※大学生パロ








気分が悪い



空腹に耐えながらバスに慌ただしく乗り込む。

今日は大学初日。

一夜漬けでも行けてしまうんじゃないかというくらい楽で割と近場な大学に合格して
その後何となく気が抜けて
高校の同級生と遊んだり漫画読んだりして過ごした春休み。

学校の存在をすっかり忘れていた。




それでも何とか予定の一本遅れたバスに乗り込めた俺は吊革に捕まりながら少し安堵する。

何とか間に合いそうだ。



空腹が普段あまり使わない体力消費した身体に響く。

高校ではそれほど強くないサッカー部に入っていたが、何せ去年の秋からボールにすら触れてない。
元々運動が好きでもないしこうやって必死になって走ってみると、自分がどれだけ体力がついてなかったか実感する。



うん、俺向いてない。



そんな自分に少し落胆しながら無意識に自分のズボンに触れる




「…げ」





財布忘れた


…まあ今日は入学式だけで速攻帰れるしパスケースはある。

でも何か今日はツイてない。





ふと目の前を見ると、入試のとき見た綺麗な時計塔。

あの時は雪が積もっていて絵本のカットみたいだったのがかなり印象的だったが、今は桜並木に囲まれて舞い散る桜と絶妙に絵になってる。



「(…春だな)」




高校の奴らと馬鹿やってたのが懐かしい。

まだ少し過去に戻ってもいいと思ってしまう。

青春って何でこんなにも短いのだろうか。








バスが止まった。

俺はジーンズのポケットの内にぴったりとくっついているパスケースを半ば無理やり出し、
運転手のおじさんの目の前でタッチさせる。



ご乗車有難うございます




微かに耳に入ったアナウンスを背にパスケースを強引にまたポケットに入れ、あまり人が降りないこのバス停に降りた。




…入れたはずだった。








「   あ、あの!落としませんでしたか?」






「は…」





ぱちり




桜の魅せているピンクのオーラを纏っているきらきらした女の子がいた。


…一瞬。


驚きのあまり大きく瞬きをするとそこには小柄な女の子。




「あの、パスケース落ちてました!…違いますか?」




小さな手で差し出しているのは紛れもなくさっきまで俺のポケットに入っていたパスケース。

慌てて入れたから落としたのか…

っていやいやそうじゃなくて!





…何この子めちゃくちゃ可愛い。




「あ、ごめん拾ってくれて…」




「いっいえ!  渡せてよかったです!」








あ、





これはやばい





ふんわりと笑ったその笑顔に俺は一発でやられてしまった。









「ここで降りてる…ってことはM大ですか…?」






「え、ああ、今年入るんだけど…」





「私も今年入ります!…一緒、ですね」








おいおい俺どうしちゃったの








彼女の一言一言に胸が高鳴って仕方が無い。






「えっと…これからその、



よろしくお願いしますね!」













君のみに奪われる





空腹も高校時代も全部一気に吹っ飛ぶ衝撃だった

なんだ、まだ青春は終わっちゃいない。





(一目惚れとか俺、どうかしてる…!)
(でもどう見たって可愛い)







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