確たる境界線@

朝練が終わりとなり雷門イレブンは更衣室に向かう。なぜならこれから授業が始まるからだ。サッカーを取り戻すため時空を旅したりエルドラドと戦っている雷門イレブンだが、彼らは中学生なのである。義務教育の真っ只中だ。勉強どころではないといった意見もあるけれど、サッカーを取り戻すためにしばらく休みますといった理由は通じない。今の日本にはサッカー禁止令が発動しているんだから。サッカー棟で朝練放課後練していることだって秘密裏だ。校長や理事長に知られたら即サッカー棟は取り壊しにされてしまう。誰にも見られることなく練習できる場を失ってしまう。そのため雷門イレブンは滅多なことがない限り授業をサボることはできなかった。


「雨宮との暮らしはどうなの?」

「普通だけど」


いつも通り朝陽は着替えているとつい先日から家に住み着いた新雲学園のエースとの生活を聞かれた。だがこれといって特別なことはない。わざわざ言うような奇抜なこともない。普通の生活を送っている。浜野の期待するようなことはないので朝陽は手を止めることなく着替えていた。「普通って?」「いや、ほんとフツー」「へー」と感情の起伏がない会話をしているが、雨宮が天雷家に滞在すると決まった時の朝陽の荒ぶり具合を知っている雷門サッカー部は信じ難い。「へー」じゃねーんだよ浜野、と内心突っ込む者はいた。一番の被害者だった一乃はそっと離れていく始末だ。


「太陽、今日はどうしてるの?」

「今日は真白さんが稲妻町を案内してくれるんだ」

「そうなんだ! 楽しんできてね!」

「……お前あまり真白さんに迷惑かけるなよ」

「あれー? 剣城くんなになにぃ? どうしちゃったのぉ?」

「どこに行くんですか?」

「僕のおすすめは──」


耳を澄ましていなくとも一年の会話が聞こえてくる。楽しげに日中の太陽の予定について話している。雨宮は雷門サッカー部と違って日中学校に通わなくても大丈夫なように手筈されているのは初日から知っていることだ。
真白と出かける。姉大好きな朝陽の耳にも当然入っている声量だ。さて朝陽の様子はどうだろう。怒りを覚えることなく着替えを済ませていた。


「知ってるんだよな?」

「ああ。俺のいる前で決めてたし」


なんとも思ってない様子に霧野は「そうか」と口元が和らぐ。「雨宮、嬉しそうだな」と続けても「外を自由に動けること自体が楽しいらしい。今日雨宮と帰りにラーメン食べに行くけど霧野も来る? 雷雷軒」といつも通りの会話ができる。朝陽と雨宮は次の日から一緒に登校してきてもいた。そう言えば吹雪の時も次の日には滞在していることには文句言ってなかったなと考えながら霧野は「ああ」と頷いた。


「フェイくん、よかったらフェイくんも一緒にどうかな?」

「! 僕もいいの…?」

「うん。予定がないなら一緒に行こうよ」

「……うん、行く」


黙々と朝陽は着替え終わりロッカーを閉じた。何もおかしなところはない。


「……………朝陽?」


これはおかしなところは一つもない、後漢から帰ってきて数日後の出来事だ。

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