知らないから踊れません


みんなとワイワイ話しながらお寿司を食べる。お守り渡せたの? とビアンキさんに心配されたので渡せたことを伝えた。お守りを渡した時の反応がどちらも想像を超えてはいたけど。泣き出すとは思わなかった。優しく微笑むとは思わなかった。
そういえば…………。……あの二人はパーティーに来ないのかな? 見かけないけど。……それはそうか。クロームちゃんはこのパーティーに集まっている何人かは知らない人だから嫌だろう。気持ちはわかる。友達の友達とは簡単に友達になれないよね。わかるわかる。恭弥は誘うだけ無駄だ。一刀両断されるさ、行かないって。


「おっ、そうだ。ずっと気になっていたんだ。紗夜」

「はい?」

「ビアンキの料理食ってくれ」

「はい……?」


あ、違うの。今の肯定じゃないの。なんでビアンキさん私に料理渡してきたの? なんで私はそれを受け取ってしまったの? ありがとうございます、じゃないよ私!!


「リ、リボーンさん?」

「遠慮しないでいいぞ」


私は知らぬ間にリボーンの怒りまで買ったのだろうか。
ビアンキさんの料理はポイズンクッキング。ポイズンクッキングをくらった被害者は10年後のランボで見たことがある……。ビアンキさんの料理事情を知っているものが食べなくていいと止めてくれるが全員ビアンキさんの睨みで黙らされていた。弱い男どもが。どうしてそれでヴァリアーに勝てたんだ。


……………ふぅ。
お寿司に見えるけどお寿司じゃない何かを一度テーブルに置く。両手を合わせて天にお祈りした。


どうか……っ! どうか生き延びれますように……っっ!!


ビアンキさんの料理を拒否したらビアンキさんに滅される可能性だってある。ビアンキさんが私にそんなことするはずはないだろうが可能性は0ではない。


「い、いただきます」


いけるいける。人間って思い込みの力が強いんだ。これは抹茶スイーツ。桃。抹茶スイーツ。桃。
震えて上手く箸で掴めなくて時間がかかり、口に運ぶ時も震えて何かよくわからない食材がお皿の上に落ちる。毒々しい紫色の食材の色ではない何かが。一部の男子とビアンキさんが見守る中、私は小さく口を開いた。


南無三!!!


「紗夜っ!」


祈りは届いて、箸で掴んでいた食べ物らしき毒が空を飛び、べちょっと地面に落ちた。


「食べないで! 嫌なら嫌って言わなきゃ!!」

「……後ろ…」

「ツナ……あなた、私の料理に何するの」

「ヒ、ヒィィィィ!!!」


胸ぐら掴まれて脅されている綱吉。ビアンキさんの片手には大きいパーティー用のお皿いっぱいに大量に盛り付けられた料理が乗っている。罰としてこれを食べろ、と。料理を台無しにされて傷ついた心をアレを食べることで癒せ、と。……ありがとう綱吉。あなたの犠牲は無駄にはしない。


「やっぱり食えねえよな」

「何をしたかったのかな?」

「紗夜は毒に耐性があるのかと思ったんだが……そんなことないよな。怯えていたのは伝わってきた」

「私がそんな特殊な訓練を受けてきた人間に見えた?」


見えないよね。コロリとお陀仏になるところだよ。綱吉が止めてなかったらリボーンはどうしていたのかな。見捨てていたのかな。


「ツナが止めるのはわかっていたぞ。あいつここに来てからずっと紗夜のこと見てるからな」

「喋ってないよね私」

「そんな顔してたぞ」


表情そこまで豊かではないはずなんだけど。
綱吉はビアンキさんからあーんしてもらっている。美人さんからのあーんは世の中の男子なら羨ましがるものなのだが綱吉は全身に汗を流している。ビアンキさんの料理レベルに気がつかないハルちゃんがビアンキさんに場所を代わってくれと懇願して今度はハルちゃんのあーんだ。それでも綱吉は食べない。当たり前か。京子ちゃんなら食べたのかな? 眺めていると綱吉が私に顔を向けたので手を振った。助けてくれてありがとう。ごめんね私は助けないよ。意図が伝わったのか首をブンブン横に振られる。助けろってか? ちょっと難しい。


「誤解すんな、ってよ」

「何が?」

「好きで食べさせてもらってるんじゃないって」

「そうだろうね。ビアンキさんの料理だし」

「……全然伝わんねーな」


ビアンキさんって自分の料理についてどう解釈しているのだろうか。武器として使うこともあるって聞いているから自分が毒を作り出す才能があることは自覚しているはずなんだがそれを身近な人に出すのはなぜ? 自覚していないの?

