※オサムちゃんがオサムちゃんじゃない


























「オサムちゃんいますか?」








あかん






「あ…!」






あかんゆーとるやろ!







「今日も予定通り部活動終了しました!」








だからその笑顔はあかんやろ!










「…白石はどないしたん」







「あ、白石くんは千歳くん探しにいってます。もう一週間も来てないから…」







あかん、俺の思考回路あかんて!







久々に二人きりになれたとか!

今だけはみょうじのこと独り占めできるとか!








「…千歳はしゃーないな」







「千歳くんって自由で羨ましいです」






苦笑いしながらみょうじはそういった。











みょうじはこのテニス部でたった一人のマネージャー。



紅一点で男だらけのむさ苦しい部活なのに
みょうじは毎日こうして活動報告までしにくるめちゃめちゃ頑張り屋や。




身長は金太郎とあんま変わらへんし
手足はごっつほっそいし
時々抜けてるし
なんか妙に可愛えし…







とにかくそんなみょうじはみんなに頼られ好かれてて…





俺までほっとけへんねん。










「…まあ、そこ座れや」







「あ…ありがとうございます!」








そういって俺の隣にあった小さな椅子に座るみょうじ





話始めたのは俺なのに
それ以上に気になって行くのはやっぱりみょうじで





座ったせいで余計近くに感じる生足とか

ふわっとした髪からほのかに香る甘い香りとか

ふんわり笑ったときなんて俺は溶けてしまいそうになる







・・・



いやいや待ちぃや


落ち着けや俺!




みょうじはただの生徒や。



絶対ただの教師としてしか見てもらえてへんことは目に見えとる。



それなのに
なんで普通に恋しとんのや俺ー!!










「…オサムちゃん」







「お、おおう!な、なんや?」









「…もしかして、私と2人嫌でしたか?」









「…はあ?」






「な、なんか…いつものオサムちゃんじゃない気がして…。
私には遠慮してるっていうかあんまり喋ってくれないから…
私のこと嫌いかなって…」





「…そんなわけないやろ」





「え…」









「みょうじがかわええのがいけないんや」







照れ隠しにみょうじの頭をぽんっと叩くと
今までうつむいていたみょうじがこちらに顔を向ける。


少し涙目で俺を見上げるその視線にくらくらした














「…オサムちゃんは先生だもんね」







「はあ、当たり前やろ」






「私、オサムちゃん好きです」








さっきの表情とは裏腹にいつも以上にきらきらした笑顔でそう言い放った。








「…おおきに」







先生として向けられたその言葉に素直に喜べない複雑な想いがのしかかってきた。






「あ、あの」







みょうじは急に立ち上がった










「あ、あの…今の言葉、生徒のみょうじじゃなくて…
女のなまえとして受け取ってください!」












し、失礼します!








頬をピンクに染めたみょうじはそういって職員室を去っていった。









俺はその間ただただ思考回路がストップして
あのときのみょうじの台詞がぐるぐると頭でリピートされていた。







我に帰ったとき俺は急に力が抜けた。



もう職員室には俺しかいないというのに自分の信じられないくらい真っ赤な顔を片手に隠して









「…ほんまにあかんって…っ!」






当分収まりそうにない胸の高鳴りは部屋中に響いてる気がした。






大切なものができました



(喉に焼け付くような甘さだけが僕に残った)
(あぁもう、この世界から連れ出してしまいたい)










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