生まれた時から未来は決まっていた


「きょ〜や……おおう」

「どうしたの?」


応接室、昨日からは風紀委員会の部屋となった場所に足を運ぶと倒れているクラスメイト。綱吉山本くん獄寺くん。たしかにそろそろ誤魔化すのは限界だと思っていたが、校舎破壊していたことが露見して制裁が下ったところだろうか。私のタイミング悪い。


「知り合い?」

「…………………………ううんっ」


私の笑顔は絶対に輝いていた。人間というのは結局自分が一番可愛いのだ。この三人と知り合いだと恭弥に知られると不明だった校舎破壊と出どころのわからない校舎修繕費についても気がつかれてしまう。修繕費と校舎修理の業者さんはリボーンが用意してくれた。どこから出たお金かは怖いから聞けなかった。業者さんは仕事が早く、一日も経たずにいつも直していく。おそらくだがあの業者さんたちは裏の世界の人。


「昨日決まったんだけどさ、やっぱり応接室はずるいから同じ待遇にしてくれといくつかの委員会から申し合わせが」

「誰? この草食動物たち救急車に乗せれるほどグチャグチャにしたらそっち行くから」

「……と伝えてまだ言ってくる人いたら後日また言うね」

「紗夜は回りくどいこと好きだね」


好きではない。ただ恭弥が出向くと怪我人が多数出てしまうのだ。生徒会室も今年から優遇されるようになっていろいろ便利なもの置かれるようになったからなあ。一部だけ優遇されているのは思ってしまうことあるよね。


「あー、いっっっ…………」

「やはり軽かったか」


綱吉が起き上がってしまった。倒れてくれていれば私は恭弥をどこかに連れ出していけたのに。空気読んでよっ。ぐわっと顔を向けると綱吉はビビったがすぐに目をパチクリさせる。そして周りを確認して友人二人がぶっ倒れていることに焦った。


「あれ? 何で紗夜が? えっ、ごっ…獄寺くん!! 山本!! なっ、なんで!!?」

「知り合いなの?」

「……クラスメイトだったような気がする」


わざわざ他人のふりをしたのに嘘だとバレた。視線が痛くてすっと逸らす。どんな経緯で綱吉たちが恭弥の元に訪れたかはわからないが行くなら一人で行かないと。全員用事があっても一人ずつ出向かないと。

視線を逸らし続ける私が悪かったのか、恭弥の考えていることはわからない。たまにぶっ飛ぶのだ。


「ふーん、それなら二度と立てないようにしないと」

「やべぇ」


おかしいよ。どうしてそうなったの。
恭弥は唯一立っている綱吉をターゲットにする。ひ弱で女子に腕相撲も負ける綱吉が恭弥に勝てるわけないじゃない!


「っ、なにするの」

「綱吉! 今すぐその二人を連れて逃げて!」

「えっ、でもそれだと紗夜がっ」

「いいから早く!! 恭弥は女子には手を出さないっっ!」


恭弥を後ろから抱きしめて動けないようにした。恭弥は綱吉と違って私より力あるんだよ。本気を出すこともなく拘束を振り解くことができる。もともと縛られることが嫌いな人だし驚いている今の一瞬だけだ。


「それは困るぞ」


仲良い人が仲良い人に半殺しをされるところなんて見たくない。頑張って恭弥を動けないようにしていると、私より高い声が耳に届き拳銃を発砲したような音が響いた。


「うおぉおぉっ!! 死ぬ気でおまえを倒して紗夜を助ける!!!!」

「いや、助けも何も……」


恭弥は本気でブチギレない限り女子には手を出さない、はず。私の経験上。
綱吉のらしくない怒号に少し力が緩んでしまった、のと同時に恭弥が私の頭を掴んで引きずり剥がして床に放り投げる。「うわっ」と尻もちをついてとっさに閉じていた目を開くと恭弥が綱吉のアゴにトンファーを当てていた。だよね、そうだよね。何で綱吉はパンツ一枚なのかは不思議だったが当たり前の光景であろう。


私が目を閉じていたとき、綱吉が恭弥にパンチを繰り出していて、恭弥が私を危険から遠ざけたがそのことに気がついたのはリボーンのみ。


綱吉ー! と叫びかけたがはっと口を抑える。立ち上がった綱吉に倒れたフリしなさいとジェスチャーで伝えようとしたが綱吉は恭弥しか見ない。そしてあろうことか、綱吉は恭弥の頬を思いっきりグーで殴ったのだ。
同世代に殴られたのは初めてなんじゃないかな。恭弥の価値観がたぶん少しだけ変わった瞬間。驚いている恭弥の一瞬の隙を逃さず、綱吉はどこから出したかわからないトイレのスリッパで


「タワケが!!!」


ぶっ叩いた。


笑う場面だったのだが恭弥から恐ろしい何かが出ている気がして声が出ない。漏れ出た瞬間、女だろうが子どもだろうが関係なく殺される。


「………ねぇ…殺していい?」


叩かれた頭を抑えて、顔を上げた恭弥。その表情はいつも通りなのだが何か違う。

やっぱり!! 恭弥の逆鱗に触れた!!
どうすれば……っ、誰を呼んでくればいいの!?

こわいこわいこわい!! 久しぶりに恭弥が怖いっ!

綱吉の頭が発火していることもパンツのことも目に入らない。カチカチと歯が鳴る。腰が抜けて動くことができない。情けなく四つん這いで移動して獄寺くんをべしべし叩く。


お願い起きて!! 起きて止めて! 不良だからできるでしょう!?