綱吉のビアンキさんからの救出劇を眺めて……おっ、山本くんが助けた。


「毒に耐性がないのか?」

「ないよ〜」

「じゃあなんでチェルベッロは紗夜が毒では死なないって言ったんだ?」

「うーん……なんでだろうね。私にはわかんないや」

「…………………嘘ではないよな」

「うん」


私は命を狙われて生きてきたわけではない。毒殺される心配なんて抱えることなく呑気に生きてきた。毒に耐性をつける苦行はしたことない。私の知らぬ間に勝手にされている、または記憶操作されていたらわからないけど。そんな非人道的なことされるわけないけどね。特別なものを持っていない、平凡な日本に住み、平凡な学校に通う凡人に。

あっはは、と笑うとリボーンも信じてくれたのか「そうか」と目を伏せてコロネロを呼んだ。

あ、さっき聞いたんだけどコロネロ京子ちゃんと一緒にお風呂入ってたんだってね。ちょっと問題じゃない? 君たち本当に赤ちゃんなのかわからないんだから。ディーノさんが10代の頃家庭教師をしているリボーンと同じ日に同じところで生まれたってことは同い年でしょ? 年齢詐欺の疑いまだあるからね私。そのくせ故郷は違うって不思議だ。


「なんだリボーン」

「紗夜、ヒバリの顔そっくりの温厚なやつ紹介してやるって言ったの覚えてるか?」

「あーー覚えてますぅ覚えてますー。恭弥が温厚は気色悪いね」

「だからヒバリじゃねえ。オレたちの知り合いに一人いるんだ。ヒバリとそっくりの顔のやつが」

「ああ。そっくりだったなコラ。一瞬解けたのかと驚いたぞ」

「ほんとに大丈夫だから」


恭弥の顔で常日頃優しいのは違和感の塊だから無理。下手したら殴って、誰だお前!!! と叫びそう。そもそもあの顔面高偏差値を持つ男がそこらに簡単にいるか。知り合いとかありえない。話盛っているだろう。あ、恭弥の悪口は言ったら痛い目にあうんだ。昨日学習したのに。


「それにイーピンの師匠だ」

「強そうだね」

「もういいぞいなくて」

「……これだけのために呼んだのか?」

「ああ」


イーピンが強いんだからその師匠といったら同等またかそれ以上だろう。中国人さんなのかな?
頭突きをしあう赤ん坊。「くだらないことで呼ぶな」「くだらなくねえ」とケンカする赤ん坊二人を止めなくてはいけないはずなんだが、リボーンとコロネロの間に入ろうとは思えず楽観的にお茶を飲む。
仮にだけど恭弥そっくりさんは中国人だとして、なぜイタリア出身の二人が知り合いなんだ。あれ? イタリアであってるけ? 思い込みだっけ?


……まあいいか。会うことないし。
イタリアという単語でディーノさんに用事があることを思い出した。足元で喧嘩する二人は置いてディーノさんを呼ぶ。自分から行くのが礼儀かもしれないが歩いたら歩いたで怒られてしまう。

というより赤ん坊たち頭硬いな。石頭なの? 痛くないのそれ?


