日常的青黄 01
『これから帰ります』
家で待つ彼にメールをした時には、すでに昨日が終わって30分以上が経過していた。
『お疲れ』
間を置かずに届いた返信に、まだ起きているのだと知って少しだけ頬が緩む。
『あと30分で家。先に寝てて』
今度のメールには返信が無い。寝てしまったのなら、それで良い。
黄瀬はタクシーの揺れに体を預けた。知らず知らず深い息が漏れて、疲れているのだと実感する。
せっかく一緒に暮らしているというのに、青峰とまともに話していない気がする。短いメールだけなんて、寂しい。
身も心も底辺へと落ち果てた頃、タクシーは家の近くに到着した。防犯のために少し離れた所で降りて、暗い夜道をとぼとぼと歩く。
視界の端にマンションが見えてきたとき、カン、と金属を叩く音がした。
カンカン。断続的に、音は響く。こんな時間に何なのか。きょろきょろと辺りを見回していた黄瀬は、見つけた。
自分たちの部屋があるマンションの3階。ベランダの柵に腕を乗せて、こちらを見つめる彼がいた。
「おかえり」
降ってきた声に下を向いていた気持ちが一気に天に昇る。
彼がいる。それだけで、疲れなんて吹き飛ぶのだ。




「青峰っちマジイケメンっス!格好良いっス!たまんねぇっス…!」
「いいからさっさと中入れ」


fin 2013/5/13


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