愛の予感に救援を
ランボを見つけるために降りたはいいが本格的に迷子になった。未経験のこと続きでどうすればいいのかわからない。頼りの携帯は圏外。動くべきか動かないべきか。
「ハル?」
「ビアンキさん!!」
遺書でも書くべきかな。言葉にしてはいけない絶望的なことを考えていたらピンク色の髪の美人さんが洞窟から出てきた。コウモリとか出そうだから入るのは保留にしておこうとハルちゃんと相談した洞窟。賑やかな声に出てきたそうだ。
「イーピンにランボに……紗夜、かしら?」
「はい、」
なんで名前知ってんだろう? 初めて会ったのに。
「はじめまして。貴女のことはリボーンやツナからよく聞いてるわ。私はビアンキよ」
「鳴神紗夜です」
リボーンや綱吉とどんな関係なのだろうか。聞きたいけど聞けない。リボーン綱吉関係といったらランボや獄寺くんタイプだってあり得る。でももしかしたらハルちゃんタイプかもしれない……! 危険な爆弾類を持ち込んでいるタイプかただの一般人。ビアンキさん日本人っぽい名前じゃないからなあ……危険人物タイプかもしれない。危険人物って大体日本人じゃないし。獄寺くんだって日本人っぽい名前しているがイタリア多めのクォーターだし。
観察するようにビアンキさんを見入る。冬に寒そうなスカート、じゃない見るところは。ランボや獄寺くんタイプみたいに武器は……持ってなさそうだ。というより美人さん。こんな美人が裏の世界に携わっているわけないか。
「……ずっと聞きたかったのだけど」
「何ですか?」
「貴女はリボーンからのボンゴレへの勧誘をずっと断っているそうね」
「はい」
そりゃあ大体の人は拒むだろう。ねえハルちゃんと同意を求めようとしたがこの子はマフィアの妻になろうとしている子だった。マフィアのことを軽く考えているが味方ではないのだ。
……ん? なんでビアンキさんがそのことを知っているんだ? 普通の一般人はボンゴレという単語はパスタぐらいにしか使わない。偏見だったらごめんなさい。
「断り続けることでリボーンを拘束して私とリボーンの愛を邪魔してるんじゃないわよね……? そうだったら殺すわよ」
「いえ! そんなことありません!!」
この女性は危険人物だった。いつの間にか手に持っていたのは毒々しい何か。即答しなければ毒殺されていたのではないだろうか。目が据わっていたんだよ。はい、と嘘でも言葉にしたら私はどうなっていたんだろうか……。
がたがたと震えてハルちゃんの後ろに隠れさせてもらう。沸点低すぎだろ……! 殺すとか一般ピーポーに簡単に言わないでよ!! ハルちゃんはビアンキさんの行動は冗談で成り立っているものだと思ってる。今のやりとりを見てどうしてそう思える。この天然がっ!!
「それじゃあ誰か他に愛している人がいるのね」
「えっ」
「いないの? やっぱりリボーンを、」
「いましたぁぁああ!!」
久しぶりに叫んだ。命の危険がかかると人間って何ぶり構わずになれるらしい。ハルちゃんがわくわくととても楽しそうに振り返ってきた。生き残るために言っただけで、でも嘘でしたなんて通じないから、……それでもあの人のことは言いたくないし……、うんっとうんっと……。
「…………………名前も素性も何もかも知らない人ですけど、かっこよくて素敵だなと思った人がいました」
「誰ですか紗夜ちゃん! ハルの知り合いですか!?」
ハルちゃんはらんらんと目を輝かせる。問題のビアンキさんは無言で凝視してくる。……とりあえずかっこいいと思えた人は頭に浮かんだからリボーンと異なる特徴をあげていけばいい。
「……初めて会ったのは病院だったんです。金髪で、180センチくらいの年上で、太陽のようにきらきらとした笑顔で、ぶっそ……少し危険な香りがする、女子の憧れ全てを詰め込んだ男の人です」
