雷門サッカー部と天雷真白A

腰まで伸びたストレートの黒髪は艶があり、ルビーのように輝いている大きな瞳。小さい鼻と唇。左右ほぼ対称の顔立ち。白く細く形のいい手足。可愛らしいよく似合っているコーディネート。

映像や紙で観る憧れの選手と全く同じ人が雷門サッカー部の目の前に現れた。


「「「「わぁぁあああ!!!!」」」」
「「「「おぉーーーー!!!!」」」」


サッカー棟から一段と大きな声が轟く。

大袈裟な反応に真白はひっと口もとを上げたが子どもたちは気付かない。同年代は気づいてくれたが助けに入る前に中学生が興奮したまま話しかけてきたので見守ることになってしまった。10代のパワーは強い。


「あのっ!! 俺のことわかりますか!?」


みんなして話しかけてくるのを何一つ聞き取れずに立ち尽くしていたら一際大きい声が。ぴしっと真っ直ぐ手が上がっている。


「俺っ、松風天馬と言います! 10年前に沖縄で一度会っていて……! あの時もらったキーホルダー大切に取ってあります!」

「キーホルダー…?」


はて? なんのことだろう。


「あ、思い出した。真白ちゃんにボール当てた子だ」

「っ! あの時は申し訳ありませんでした!」

「(何も思い出せない) ……うん、大丈夫大丈夫。気にしないで」


記憶を探ることも諦めたであろう様子の真白に吹雪は「エイリア学園の」と耳打ちしする。刹那朝陽から叫び声がしたが大人は全員スルーした。


「…………………、あ〜思い出した。あの時の子か。大きくなったねえ」

「覚えててくれたんですね!! うれしいです!」


握手を求められたので真白はにっこり返すとぶんぶん千切れるのではないかと思えるほど勢いよく振り回される。

うわぁ。


「いいなあ天馬」

「へっへへ」

「よく士郎くん覚えてたね」

「真白ちゃんのことは全て覚えてるよ」

「すごいなあ」

「「「「…………………え!?」」」」


真白限定で全て覚えているとはなんだ。気になった子どもたちは恋人疑惑が囁かれたこともある吹雪と真白を凝視するが特に甘い雰囲気はない。いつもの皇子スマイルといつもより幼いにこにこ笑顔。疑惑をかけられている二人と同年代の大人はみんなしてスルーしている。特に気にしてない。

ただの会話か。過剰に反応してしまった。彼らからしたら普段通りのことなんだ。


「真白は顔見知り多いな」

「いやいや。たったの三人だよ。多くないって」

「松風と神童はわかったが、剣城とはどうやって出会ったんだ」


大人になったことで多少は社交性が生まれどんな相手でも話すことはできるようになった。多少は。だがそれでも真白は自ら他人に話しかけることはない。
そんな真白がなぜ幼い頃から関係があるわけでも無さそうな剣城と知り合いかは少し気になる。


「……………………」


鬼道の質問に真白は口を閉じた。目をぱちぱちと何度も瞬きしてきょろきょろと動かす。剣城も顔を逸らした。とても言いづらい。それに朝陽が目を見開いて凝視してきている。目を合わせたら終わりだ。絶対に合わせない。


「……天雷?」

「………まあ、その、そんなことより部活始めないと」

「おい剣城どういうことだテメェ。前から姉さんを知ってたのか」

「……………」

「(お願い! 誤魔化して!)」

「っ、…その、いろいろあったんだ」


アイコンタクトはねじ回ることなく伝わっている。剣城が空気の読めるいい子だと前から知っていた真白は今回のことでさらに剣城の好感度が上がった。ぱあっと輝く表情をなぜか己を問い詰めている鬼道には隠さないので誤魔化せてはないが。


「……そういえば剣城の写真を兄に見せると話してたな。剣城の兄とも知り合いなのか?」

「うん」

「なぜお前が全く接点のない剣城兄弟と知り合いなんだ?」


笑顔で節々を強調する鬼道に真白はギギギと顔を逸らして剣城に助けを求める。でも無理。剣城も剣城で助けを求めたい状況なのだ。


「……………………………」


誤魔化すことはできないと真白は長年の経験で悟る。仕方ない。喋ろう。無理しないでいい、バレたら全て吐いていいと優しく許可も頂いていることだし。


「何言っても怒らない?」

「俺が怒るような内容なのか?」

「怒らない?」

「俺が怒る内容なんだな」


そうか。鬼道は微笑むと昔と同じように頭の上に片手を置き掴んだ。


「いたたたたたた!!」

「離して欲しければ言え」

「痛い痛い痛い!! 守! 士郎くん! 春奈ちゃん!!」


二箇所で怒っている脅しに雷門サッカー部は交互に視線をやる。どちらも天雷が関わっている。姉と弟、脅される脅すと立場は逆だが血は受け継がれているらしい。

救出された真白は吹雪の胸の中で涙目になって鬼道を睨んでいる。円堂と春奈の小言を鬼道はほとんど聞いていない。


「吐け」

「いっ! やっ!」


誰が話すか。痛かったんだからな。

ぷいっと顔を背けた真白に鬼道は「ほう」と瞳を細める。
ここまで意固地になられたら暴きたい。

それに、噂がある。


「円堂、お前が聞け」

「真白が言いたくないなら本人の意思を……」

「行け」

「お、おう……」


鬼道は最近真白がプロ選手としての活動を控えていると噂を聞いていた。メディア関係はもちろんのこと、テレビで放映されないからあまり大きな噂になっていないが練習試合に出ていないことが多々あるらしい。ベンチにもいない。
日本代表に選ばれる実力者である攻守の要の真白がどんな理由でサッカーの時間を減らしているのだ。日本の宝と崇められ重宝されている真白は行き過ぎなければ融通はきく。だが真白が自身のサッカーより優先することは少ない。

どうしてだ。何があった。サッカーバカがサッカーをやるより優先することとは。


───もしかしたら。


「真白、剣城との出会いを教えてくれないか?」

「……怒らない?」

「? もちろん」


円堂にはっきりと断言された真白は嬉しそうに口元を緩ませて円堂と向き合う。


「あのね」


後ろで手を組んで円堂の顔を覗き込むように首を傾げて真白は、


「私が聖帝と繋がっているから」


正直に革命を起こしている監督へ笑った。


真白の衝撃的な言葉にミーティングルームは静まり返る。
その中動いたのは一人だけ。靴をカツカツ鳴らして真白の隣に立つと、


「何を考えてんだお前は!!」

「痛いっ!!」


今日一番のお怒りとなった。


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