「もしもしイギリス?私、今日イギリスの家行くから!」




急すぎる彼女からの伝言にちょっとの不安と嬉しさが交じる。




「何でよりによって今…!」




俺の家はいつものことだけれど雨が降り続いていた。
その中でも今日はかなり激しく、一日中家にいようと思っている人がほとんどであろう日に来ようとするなんてなまえは何を考えてるんだ。


でも久しぶりに大好きな人に会えるチャンス。
走らないわけにはいかなかった。
足取りは重くない。でも何だか不安が募る。
そう思ったときだった。




ぺちゃん、






「…?」





不思議な音が聞こえた。
どう考えても自然の音ではなく、人工の音。

不思議な音の残響を頼りに向かった場所にいたのは、





「ん…、いぎりす…?」





雨の日に思い切り遊んだ後のようななまえだった。




「なまえ!?その格好どうしたんだよ!」



「うん、ちょっとはしゃぎすぎちゃったみたい」




どうやらあの不思議な音はなまえが滑って転んだ音だったらしい。


そのおかげで可愛らしいレースのついたピンクのキャミソールはびしょびしょ。

でも今はそんな風に濡れたなまえも愛しく感じた。





「というか、何で傘持ってねえんだよ」



「え?だって今日うち雨降ってなかったし…」




「何言ってんだよ!こっちとお前ん家は天気違うに決まってるだろ、ばか!


…風邪引いたらどーすんだよ…ほら、立てるか?」




「イギリス、心配してくれたの…?ありがとー」



俺の差し伸べた手をぎゅっと握り締めてえへへっと笑うなまえが俺の理性をぐらつかせる。

辺りはしんとして誰もいないこの場所に、雨が地面に打たれる音と俺たちに声だけが響き渡る。




「ったく・・・何でこんな日に急に来るんだよ」




「だって…!さ、最近イギリスに会ってなかったし…寂しかったんだもん…」




「っの、ばか!!」



「ひゃっ!」





なまえが可愛すぎるのがいけないんだからな。

俺は冷たく冷え切った彼女の身体を強く抱きしめた。





「い、イギリス…?」




「なまえのこと…もう離さねぇから…」




そしてなまえのいたるところに軽く何度もキスをした。

途中でなまえは小さく「ひゃ」だの可愛い悲鳴を漏らしてますます俺をリーズンブレイクさせようとする。





「わたし、イギリスだいすきだよ。だから今、すっごいしあわせ…」




少し照れながらやっとの思いで言えた様になまえが言うから、




「ばか…」




俺はそれしかいえなかった。




「ねぇ、今日はイギリスの家に泊まってもいい?夕飯は私が作るよ!」



「…そんなこと聞かなくても俺はそのつもりだったっつの」



「えへへ。」



「ほら、俺の傘入れ。か、帰るぞ」




「…うん、」




ちっこいなまえの身体が俺の身体にくっつくかのように近づき、



「ね、余った手はわたしと繋いでほしいな。」


と小さく呟く。


俺は何も言わず、ぎこちなくあまった手を差し伸べた。
そして小さななまえの手を優しく握るとなまえはほんとうに嬉しいというようにやさしく笑った。
俺はそのとき本当に彼女に"愛してる"と叫びたくなってしまった。





「い、行くぞ!」



「…うん!」






コイゴコロリピテーション


(でも本当に叫べなかったのは俺たちがまだ未熟だから)








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