物騒は褒め言葉ではなかったので言い換えてこの前病院ですれ違った男の人を説明する。二度と会うことはないからハルちゃんとビアンキさんに説明しても変にくっつけさせられることはない。
実際とてもかっこよかったから照れ照れしながら説明する。あんな人と付き合えたら幸せだ。性格がクソだったら最悪だが、たぶんいいと思いたい。カッコよくても恭弥タイプだったら遠慮する。
しばらく反応がなかった。ランボとイーピンの楽しそうな声が救い。
「〜〜〜〜〜っ紗夜ちゃん!」
「はっ、はい!」
ハルちゃんにぎゅっと抱きしめられた。
「その人のこと大好きなんですね! ハル応援します! その人と紗夜ちゃんの恋を!!」
二度と会えないからしなくていいよ。拳銃とか物騒なことを言い放つ人と恋仲もちょっとね……。
「そう年上……。私も応援するわ」
微笑をくれたビアンキさん。敵に分けられていた私を敵でも味方でもないカテゴリーに変えてくれたのだろう。あっぶね。
「それじゃあ紗夜ちゃんの好きな人を探すためにも早く帰らないとですね! ビアンキさん、どこが帰り道ですか?」
「さあ。私も三日間帰れていないから」
平然と言い放った言葉に私たちの口は閉じた。ハルちゃんと私だけでなく、ランボとイーピンまでもが。
好きな人どころではないですね。私たちは並盛に帰れるのでしょうか。
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「ギャアアアアアアア!!!!」
泣きじゃくるハルちゃんとランボを宥めながら洞窟で救助隊が来るか来ないか占っていたら獄寺くんが現れた。そして倒れた。役に立たない救助隊め。逆にビアンキさんに助けられてどうする。ライターは手から落とすし。ここに燃えやすい枯れ木があったら火事になっていたところだ。
「見てくるわ」
イケメンかよ。率先して危険を確かめてくれるビアンキさんにきゅんっとなった。だが気絶した獄寺くんは置いていかないのね。足手まといではないかな。
「ハルたち助けこないでここで終わっちゃうんですかね」
「そんなことないよ。家族が捜索願い出してくれると思うから。この山に来ることは伝えてきたんでしょ?」
「はい……。ごめんなさい紗夜ちゃん……。紗夜ちゃんはハルが巻き込んでしまいました……。嫌がる紗夜ちゃんを無理に連れてきて……」
「そんなことないって。私も行きたくて来たんだから」
「紗夜ちゃん……。紗夜ちゃんは優しいですね。大好きです」
しくしくと涙をこぼすハルちゃんを抱きしめる。大丈夫大丈夫と声をかけながら背中を撫でた。ランボも膝でおいおい泣いているしイーピンは不安そうに服を掴むし。この三人といると私が取り乱したら終わりだと思う。取り乱して占いに走っていたんだが、外面は平常心が乱れてないように見えたのが幸いだった。そもそも巻き込んだのはハルちゃんじゃなくてランボ。
「あなたたち、出てらっしゃい」
ビアンキさんが外の安全を確認してくれたようだ。何もなかったらそのまま戻ってくるだろうけどなぜ呼ぶのか。……救助隊が来たから?
「立てる? 外、出てみようか」
「はい……」
ハルちゃんに寄り添うように歩く。ランボはイーピンが寄り添ってくれている。イーピンのメンタル強い。もっと泣いていいんだよ5歳。
陽のさす方にハルちゃんとゆっくり歩いていくと…………
「ツナさ〜〜〜〜ん!」
「ハル!!? 紗夜まで!!」
綱吉一同だった。ハルちゃんが綱吉に抱きつく。よかったね。
獄寺くんがいたから綱吉もセットでいるといつもなら考えるが今日は遭難していたことから余裕がなくて頭が回らなかった。救助隊がよかったな。助けてくれることには変わりないしいいか。
迷い込んだ経緯をイーピンが説明してくれる。その翻訳をリボーンが。あの一歳児何カ国の言語わかるんだろう。
「でもハル幸せです。ツナさんが助けに来てくれたんですもん」
「い"っ!」
……………い"?
