今日のデートはいつもと変わりばえしなかった。



いつもみたいに喫茶店で待ち合わせして、
20分達海くんが遅刻してきて、
いろんなところ回って、食事して、またぶらぶらして…。

達海くんも私も普通に会話してたし、
天気も晴れだった。











ただいつもよりほんの、
ほんの少し達海くんのつないだ手に力が入っていた、と思う。













いつもと同じ帰り道
少し坂が急なこの道の丁度坂を登りきったところで達海くんは急に足をとめた。









「…達海くん…?」










私の言葉から数秒間が空いてから達海くんは言った。
















「行くことにした」









口調も表情もいつもの達海くんだった。




でも目線はいつもより真剣で、
繋いだ手にはさっきより力が加わって、














何処に、とは聞かなくても伝わった。










「…ん、わかった。」










私もいつもの口調、表情で答えた…つもりだ。




だけど不思議と私も繋いだ手に力が加わった。








そんな私を見た達海くんは
さっきよりも大きな声で、









「少し寄り道していーですか」

















達海くんに暫くついていった。



着いた場所は近所のサンセットパークだった。




晴れていたせいか一段と夕焼けが綺麗で、



私には眩しくてたまらなく見えた。












「…すごい」




「おー、綺麗だな」











この場所で私達は
幾つもの思い出を残してきた。

付き合う前から今日の日まで。




達海くんはあの時のこと覚えてるかな、とかここに来るといつも思い出していた。













しばらく、私達の間はしんとしていた。








夕焼けの綺麗さに圧倒されたのとか、
人がいないのもあるかもしれないけど、
今思うとお互いにさっきの言葉が気になっていたんだと思う。多分。












そんな沈黙を破いたのは達海くんだった。












「なまえはさ、泣いて引き止めてくれると思った」










長い沈黙のあとだからか
不思議と頭に響いて残る言葉だった。










「いらない心配だったなー」











そう呟いた達海くんの瞳はどこか寂しそうに茜色の空を見つめていた。











「…私は達海くんがサッカーしてるの見るのすっごく好き。
だから私の勝手な我儘より達海くんのサッカーがもっと見たいって気持ちの方が強いから…



引き止めたりなんてしないよ。」











夕焼けが綺麗だ。





私達にも夕日が当たっていつもより赤みがかってて、
それが妙に切なくてもどかしくて、

遅い青春だった。











「…遠いよ、な」
















言わないで。




行かないで。












眩しすぎる夕焼けは
ついに私の我儘を掻き消してはくれなかった。










達海くん、達海くん、


















ほんとうは、さみしいよ。













周りが急に真っ暗になって、
数秒後光を取り戻した私には
柔らかい唇の感触だけが残った。






さっきの言葉とは到底言えない言葉はあなたに伝わっていたのだろうか。














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