「なまえちゃん!」
あ、今日の夜はカレーを作ろう。
なんていう近未来予想図を頭に描きながら進んでいた足取りは聞き覚えのある声によって止まった。
「世良さん、」
私がこの言葉を呟いたゼロコンマ数秒後に、彼はもう私の隣まで来ていた。
「練習見に来てくれてたんだ」
「はい!…あ、練習おつかれさまです」
世良さんは練習の後で疲れてるはずなのに、きらきらとした笑顔を私に振りまく。
くせでぴょんと跳ねてる髪の毛とか、 私より10cmくらい高いけれど男の人の中では控えめな身長とか、 年上とは思えないほどなんていうか可愛い人だな、と思った。
「なーんて、本当は知ってたけど!」
「え?」
「椿が言ってた。"今日なまえ来てる"って」
「…気づいてたんですか、大介くん」
「お陰でテンパって、今日めちゃくちゃだったけどね」
「そうだったんですか…」
私は大介くんの幼馴染。
だから時々内緒で練習見にいってるんだけど、まさか気づかれてたなんて。
…確かに今日は妙に大介くんがこっち向いてた気がする。
「…なまえちゃんは椿を見に来たの?」
「まあ、それもありますけど大介くんばっかりじゃないですよ」
「ふーん…じゃあさなまえちゃん、俺のこと見てた?」
「へ?」
「今日俺、2点決めたんだけど」
そうだ。
今日の午後の紅白戦、調子の悪い大介くんとは打って変わって世良さんは絶好調で、一人で2ゴールも決めて世良さんのチーム勝ってたんだった。
「はい、ちゃんと見てました!凄かったです。」
「そっか…っあー良かった!!」
世良さんはホッとしたように言った。
「…なにが…ですか?」
「なまえちゃんに俺の良いところ見てもらえてたからさ!」
そう笑って言った世良さんにどきっとした。
「そ、そうですか」
「あ、でも俺もなまえちゃん見てたよ」
「え」
「可愛いなあって、」
「…そ、それ本気で言ってますか?」
「うん。俺なまえちゃんのこと超好きだし」
躊躇いなくそんなことを言う世良さんに私はどきどきする。
「…あの、私大介くんの幼馴染ですよ」
「うん、知ってる」
「私が大介くんのこと好きかも、とか思ったりしないんですか?」
「うん、する。」
「だったらなんで…」
「だって俺、FWだから。」
チャンスがあるならガンガン攻めなきゃらしくないっしょ!
そう言い放った彼に幼馴染という存在がありながらも確実に気持ちが傾いてることが自分でも分かった。
奪ったもの勝ちそれがFW
(…今日の世良さん、凄くカッコいいです) (!! マジで!)
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