寒さが厳しい真冬のある日、私は雄二郎くんとデートしていた。
今日はここ一週間では一番冷え込んでいたけれども最近めっきり仕事が忙しくて会えなかった雄二郎くんがやっとのことでとった休暇を私と一緒に過ごしてくれると思っただけで胸が温かくなる。寒さなんて吹っ飛んでしまう。

なんて言ってみたけどやっぱり気を抜くと寒さが身体を駆け抜けていく。






「なまえ、寒くないか」


「あ、うん…すこしだけ」


「…ごめん、こんな日に外出歩かせちゃって」


「そんな、雄二郎くんが謝ることじゃないよ!ちょっと寒いけど全然大丈夫だから、ね?」


「……そうか」



私は少し申し訳なさそうにしていた雄二郎くんを必死で否定した。
雄二郎くんじゃなくて私が一緒にいたいからなのに…でもあまり雄二郎くんにその気持ちは伝わってないみたいだった。




「…じゃあせめて、ほら」



そういって手を差し伸べる雄二郎くん。


…手だけでも温めてくれるってことかな?




「…ありがとう」




少しだけ力をいれて雄二郎くんの手を握るとすぐに握り返してくれた。
雄二郎くんの手はすっかり仕事をこなす大人の男の人の手になっていた。



雄二郎くん凄く頑張ってるんだなあ。…そうだよね、こんなに長い間一緒にいられなかったんだもの。
こんなに頑張ってる雄二郎くんに私が何かできないかな。このままじゃただ雄二郎くんに迷惑かけてるだけの女になっちゃう。




…よし!!





「…雄二郎くん!」



「えっ…どうかしたか?」



「…あの、今日はさ、わたし雄二郎くんに何でもする。だから雄二郎くんがまた明日からお仕事頑張れるように…わたしにできることがあったら何でも言ってね?」




そう一気に言った私に雄二郎くんは目を丸くさせて口を開けたまま何も言わなくなってしまった。



…わ、私何か変なこと言っちゃったかな。もしかして嫌、だったとか……ううちょっとへこむ……






「…あ、あの、雄二郎くん…?」




「…はははっ!何なまえ、急にどうしたんだよ」




私が恐る恐る口を開くと予想外にも雄二郎くんは笑顔でそう言った。






「え、だ、だって雄二郎くんその…今まで仕事で疲れてると思うし、私に何か雄二郎くんの力になれないかなって…」




「……そんなことなまえが気にすることないよ」




雄二郎くんは優しい笑みをこちらに向けながらそう言う。
今はその優しさが心を痛めた。







「でっでもわたし、雄二郎くんに気を使わせてるだけの女になるのは嫌なの!だから…」






「あーもう、

…なまえのこと、そんな女なんて思ったこと一度もないから安心して」





「え、と、」





「…なまえは黙って俺の隣にいてくれればいーの」




「!!」




「…こうやって寄り添ってくれたら疲れなんて一瞬で忘れるよ」






急に繋いでいた手を引っ張られ、私の肩が雄二郎くんの腕に当たってしまうほど近くで耳元でそう囁いた雄二郎くんに真っ赤になってしまったのは今思うと当然すぎることだった。




「…あの、雄二郎くん」


「…ん、なに?」



「…わたしばっかりこんなに幸せでいいのかな…」




「…そんな風に思ってもらえてるなら、その何倍も俺の方が幸せだよ」






きみの温かさを知る



(なまえ、俺の家に行こうか)
(え、急にどうして)
(寒くないし ここじゃできない大胆なこともできるし、な?)
(……雄二郎くん調子乗りすぎです)




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お題は「確かに恋だった」様より







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