「あの…いや…っ実は…オレ達も遭難してるんだよね…」
「はひーーーっ!!!」
そうなんだー。……違う、今のはそういうのじゃなくて。落胆と諦めが入り混じった相槌であって習ったのではない。私も思ってから気がついた。誰に弁明しているんだ私は。喋ってないんだから必死に弁明しなくていいよ。
みんなして遭難か。生きて帰るのは難しいのかな。……私は今世でも中学生で亡くなってしまうのだろうか。前世での死に方はあまり記憶に残ってないけれど怖かったことと憎悪を向けられたことは覚えている。知らない人の満ち溢れた憎悪。今もまだ怖い。身体が震えてしまう。
大丈夫、私は生きている
ここにいるんだ
「聞いたところによるとキミがいたおかげでみんな取り乱さなくてすんだんだってな」
震える身体を抱きしめている姿を遭難したことによる恐怖と勘違いされたらしくぽんっと誰かが頭を撫でてくれた。このメンバーで頭を撫でるのは強いて言えば山本くんだが山本くんの声ではない。
「……あ」
「覚えてるか? 病院で会ったよな」
二度と会うことはないと思っていた金髪の物騒な人が目の前にいた。朗らかに笑みを浮かべていて子どもを慰めるように優しく頭を撫でる。
「は、い」
「ツナのファミリーに紗夜っていう赤髪の女の子がいるって聞いていたんだけどやっぱりキミだったんだな。オレはディーノだ。もう大丈夫だ。助けてやる」
……わかっている、今がどんなに深刻な状況かはわかってるの。でもときめいてしまった私を許して。仕方ないじゃん。イケメンが微笑んで助けてくれると私だけに宣言してくれたんだから。つり橋効果もある、きっと。
撫でる手が大きくて男の人の手で、優しくてあったかくてなんかよく分からなくて恥ずかしい。照れ隠しに少し視線を下げて髪の毛を意味もなく触る。
この人、ディーノさん、だったか。性格もとてつもなくよろしい。
「「……病院?」」
二人の女子の声にはっとなる。照れている場合ではなかった。綱吉に抱きつく女の子とリボーンに抱きつく女性にバッと勢いよく顔を向ける。ディーノさんが不思議そうに首を傾げていたが今は反応する余裕はない!!
「金髪……」
「180はあるわね」
「年上で……」
「へなちょこでもマフィアのボスである以上危険なことには巻き込まれるわ」
マフィアのボスというところにツッコミを入れたくなったがそんなこともできない。ハルちゃんもビアンキさんもディーノさんを品定めするように見つめるのだ。ディーノさん困っている。訳を聞かれても私が答えられるわけがないっ。
「……紗夜ちゃんは!! とても頼りになります! 優しいです! 巻き込んだハルたちを怒らないで微笑んで許してくれました! 学校では生徒会長をしているそーで、皆さんから好かれています!」
「ハルちゃん!?」
唐突のアピールタイムに入ったハルちゃんの口を塞ぐ。
待ってお願いやめて。
二度と会うとは思っていなかったから話題にしてしまったの!! 会うとわかっていたら言わなかった!
顔を真っ赤にしてハルちゃんに静かにしてもらうよう懇願する私にリボーンは全てを理解したらしく、ニヤリとほくそ笑んでいた。もちろんそれを視界に入れている余裕はない。
「……そうね。私とリボーンの邪魔をした貴方には死んでほしいけれど」
「ど、毒サソリ……」
「紗夜のために殺すのはやめといてあげる。他の女にうつつを抜かしたら殺すわ」
「ビアンキさんっ!!」
なんで辱められないといけないのだろうか。
「違うんです違うんですそうじゃないんですよ……」と熱くなった顔を隠しながら弁解する。
「マフィアらしくなったじゃねーか。まだ愛人の一人もいないんだろ? 女関係何も聞かねーからな」
「うっ……。紗夜はオレが……あーーーっ」
「まあ違うだろうけど」
「はぁ!? からかったなリボーン!!」
「紗夜に手を出すときはボンゴレの許可がないと死ぬぞ。ほら見てみろあいつらを」
羞恥心でいっぱいになっていた私には誰の声も届かなかった。今すぐこの場から逃走したかったが走ったら余計に遭難するし一人遭難は辛いのでいくら周りに味方がいなくてもここにいるしかないのだ。
その後いろいろあり山火事になり巨大カメに襲われることになった。ディーノさんが手を引いて助けてくれた。この人は私を惚れさす気でいるのではないか、と思うほどカッコよくて…………少しドジな場面もあった。