大きくなったね





久々に東京の地に降り立った彼女が
元気だった?とかあまりにも普通すぎる挨拶より先に俺に向かって放った言葉だった。


同い年なのに何で会って早々こんな子供に向けた様なことを言われなくちゃならないんだ。



俺はそいつに会う今日という日までに成し遂げたことは沢山あるというのに。






高校卒業と同時に大阪へ行くことになっていたあいつとは幼馴染で、
ちゃんと恋人になれたのはちょうどその一ヶ月前だった。



その一ヶ月は俺らにとってはあまりにも短くて忘れられないものだった。


最後の日は気持ちが自然と高ぶってあいつにいろいろ誓ったっけ。




サッカー選手になってテレビに出て嫌でもあいつの目に入るような有名人になるとか


大阪戦でハットトリック見せてやるとか


身長180cm越えするとか





いま考えたらとてつもなく無謀な話だけど
あの頃はなんつーか夢とか希望とかそんなようなものがすげーあって
あいつのためなら何でも叶えられると思ってたし、語ることだってできたんだ。







結果的に、サッカー選手にはなれた。


そんで最近はスタメンで出させてくれてるし
あいつだって試合に出てる俺を見ていたはずだ。


大阪戦だってゴールを決めた。





し、身長はまだだけど…






だから俺なりに成長できてる。
成し遂げたつもりでいた。



だけど無謀な誓いをしたときにあいつが見せたきらきらした表情が見たい。


あんな大きすぎること言ったのにあいつはめちゃくちゃ笑顔で
楽しみにしてるねと俺に返したのだ。


俺だって彼女の笑顔で幸せ貰いたい。




なんて考えているときにあいつがいるのは本当に何年ぶりだろうか。






「テレビで見てるときは全然ちっちゃく見えるのにな」





「それはみんながでかいだけだ」




「なんか可愛いなあって思ってたのに」





「…可愛い方が良かったのかよ」





「ううん、かっこ良くてどうしようかと思った」






そういってあいつは頬を赤らめてはにかんだ。



俺は一瞬自分に言われた褒め言葉を忘れてしまうくらい彼女の表情に見惚れてしまった。






「、それまじでいってんの?」



「会ってそうそう嘘なんかつかないよ」







どうやら少しは成長できていたらしい。





「…今だってすっごいどきどきしてるんだよ」






だからちょっとだけ調子にのってもいいよな?






「それ俺もだから」




照れながら下に俯いたあいつの小さな手を少し控えめに握ってやるとあいつはびっくりしてこちらを向いた。




「せら、くん?」





「勝手に綺麗になるなよ」





笑顔が見たいとか、そんなベタなこといってた自分が馬鹿みたいだ。




あいつといられるだけでもう何でもいい。





そう思える様になった自分に
成長したなと自分で実感した。




とりあえず身長だけはあと10cmは伸ばしてやろう






今日はとても大きくみえるよ


(世良くん、いつそんな反則技身に付けたの?)
(お前こそあんな表情は反則だって自覚してんのかよ?)
(え、何のこと?)
(…)








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