ふざけた先入観で焦りながら獄寺くんを何度も叩く。その間にも恭弥の怒りは募るばかり。いつのまにか窓のさっしに座っていたリボーンと何かを話している。恐怖から上手く言葉が聞き取れないが恭弥が赤ん坊であるリボーンをターゲットにしたことはわかった。窓から飛び降りても五体満足だったり難しい言葉が流暢でも、赤ちゃんであるリボーンが恭弥の攻撃を受けたら本当に息の根が止まる。そんなところ見たくない。揉み消せても息を引き取る瞬間を見たくない。だけど声が出ない。
ぱくぱくと金魚のように口を開閉させている。獄寺くんを叩き起こす手はいつの間にか止まっていた。


いやっっ!!


死ぬ場面なんて見たくなく、目を力強く閉じる。私の耳には金属音が届いた。それはトンファーと十手が衝突した音。リボーンは受け止めていたのだ。
拮抗した力が衝突して、恭弥の弾む称賛の声が。


リボーンが持っていた爆弾で応接室は爆風に包まれて、私は気がついたら綱吉によって抱えられて屋上に移動していた。











「……もう、無理」

「ごめん紗夜! 巻き込んで!」

「10代目が謝ることないっスよ! こいつが巻き込まれにきたんですから」


自分からあんな危険な場面に巻き込まれに行く平凡中学生がいたら見てみたいわ。
屋上に横になって膝を抱える。打撲とスリ傷を負っているみんなより怪我も何もない私が一番怯えているとはなんでだ。精神が違うのだろうか。基盤的な何かが。


「なんで紗夜がヒバリのところにいたんだ? オレ気絶してたからわかんねえんだけど」

「そうだよ! 何であんなに仲良さげだったの!?」

「生徒会長と風紀委員長……」

「「あ」」


綱吉と山本くんの声がハモる。
役職を持つものどうし話をすることはあるんだよ。家も隣だから。だがこれは言う必要はない。


「……っふふ、ふふふふ 恭弥がトイレのスリッパで頭を……あっはははは!」


でも少し前のことを思い出したら笑いが込み上がってきた。「ぶっ壊れた……」という獄寺くんの声は今回は聞き逃したことにしてやろう。でもあれは私も怒る。普通のスリッパでもイラつくのにトイレのスリッパはいけない。
少しだけ笑った後小さく息を吐く。アジトだがなんだか知らないけど欲しいなら部活でも新たに作って申請してくれれば与えるよ……。もうやめてほしい。下手に恭弥を刺激しないで、ほしい。


「……綱吉」

「何?」

「マフィアの10代目の跡継ぎというのは本当なの?」

「何で紗夜が知ってるの!!?」


その驚きようは本当のことなんだ。綱吉はわかりやすくてありがたい。はははっとから笑いが漏れ出てゆっくりと起き上がる。髪の毛がボサボサになった。


「獄寺くんがよく10代目って言ってるし……隠したいならその呼び方変えた方がいいよ」


そこからマフィアに繋げれるものなんて滅多にいないだろうが。私は最初大企業の跡取り10代目とかそういう系統だと思ったし。


「マフィアを信じる気にはなれたか?」

「……爆弾持ち出されて綱吉に肯定されたらねえ」


今まで校舎破壊を誤魔化していた苦労も水の泡。恭弥には全てがバレた。隠していたことを本人たちが無邪気にばら撒いていくから私は困ったよ。
またまた苦笑が出てきた。リボーンはぴょんっと私の腿の上に座る。


「んじゃっ、ボンゴレ入るか」

「だめ!! 紗夜を危険な目に遭わせられるわけないだろ!! 絶対だめ!!」

「いいじゃねーかツナ。紗夜も一緒にいた方が楽しいぜ」

「オレは10代目に賛成です! あいつは何もできっこありません!」


私に問いかけたはずの勧誘は他のものが答える。賛否は分かれているがリボーンは私にしたんだ。ギャアギャア言い争う三人にふっと笑みが漏れ出た。


「2対1で反対だね」

「いや? 2対2だぞ。オレも賛成だからな。それに絶対に紗夜は今後必要になる」

「あははっ過大評価だよそれは。事務管理能力だっけ? それに関しては私より優れている人はたくさんいる。少なくとも私より恭弥の方が上だ」


論破だ。それに私はマフィアは怖い。怖いものには関わらないのが一番。今度こそ天寿を全うするのだ。今後の未来を具体的に描いたことはないがマフィアに関わることはないだろう。私の人生は前世持ち以外は平凡で終わるのだから。天才少女になりたいという夢は恭弥で現実を思い知らされて砕かれた。


「ニッ」

「ん?」

「紗夜は必要だ。絶対にな」


飛び降りたリボーンは綱吉に蹴りを入れた。……じゃない! 和やかに見ている場合ではないだろう!


「綱吉!?」

「いい加減にしろよリボーン!! お前のせいであの人には目をつけられるしっっ!!」

「それは紗夜がどうにかしてくれる」

「うわ〜〜他力本願」


私がするのかい。

泣きそうな綱吉に「あー大丈夫大丈夫」と適当に慰めといた。泣きたいのは私だ。まだ機嫌悪いかな……。逃げ場どこにもないし、どうしようか。












「前世、という言葉。……もしかして…。あの言い伝えが本当なら…初代以来か。紗夜、お前はボンゴレに必要な人間なんだ」