邪魔をすることは許されない
2学期始まってすぐに生徒会の仕事はあった。放課後会議室に集まって委員長会議。長机で四角く囲ってそれぞれ所属しているプレートがある場所に座って行く。本来だったら私、生徒会長の隣には副生徒会長やら庶務やらがいるらしいんだが今年は特例だと優しい保健委員会の女子先輩が教えてくれた。ナイチンゲールだった。
一年生が指揮をすることにいいように思わない人はいるが今回は荒れない。……ほら、怖い人参加しているから。イスに座ればいいのに座らずに窓際に立って秋空と風で演出している風紀委員長。私の隣たくさん空いているのに。カッコつけめ。こんなこと本人に言える訳ないから円滑に進めるだけだ。
「ということで、プリントにあるようにこれが2学期の委員会の部屋割りとなります」
徐々にだが私と風紀委員長が仲良しだとわかっていき全員従っていくようになった。年もそうだが力に関しても上下関係は厳しい。生きるためにみんな不満は飲み込むのだ。
「えーーーっ何これ!? 応接室使う委員会ある。ずるい! どこよ!」
と思ったら早速不満が漏れ出た。なんでわざわざ死に向かうのあなた。優しい保健委員長の隣に座っていた女の先輩がギロリッと私を睨む。ごめんなさい愛想笑いしか出来ないんです。隣の保健委員長の目は逝ってた。文句を言って睨みつけてくる女子先輩の隣の男の先輩が「風紀委員だぞ!」と素早く耳打ちをする。二学期となると委員長同士の仲も良くなるそうだ。私も数人の先輩とは話すようになってきた。
文句を言っていた先輩が口もとを抑える。だがもう遅い。口は災いのもと。
「何か問題でもある?」
もちろんカッコつけていた風紀委員長にも聞こえていて。集まってから初めて発言した恭弥はたった一文で女子生徒を素早く謝罪させた。
「すっ、すいませんヒバリさん!!」
「じゃー続けてよ」
よし、恭弥の機嫌は損なわれてない。委員会会議というのは人が一室に集まるのだ。群れるのだ。恭弥は群れは嫌いだが学校のためとなれば我慢できる。今回群れているのはより良い並盛中にしていくための委員長たち。我慢はしてくれる、が長引かせると進行の私が危険になる。
恭弥に言われずとも続けるさ。
それじゃあ次の議題だ。
「次は今月の下旬にある、」
「いやぁ待てよ。でもおかしくね?」
体育祭について話そうとしたら男子生徒に遮られた。黙ってくださいよの意味を込めて発言者に恐る恐る視線を向ける。
「応接室を委員会で使うってのは」
「のっちもそー思う?」
「インボー感じちゃうよ」
プリントを配った時からずっと気になってはいた。だが誰も言葉にしなかったから存在を無視していたのだ。しかしどこの委員長も今発言した緑化委員に疑問をぶつけなかったのは一番乗りして会議室にいた恭弥のせい。下手にお喋りできなかったから緑化委員会が三人もいることを注意できなかったのだ。私はホームルームが延びて時間ギリギリに飛び込んできたことで始まる前に気づかなかった。なので教室から出すことはできなかった。だけど途中から視界にはずっと入り続けていたんだよ。昼休みにわざわざ出向いてまで準備した席は人数分しかなかったので委員会メンバーを連れてきたら立つしかない。
緑化委員長の後ろに見知らぬ人が二人もずっといたのは始まって数分で気づいていたんだよ……!
陰謀も書けなさそうな集団に口が閉じてしまう。気づいたときに追い出しとけばよかったんだ。他の委員長たちも黙って俯いたよ。
「君達は仲良し委員会? 代表は各委員会一人のはずだけど…」
どっちだ。天然発言かケンカを売ってるのか……どちらだ恭弥。
やめてくれ……。訴えるようにゆっくりと顔を恭弥に向ける。情けない顔をしているだろう。自分でもわかるんだ。恭弥にももちろん伝わる。
「どういうことだい、紗夜」
「………………………………さあ」
知る訳ないじゃん。一番乗りするほど楽しみだった恭弥が気づいてよ。なぜみんなが部屋に集まるのを見ていたくせに気がつかないんだ。声は聞いているが誰の顔も見ていないで景色を眺めていたってか?
「生徒会ちょーさんと風紀委員ちょーさんはつきあってると聞きましたがぁ?」
はあ!?
とんでもない発言が緑化委員長から飛び出た。ぐるんっと首を回して目を見開いてしまう。
「だから応接室に優遇しているってことぉ?」
「そういうの良くないんじゃないですかー? 風紀乱してますよねぇ?」
気がついたらバンッと机を叩いて立ち上がり、私は声を轟かせていた。
「つきあうなんてことは天地がひっくり返ってもありえないです!!!」
この発言で会議室にいる私と恭弥と緑化委員以外のメンバーは室温が氷点下まで下がった、と述べる。ビュウゥゥゥと秋なのにとても冷たい風が吹いたそうだ。
だが私としてはこの誤解は絶対に解かないといけない。痛いことは好きじゃないんだ。好きな人はマニアックの人だ。
だから何度も必死に声を張り上げて誤解を解くことに努めた。
「ないですないですっ…ないです!! 私ときょう……風紀委員長は生涯そんな関係になることはありえません!! 神に誓ってもいいです!!」
咬み殺されるなら一人で逝って!! 正確には三人だけど、私を巻き込まないでっっ!!
喋れば喋るほどなぜか他の委員長さんたちの表情が青くなる。……もしかして。振り向くと恭弥がいた場所に恭弥はいなかった。
恐れていた事態は起こった後で、恭弥は暴れた。トンファーで骨を砕く音が会議室に響いた。
委員長さんたちは恭弥のお怒りゲージが満タンになっていたことにいち早く気がついていた。気づくのが遅れた私とみんなの差は背を向けていたか向けていなかったかの違い。私も恭弥を観察していればわかっていた。そもそも恭弥を侮辱する言葉の数々でわかるよ。
後ろでは後二回、骨が折れた音がした。怖くて見れない。
ずるずると肉を引きずる音が近づいてきて横を通った。恭弥は引きずっていたモノ三つをゴミを捨てるかのように窓から放り投げる。
「えっ!?」
「不本意だけど生きてるよ」
「そ、そお?」
「それより続けてよ」
誰も恭弥には逆らえない。続けろとの命で委員長たちを見回す。先ほどとは違って誰一人顔を上げずに机を凝視している。ちらりと視界に入った緑化委員会がいた場所には血溜まりができていた。
「……それでは体育祭について───」
群れと低俗な発言が恭弥の機嫌を損ねたのだ。三年生なら恭弥の怖さを知っているはずなのになぜ変な発言をしたのか。それは集団になっていたことで変な勇気が湧き出てしまったからだろう。風紀委員に意見できるオレかっこよくねと自分に酔ってたんだろうな。
「……空気重っ」
「「「「(……会長のせいだろ!!!)」」」」
会議中に漏れ出てしまった私の心の声に風紀委員長を除いた委員長たちはユニゾンしたそうだ。