらいので初詣に着るだけでいい。


「見たかったな。可愛いだろんなあ」

「きょ、恐縮です」

「そうだ。手、繋ぐか?」

「いっ、いえ!」

「転んだら怪我するぞ。女の子が肌に傷を残したらいけないからな」


白い歯が輝いている。
もうっやだっ。顔が熱を持つ。じわじわする。冬なのに熱い。コート脱ぎたいぐらい熱い。

黒服のスーツさんたちのヒューヒューという口笛つきの冷やかしが辛い。冷やかしじゃなくて祝福かもしれないが冷やかしにしか聞こえない。


「部下の言葉は気にすんなよ。ほら」

「………………ご、獄寺くんっ!」

「あ"あ"??」

「獄寺くんと繋ぐから大丈夫です!!」


なぜか不機嫌だった獄寺くん。近くにいたからというだけで被害を被せたのがいけなかったのかもしれない。それ以前から不機嫌だったが。
ディーノさんにこれ以上触れていると爆発しそうなので獄寺くんと繋ぐというていでお断りさせてもらう。女慣れしているイタリア人怖い。


「ディーノはヘナチョコだったから学生時代女からは嫌われていたぞ。ここ最近ようやくモテるようになったな」

「え!?」

「リボーン!! な、なんでもないからな!!」


イタリアの女子たちの理想男子像高っ。ディーノさんを嫌うとかどういうことだ。並盛だったら一瞬でファンクラブできるのに……。というよりリボーン、なんで今突拍子もないこと急に教えてくれたの? 顔に出てた?


「……いつまで掴んでるんだよ」

「あっ、ごめん」


繋ぐふりをさせてもらった獄寺くんから手を離す。ごめんごめん。愛しの綱吉はハルちゃんに強引に連れてかれて先行っちゃっているね。五十メートル先にいる。もう片方には京子ちゃん。ハーレム男め。両手に花をしている。というよりみんなもう行ってしまっている。リボーンのタイミング良すぎる声に考え込んでしまっていた。
どうぞ綱吉を追ってくださいと笑顔で見送ると獄寺くんは不可解そうに片眉を上げた。


「お前も行くんだろ」


チッと舌打ちをして手首を掴んできた獄寺くん。え、。
ぐいっと引っ張られて歩きだした。私実は言うとこの隙に帰ろうと企んでいたんだけど。なんで許してくれないの?


「ボンゴレファミリー……違う」

「知ってるわ。リボーンさんが決めたんだから鳴神も参加しろ」

「嫌。1億円とか払えるわけない」

「勝てばいいだろ」


わがままは聞き入れてくれない。ちくしょーー……。簡単に言うけれど私は合戦ができるほど運動神経良くないんだよ……獄寺くんと違うんだよ。そもそも意気込みを表明するのになぜ戦わないといけないのだ……。


「私がいても足を引っ張るだけだよ……」

「……ンなのオレがどうにかしてやる」


そこはじゃあ帰れって言ってくれよ。女心がわかんない奴め。
もう、と獄寺くんに顔を向けると……耳まで真っ赤だった。あ、ごめん。恥ずかしいセリフ言わせちゃったみたい。ほんと、ごめん。獄寺くん人を気づかう性格だと思わなかったから慰めてアピールしちゃったかもしれない。慰めてアピールじゃなくて突き放してアピールだったんだけど。


「……その、勝ちたいなら恭弥呼び出す?」

「呼ぶな」


群れていると理不尽な怒りをぶつけられるだけだけど。獄寺くんは恭弥が心底気に入らないらしく笹川先輩を仲間にするという時よりしかめっ面だった。