「なあなまえ、膝枕して!」




今日は野球部が久々に一日OFFで、私は田島くん家にお邪魔させてもらってる。

田島くんとはクラスが同じだから毎日のように顔を合わせているわけだけど、やっぱり彼女としてこうして休日に会う特別な時間が欲しいという欲がないと言えば嘘になる。だからこうして誘ってくれたときは本当に嬉しかった。




「うん、いいよ」



「おっしゃ!」



私がすぐ了承すると犬みたいにまっすぐ田島くんは私のもとにやってきた。
太陽みたいにきらきらした笑顔をみるとやっぱり好きだという気持ちでいっぱいになる。こんな近くで見られる私は世界で一番幸せ者だなあ…




「やっぱなまえは柔らけー」



「…なんかこの体勢恥ずかしい……」



「んー?なに、なまえやっぱ嫌だったか?」



「え、ううん!そんなことないよ!ただ、ちょっと恥ずかしくなっちゃって…!田島くんをこんなに近くでみるの久しぶりだし…」




「…そーだよなあ。俺部活ばっかりでなまえとあんまり一緒にいられてないもんなー…」



ごめんな、と私を見上げて少し申し訳なさそうに言った田島くんに私はすごく罪悪感を感じてしまった。


もしかして私の存在って田島くんに迷惑なんじゃないか。こんな頑張ってる田島くんに気を使わせちゃうなんて。私は田島くんに謝ってもらいたいなんて思ってないけど、田島くんはもう終わりにしたいのかも…

そう思うと何だか自然と鼻の奥がつんと痛くなった。




「……た、じま…くん」



「おー、どした?」



「…私が隣にいて嫌じゃない?」





静かな部屋に響き渡った私の今にも泣きそうな声。ああ、今の私ってすごく面倒くさい女の子だ。







「…」



「…っごめん、やっぱり今の忘れていいから…!」




少しの沈黙も耐えられなくなって一人で慌ててる自分が情けなくて、こみ上げてくるものに耐えられなくなっていく。







「…なまえ、こっちむいて」




涙を見られたらますます面倒な女だと思われる、と自然に俯いていた私に田島くんの声が響く。




「…たじま、くん」



彼はいつの間にか私の膝から離れ起き上がっていた。
そして田島くんの真剣な瞳が目に飛び込んだ瞬間、私は彼の腕の中にいた。





「俺、きっとなまえがいなくなったら野球だって上手くできなくなる」



「え…?」



「なまえじゃないと、駄目だから」






いつも以上に強く抱きしめてくる彼にこんなにも安心してしまうなんて。

しばらくの間私たちは時が止まったみたいに抱き合い続けていた。




「…元気、でたか?」



「…う、うん」



「…じゃあさ、笑ってよ」




「へ?」




「笑って。なまえの笑顔が見たい」






「………田島くん、」



「…ん?」




「…すき」







「………俺も!!」




私の精一杯の笑みに応えるかのような彼のその笑顔にいつまでもときめいていたいと思った、そんな昼下がり。








(俺の隣で幸せそうに笑うお前を見れれば、それだけでいいんだよ)






Title by brooch
130909








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