「昨日家に帰って気がついたんですけどね、またカルロさんからメール来てたんですよ」

「ぶっっ!!! ……悪りぃ」

「大丈夫です」


私にはかかっていない。咳き込むディーノさんの背中を撫でる。
お茶飲んでいる最中に話題を振ったのがいけなかったのかな。カルロさんの名前でバジルさんと変態までもがやってきた。カルロさんのメールの一件でヴァリアーに最後の最後で問い詰められたのを知っているメンバーだ。


「前と違うアドレスからなんですけど、Carloという単語が最後にありまして。本文イタリア語で解読不可能でしたけど……ディーノさんとXANXUSさんとスクアーロさんの名前があったのはわかりました」


Superbia Squaloという単語はきっと人名でスクアーロさんのことだよね? もしかして昨日私を問い詰めた後連絡をお互い取ったのだろうか。ディーノさんに携帯を渡して私は一人考察だ。


「んん!?」


ディーノさんは何か知ってはいけないことを知ってしまったように動揺を示す。誰にもメールの画面を見られないように一人で確認した。なんだろう? みんなも不思議がっていた。
まあいい、考察の最中だ。昨日一部が気絶した後、ヴァリアーが私にXANXUSさんが血の繋がっていないことを知っている人の名を教えろ、と問い詰めてきた。口は割らなかったがスクアーロさんが大声で叫んだことで正体は知られた。観覧席で口を滑らしたのがいけなかったかな。
そこからは波乱だった。カルロさんの繋がりを話せと脅された。ヴァリアーは私に手を出すと謀反扱いされるため手を出すことはなかったがあれは立派な脅しで恐喝。話し合いを強調していたが全く違う。ディーノさんが恭弥とバトルしながら全て私の代わりに答えてくれていた。……うん、昨日は大空戦が終わってからの方が濃かったなぁ。


「……紗夜に送る内容じゃねーよ……」

「訳せそうですか?」

「……………………紗夜が知っていい内容ではないな」

「え? 私に送られたのに?」

「……紗夜、オレと約束しよう。このメールの内容を絶対に詮索しない。ここで消す、と」

「え……?」


私の携帯は変態に回されて、そのあとリボーンとコロネロに回る。誰も彼もが知らなくて良かった、といったような反応を示す。


「拙者も見てよろしいですか?」

「はい」

「だめだ。バジル、お前も見てはいけない」

「え……なぜでしょうか?」


除け者にされた私とバジルさん。私たちの共通点はなんだろう。ふむふむ……私とバジルさんにあってリボーンとコロネロとディーノさん変態にないもの。……わかんない。


「紗夜 これ消去するからな」

「………どうぞ」


なんでもいいよもう。リボーンが操作して消した。私が内容を知ることはこれでもうできない。それでも少し気になってバジルさんと一緒にディーノさんに尋ねると


「あーー……その、なんでカルロがXANXUSと9代目の血が繋がっていないと確信したか、その理由が書いてあった」

「なぜそれを拙者たちが読んではいけないのですか?」

「その……いろいろだ!!」

「なんでその内容でディーノさんとスクアーロさんの名前が出てきたんですか?」

「……それはまた別件だ。……これ以上はもうやめてくれ……知らない方がいいんだお前たちは……。まだ子どもなんだから……」

「「子ども?」」


それが理由なの? 一応見た目が赤ん坊の二人は読んでドン引きしているのに。……ドン引きするような内容だったの? え? 私宛にカルロさんは何を送ったの? 気になるんだけど。
最後までどれだけしつこく食い下がっても、お願いしてもディーノさんも変態もリボーンもコロネロも教えてくれなかった。パーティーが終わっても教えてくれなかった。メールがまだある時に獄寺くんに聞けばよかったんだ。獄寺くんだってイタリア語読めるんだから。




賑やかなパーティーが終わると綱吉が送ると申し出てくれた。最初は断ろうとしたんだが足と肩を負傷していて一応次期白虹の守護者となったんだから危険も相次ぐだろうとみんなが次々に私を脅したのでコクリと頷く。綱吉一人じゃなくて山本くんも一緒に来てくれるって一度は言ってくれたが獄寺くんに凄まじい顔を向けられて空気読めよこの野球バカとダイナマイトで威嚇されていた。


「……じゃあ、お願いします」

「うん」


ペースも一人だけ違うので同じ方向の人が他にもいたが先に行ってもらい、私と綱吉はゆっくりと歩きだした。