あれ?と、黒子は辺りに視線を巡らせた。 いつもは探さずとも見つかる教え子を、一往復分の時間をかけて体育館の隅で見付ける。 珍しいな、と思いながら体を伸ばす彼に近付いた。 「黄瀬くん」 呼ぶと背中がビクリと跳ねる。 顔を上げた黄瀬は黒子を認めると安堵の息を吐いた。 「黒子っちかー…」 「どうしたんですか?こんな隅っこで」 いつもならうるさいくらい青峰にまとわりついているはずだ。 そう指摘すれば黄瀬は気まずそうに視線を逸らす。 「…あの人、なんか俺を見る目がやらしいんス」 「は?」 黒子が唖然と口を開けたとき、黄瀬の背後から褐色の腕が伸びた。 「黄ー瀬」 後ろから胸元を抱かれると同時に、黄瀬の口からはおよそ人に対して発することのないヒイイイという叫び声が漏れる。 「どうした?いつもみたいにねだれよ。しようって」 「1on1しよう、じゃないスか!なんで1on1を省くんスか!」 涙目になりながら黄瀬は必死に抵抗する。 「やろうぜ、黄瀬。足腰立たなくなるまでしてやんよ」 「1on1っスよね?1on1の話っスよね!?」 黄瀬が恐る恐る振り返ると、青峰はにやりと口角を上げた。 「この人もう嫌っス!助けて黒子っち!」 伸ばした手は黒子に届くことなく、黄瀬は青峰に引きずられるまま体育館から姿を消した。 しばし後、「いやああああ」という悲痛な声が遠くから聞こえた。 「センパイ」 試合前に声をかけに行くと、笠松はインターハイにかける想いを語った。 チームのために今自分がやれることを考える。でもそれよりも強く、一つの気持ちが胸の中で燃える。 「青峰マジ潰す」 その呼び名に、敬愛の印はなかった。 fin 2012/11/17 まともな黄瀬と、エロ峰の話でした。 本当は黄瀬が不信感を抱くきっかけエピソードも書こうとしたのですがあまりにもあんまりなので端折りました。 戻る |