その子は誰ですか!?

今日は雷門中サッカー部にとって久しぶりの一日オフ。サッカーが大好きな少年たちの集まりだとしても一日オフは嬉しい。何をして過ごそう。着替えながらみんなでわいわい話し合ったのは昨日のこと。


「……あれ天雷か?」

「人と会う約束しているって言ってましたから俺たちと同じく待ち合わせじゃないですか?」


休みだから遊ぼうぜ! と浜野に誘われた倉間と速水は集合時間前にやって来て浜野を待っていると同じく休みのチームメイトを見つけた。昨日狩屋が朝陽に明日の日程を聞いた時に人と会う約束をしているって言ってた。『それって、その…こっちですか?』とこそあど言葉しか使わなかった狩屋の質問に朝陽は『違う』と返していてよくと思った記憶がある。
目立つ場所で一歩も動かずに立っている辺り待ち合わせだろう。話しかけるには少し距離があるので接触はせずに浜野を待っていると変化が起きた。


「二人ともお待たせ〜! ……ん? あれって天雷?」

「そうだ。じゃあ行こうぜ」

「話しかけない?」

「やめときましょうよ。天雷くんもちょうど会えたようですから」


「ちぇ」と残念がる浜野と違い速水と倉間は目的地の確認をして歩き出す。友達に会えたんだから少しでも話しかけたかった浜野のだけは後ろ髪を引かれる思いで最後にもう一度だけ朝陽に顔を向けた。朝陽が気づいてくれたなら手を振ろうとしたのだが朝陽は顔を向けない。


「…………ん? なぁ倉間速水。天雷と一緒にいるの誰?」

「友達じゃね」

「天雷くんって友好関係広いじゃないですか。きっとクラスの友達ですよ」


朝陽のことは気にせずに行きたい気持ちが大きかった倉間と速水は渋々と立ち止まり確認する。なにをそこまで気にするんだ。朝陽が誰と一緒にいようが問題はない。
朝陽は待ち合わせ場所からまだ動いてない。穏やかな表情で待ち合わせ相手と談笑している。割と仲のいい相手のようだ。その相手はちょうど人と重なっていて見えない。
動き出した。これで朝陽と本日会っている相手がわかる。相手はピンク色の髪の毛をした……


「女子? …………いや、霧野の女装だな」


スカートを履いていることから倉間は推測する。だが休日に事前に約束して会う異性との関係を考えて言い直した。あのスカートを履いたピンク髪の子は朝陽と同じくチームメイト。


「失礼ですよ。霧野くんの前では言わないでくださいね。そもそも霧野くんとは身長も髪の長さも違うじゃないですか」

「女子だよな。ちゅーか、誰?」


朝陽が見覚えのない女子といる。仲良く談笑している。だいぶ親しい間柄の異性。
朝陽の交友関係が広いって言ってもそれは交流のある同級生の間だけだ。だから一緒に出かける仲の相手と言ったら三人と同じ同級生のはずなんだが誰も見覚えがない。他に交流を持つ女子と言ったら他校のマネージャー。でも他校のマネージャーなら一人ぐらい見覚えがあってもいいんじゃないか。でも誰も見覚えがない。


「……彼女だったりする?」


外見や成績や運動神経や優等生(笑)と一部のチームメイトから揶揄われる性格から告白してくる女の子は多い。朝陽が誰かと付き合っている話は聞いたことがないがもしかしたら知らぬ間に付き合い始めたのではないだろうか。


「……気にならない?」


浜野がわくわくしている。チームメイトの恋愛事情を掴んで揶揄う気満々でいる。下世話だ。
もちろん、


「ならないですよ」

「なる」

「倉間くん!?」


頷いた倉間に「だよなー!」と浜野が肩を組んだ。気にならない。気にならないから余計なことはしたくない。「じゃあ行こう!」と速水を置いて進んでいく。早い。迷うことがない。

行きたくない。もし気づかれたら朝陽はどんな怒りをぶつけてくるだろう。仕方ないなぁで許す性格ではない。


「速水ー!」

「早く来いよ」

「〜〜っわかりました!」


だからと言って見捨てることも止めることもできない。速水はわくわくしている二人に追いつくしかなかった。











「なに話してる?」

「聞こえねぇ」


朝陽と女子が辿り着いた場所はカフェ。デートでも友達と来ましたでも通じる場所。二人はテラス席に座ってくれたため店内に入らなくても姿は確認できる。だが声は聞こえない。これ以上近づくと見つかる可能性が大きいため近づくこともできない。


「仲良いな」

「顔見えたけどやっぱわかんないねー」


乗り気な二人を止めることはできず速水は後ろからはらはらと眺める。絶対にこちらを見ませんように。楽しくお喋りしていますように。


「おい! 天雷に何か渡してるぞ!」


ずっと談笑していた二人に動きがあったようだ。倉間の報告に浜野は「彼女からのプレゼントかー?」とだいぶ楽しそうに実況している。


「でっか!」


次に出て来たのは頼んでいたメニュー。二人で一つのものを選んだようで大皿に乗った大きなパンケーキが運ばれて来た。それはカップル限定の品物のようだ。見栄えがよくて甘さたっぷりの商品。


「浜野! あれだ! カップル限定!」


説明書きを見つけてしまったようで倉間の興奮が止まらない。だいぶ長いこと二人を観察している。「俺たちも遊びませんか?」と速水が勇気を振り絞って声をかけたが聞いてくれる様子も辞めてくれる様子もない。


「声が聞こえねぇ!」

「もっと近づく?」

「……近づくか」


それどころか白熱していく。今日は朝陽と女の子のお出かけが解散するまで速水たちもベッタリとくっつき回ることになるのだろう。


「…………はぁ」


速水は倉間と浜野の後ろでため息を吐いた。







「よー天雷! 昨日は楽しかった?」

「ああ。楽しく過ごせたよ。浜野は? 人のことコソコソ見てて楽しかった?」

「えっ!? 気づいてたの? あの子彼女?」

「違う」

「あんなに仲親しげだったのに?」

「親しいからな」

「へー。そうなんだ」






「彼女できたんだってな。アタシの知っているやつか?」

「……できてないよ」

「でも女子と二人っきりで出掛けてたんだろ? お前そう言うことするやつじゃないじゃん」

「カップル限定のパンケーキが食べたいから付き合ってって頼まれたから行ったんだよ」

「でもクラスの女子に誘われても行かないだろ?」

「状況次第だけど、もし瀬戸さんに頼まれたら俺は一緒に行くよ。昨日の人もそういう仲」

「プレゼントは?」

「ホーリーロード優勝のお祝い」

「……なんだよ。デマか」

「瀬戸さん、それ誰から聞いた?」

「倉間」






「天雷くん! 昨日彼女と会っていたって本当!?」

「……夕香ちゃんだよ」

「そう! さっき少し噂聞いて気になったの。変なこと聞いてごめんね」





「朝陽! 彼女がいることは真白には言っ、」

「夕香ちゃん。なんで円堂さんが昨日俺と夕香ちゃんが会ってたこと知ってるの?」

「みんな言ってるから」

「…………………誤解解けてねーのかよ」

「どこ行くんだ?」

「解きに行ってくる」

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