あなたの言うことなんて知らないわ

雷門中が大政奉還をかけてエルドラドとサッカーで勝負することになった。エルドラドの手によってフィールドが一瞬で完成され選手たちがユニフォームに身を包む。これから試合が始まる。ユニフォームを身につけている選手がサッカーをする。


「サッカーできるの?」


徳川慶喜と数言交わした沖田総司は赤と黒のユニフォームでフィールドに来るものだから私は雷門のみんなから離れて沖田総司の元に歩んだ。問いかける私に沖田総司は少し視線を落としたが、すぐに上げ「ああ」と強い意思のこもった肯定をする。

……へぇ。


「病気なんじゃないの?」

「! ……大丈夫だ」

「大丈夫? 試合後咳き込んでたよね。それの何が大丈夫なの?」

「…………………」


ずっるい。何も言わない。そんなの大丈夫じゃないって言ってるようなものじゃん。
どうしようか。本音を言えば私は沖田総司にサッカーをしてほしいの。でも命を引き換えにはしてほしくないの。とんでもない矛盾だ。どっちもはできない。


「……俺にサッカーを教えてくれたのは貴女だがそれとこれとは話が別だ。貴女に俺を止める権利はない」


知ってるよ。でも試合に出ようとする君に声をかけずにいる事ができなかったの。

病気に激しい運動はペケだ。守とサッカー禁止令の解除をかけた真剣勝負のサッカーに参加したら悪化間違いなし。参加しちゃいけない。でも沖田総司にも私たちと同じぐらい大きな気持ちがある。どうしても譲れないものがある。


「貴女には感謝している。ありがとう」


その『ありがとう』には何が込められていたのだろう。度合いはわからないけど、決別は確実に含まれていた。私が幕府ではなく坂本龍馬を支持していることはこの前のミニゲームと今回の立ち位置で理解されているから。


「……そーかよ」


一人残された私も踵を返して雷門中の元に戻る。
坂本龍馬と沖田総司の思想が合わないことは学生時代に習っている。だからわかってる。知っている。

でもさ、それとこれとは話は別でしょう?


「よおし!!今度こそ監督ができるぞ!!」


雷門ベンチに戻るとワンダバくんがピンク色になって叫んでいた。意気揚々しているワンダバくんの近くでは「監督? 監督がいるのか?」「はい」と坂本龍馬に天馬くんが監督の役割を説明している。


「真白さん!」


そして途中で私の名を呼んだ。話しているなぁ程度で内容は聞いてなかったからなんで私が出てきたのかはわからない。足を組んでベンチに座っていた私の前に坂本龍馬が立つ。なに? 今そんな暇ないけど。


「こいつサッカー上手いのか?」

「真白さんは日本一にも世界一にもなったことがあるんですよ」

「おお〜世界一にもか!?」

「何度も優勝してる実力者ぜよ」

「ほほおーー!」


私の前に立ちながら天馬くんと錦くんと喋ってる。じゃあ私いらないね。
ベンチに座ってからも何度も沖田総司の『ありがとう』が思い出される。私を見ずに告げてきた決別の言葉。何度も何度も思い出していると目の前で「よし!」と活気のある声がした。


「お前さん監督やってくれ」

「は?」

「な、なにーーーー!!?」


やらないよ。そういう気分じゃない。私の声に被せるほどショックを受けているワンダバくんがいるんだからワンダバくんがやればいい。やりたい人がやるべき。


「パ、……」


……待てよ?


「いいよ」

「おー! 頼んだぞ」


にっこりと口角を上げて許諾すると坂本龍馬はバンバンと私の肩を叩いてフィールドに入っていった。
ガーン! と精神的ダメージを負って「今度こそワタシが監督をできると……」とぼやいているワンダバくんには悪いが、実績で私に勝てないからいけない。勝っていたらみんなが私に頼ることはなかったんだからね。

気分じゃないからパスしようとしたけどやめた。監督の経験はない。監督に憧れを抱いたことも一度やってみたいなと思ったこともないけど、監督をすれば多少試合に関われるよね。
 

『さあ! 大政奉還をかけての大勝負!! 雷門vs.ザナークドメインの試合が始まるぞーー!! 今回はなんと徳川幕府15代将軍徳川慶喜公が見守る御前試合ーー!!』


『ありがとう』

君はその言葉で私を突き放したよね。私ね、それなりに君のこと好きだったみたい。だからとっても寂しかった。とっても嫌だった。

でもそれ以上に、


『試合開始ーー!!』


とっても怒っているんだ。

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