勝ってはいるが全てに納得はできていなく、またよくわからないまま試合は終わってしまった。
剣城京介がサッカーを失った原因を円堂や真白がいる中で話される。剣城京介を知らない10年前の人物は話が飲み込めない。真白は円堂の横に座って真剣な表情で聞いている。ように見えるがなんにも聞いていない。頭の中を占めているのは初めて見た化身と化身アームド。気がついたら化身を出していたけど、出し方はわかってない。必死だった。負けたくなかった。だから出てた。
化身のことで頭はいっぱいいっぱい。試合前ならともかく試合後に話を聞ける余裕はなかった。
「真白さん、貴女と一緒にサッカーできて嬉しかったです」
「……どうも」
今回の試合で一人選手交代が行われた。これもまた真白は知らない人。名はなんと言っていたか。確か……そうだ。剣城優一。彼もまた正しい未来を取り戻そうと奮闘している。そのために過去に来た。合流する時に挨拶をしたが真白には完全にスルーされて、今もぶっきらぼう。でも天馬と違って動揺はしない。以前お見舞いに剣城と共に来てくれた時に話してくれたことがある。
『中学生の頃? 今と同じようにサッカーしていたよ。でも京介くんの年の時はちょっと子どもみたいなところあったなー。なんというか……ツンツンしていた』
予想よりだいぶツンツンしているが、ツンツンと表現していいかわからない冷たい対応だが、真白であることに違いはない。笑みを浮かべたまま握手を求める。
「11年後、俺たちに会いに来てくれるのを心から楽しみに待っています」
「…………………………」
真白にぷいっと顔を背けられたが不満や苛立ちは生まれない。言葉はないけれどテレているのが伝わってくる。きっと慣れていないのだろう。いつもとは違う対応が新鮮だった。
お別れの時間がやってきた。未来から来た者たちはキャラバンに乗り込む。円堂も天馬と話している。サッカーを守るために円堂たちが出来ること。それはサッカー部を設立させること。
「天馬! 雷門中サッカー部、絶対に作ってみせる! 約束するぜっ!」
「俺もサッカーを守って頑張ります!」
「おう!」
円堂は約束を果たす。サッカー部を設立して多くの人を救うことになる。
「でもって…もしまた会えたら…」
白い歯を出す円堂の考えが天馬はわかった。最大で最高の言葉。性別年、時代関係なく全てのサッカー選手をつなげる素晴らしい言葉。
拳をぶつけあう天馬と円堂には確かに時空を超えた友情が存在していた。
「「サッカーやろうぜ!!」」
思いがつながり伝わる。円堂が広めたサッカーへの想いはこの先何百年も続くのだ。
「……松風」
「はい?」
「それでは」と手を振って少しだけタイムキャラバンが浮いた時、円堂の横でずっと黙っていた真白が小さく声を漏らす。それでも天馬の耳には届く。
「僕は負けてない」
それはもちろん知っている。同じチームで戦った。真白はエルドラドに負けていない。
「……僕、」
唇を引き締める真白。キャラバンの中からワンダバが早く席につけと急かしてくる。
「あのっ俺たちそろそろ!!」
ワンダバの催促が続く。これ以上話している時間はない。真白に謝って背中を向けると、
「───待っているから」
ドアが閉じる直前に聞こえた優しい声色。
聞き間違えなんかではない。「他の奴らにも伝えて」と扉越しの真白は微かにだが笑っていた。
キャラバンが消えていく。空のどこかに、別の次元に。
「サッカーやろうぜって言えばよかったのにな」
「……別にサッカーやろうなんて思ってない」
円堂には全て知られている。照れてしまったのも、天馬やみんなとサッカーをまたしたいと思っているのも。
真白は円堂と秋を置き去りにして先にスタジアムを去る。
「………………………」
松風。
フェイ。
剣城。
「………………へぇ」
歩く真白の表情には珍しく感情が生まれていた。