「……昔から変わんないなあ」
楽しそうに試合をしている。新キャプテンも中々似合っているじゃないか。天馬くんは私と違って指示もできていて。会いに行く必要なかったなぁ。
豪炎寺くんは昔から私を心配してくれる。私に何も言わない。ベンチには聖帝の他にも虎丸くんと砂木沼さんがいる。私だけ解任。悲しいよ。
前半は2-2の同点で終了した。
管理サッカーvs.自由なサッカー。本気でぶつかっている。どちらが正しいか、何が間違っているか、それが今日全て明らかになる。
「いいかおだ」
雷門も聖堂山も心からサッカーを楽しんでいる。このまま終わればいいな。
後半も楽しみ。
「真白か?」
「不動くん? ……一郎太と壁山くんも」
なんでこんなところで不動くんの声? と横を向くとまだ他にもいた。三人も試合を観戦していたらしく、途中で私に気がついてハーフタイムの間に確かめようと降りてきたそうだ。
「久しぶり〜。ゴッドエデンぶりだね」
「そうだな。フィフスセクターお疲れ様」
「ありがとう。一郎太たちもせい……豪炎寺くんの本当の目的を知ったんだね」
お疲れ様とはそういう意味だろう。豪炎寺くんが聖帝になった理由はサッカーを取り戻すため。日本代表とまで上りつめた地位を全て投げ捨ててまで汚れ役を演じているのはたった一つの目的のため。
「んで、なんでお前がここにいンだよ。フィフスセクターなんだからもっといいところから観れるだろ」
「フィフスセクタークビになっちゃった」
あっははと笑ってフィールドに目を向ける。
誰もいない芝のグラウンド。後半はどんな試合になるのだろうか。
「一緒に観ていいか?」
「ほんとっ!? 嬉しい!」
一人で観ているのも暇で寂しかったのでぜひぜひと勧める。提案した一郎太は隣に並んでくれた。
「勝手に決めてンじゃねえよ」
「そう言いつつ不動さんも天雷さんの隣に当たり前のように行ったスね」
不服そうなのは言葉だけだぞ。ほら、壁山くんも一郎太もわかっている。素直じゃないんだから、とにやにやしていると頭に衝撃が。
軽くだったから何ともないが一郎太が慌てて声をかけてくる。大丈夫大丈夫と何度伝えても信じてくれない。場所代わろうかと提案まで。不動くんはムカついて叩いてきたわけではないしそう何度も叩いてこないし代わっても試合の景色は変わらないから断る。
「何事もなくホーリーロードは終わりそうだね」
心配していたことは起こらなさそうだ。
息をついて後半戦が始まるまで三人と喋っていたら前の人がちらちらと振り返ってきていたらしく、一郎太や不動くんが小さな声で教えてくれた。壁山くんと私は気がついてなかった。
なんで振り返るんだろう。試合始まってないから何しようが個人の勝手だけど、後ろには何もないのに。
「プロの風丸さんだよね……!」
あった。いた。昔から見慣れているし、同じ立場だから忘れていた。
一郎太は不自然な動きで俯いた。それでも可愛らしい女の子は友達とぼそぼそ確認している。当たっているよ。そう教えることは絶対にしない。
「その隣…天雷真白さんだぜっ」
波紋が広がってしまった。私の身体も強張りみんなして俯く。
「一緒にいるのってヨーロッパで活躍してる不動じゃね!? 怪我じゃなかったのか……!?」
「なんで俺だけ呼び捨てなんだよ」
ぽつりと呟くんじゃないよ。私にしか聞こえてないから吹いたのを一郎太と壁山くんがなぜという目で見つめてくるじゃないか。
大事になる前に避難しよう。アイコンタクトして立ち去ろうとした時、
「あーー!! 壁山選手だ!!」
どこかの子どもが大声で正体をバラした。
小さい少年はきゃっきゃっ嬉しそうに騒いでいて母親に叱られていた。少年は母親の怒りよりも壁山くんに会えたことの方が重要で最優先だったらしく、母親を振り切って壁山くんに突進した。もちろん倒れかけるのは少年。
「握手してください!!」
「は、はいっス」
なんで応えてやがんだてめえ、というオーラが私と不動くんから出たのがわかったのか壁山くんがすまなさそうにちらちら視線を向けてくる。一郎太は悟ったらしくすっと表情が失われた。
「本物っ!! 風丸さん! ファンです! 大好きです!」
「天雷さんサインください!!」
「不動さん! 怪我じゃなかったんすね!! どうして急にヨーロッパから日本に帰ってきたんっスか!?」
一気に人が群がってきた。老若男女構わずに観客席の一部に人が集まる。
ホーリーロード決勝を観に来ているんだからその辺にいるプロ選手や海外活躍選手の元イナズマジャパンは無視しようよ。無理か。
俯きつつも両隣を盗み見る。一郎太は突然の出来事に戸惑いは少しあるが丁寧に対処している。大好きです、と幅広い年齢の女性から告白の嵐。ファンとしての大好きだとわかっている一郎太は一つ一つお礼を。
もう片方は私と気持ちが同じなんだろう。うん、昔からなんとなく知ってた。しかめっ面になっていた。それでもファンから隠してしているあたりが素晴らしい。
どうしよう…。あんまりファンサービスというのは好まない。よくわからない。どうすれば助かるかな。他のイナズマジャパン出身者を探して来よっかな。天馬くんが試合に出ていることから木暮くんがいることは知っている。観にきているはず。一郎太たちがいるなら同じゴッドエデン組の士郎くんもいるかな。観客席だけでなく、フィールドのベンチには豪華メンバー勢揃いなのに。守 鬼道くん 豪炎寺くん 虎丸くん。
試合観たいので。プライベートなんで。みんなで対応していると突然ガタンと会場が大きく揺れた。この隙に。全員で顔を合わせて素早く抜け出す。
去りながらもなぜアマノミカドスタジアムが揺れているか考察する。でも結論は出なかった。後半戦を出来るだけ建物の影に隠れて息を殺しながら待っていたら、聖堂山のチームが変わったというアナウンスが。
「……ドラゴンリンク」
出てきた。あの男が動いてしまった。聖堂山や豪炎寺くんたちはどうなっちゃったんだろう。ベンチを確認すると豪炎寺くんと虎丸くんはいたけれど他のメンバーはいない。
「真白……あれは?」
「ドラゴンリンク。フィフスセクターのサッカーを実現させたチーム、らしい。見るのは初めて」
千宮寺さんを怒らせちゃったのかな。同点が気に食わなかったのかもしれない。
観客席にいる私たちにできることはもうない。後は全て中学生に任せるしかないんだ。
観客席から選手の表情はわからないが私が着ていた8番のユニフォームがフィールドに入っていく。キャプテンマークをつけた、革命の全ての始まりと言われている子。
「……がんばれ」
雷門の8番は私にとって大きなもの。だから視界に入ったのかな。
応援の声はもちろん届くことなく、すぐ近くにいるみんなにも聞こえることなく空に消える。
ホイッスルが鳴る。後半戦が始まった。
本当のサッカーを取り戻して
あなたたちなら大丈夫
出来るよ
数分後、ヒロトくんと緑川くんと偶然にも合流した。
なぜ日向を平然と歩いてるんだ!? というぐらい素早い動きで私たちは二人を出入り口の影に引っ張り込んだ。
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