一億光年、なんていう普通の人間では到底想像できないほど遠くにある輝きはあいつの隣にいてもはっきりと見えた。
「堺さん、こっちです」
全くいつからだろう、 こんなにも夜が明るくなったのは。 久しぶりにゆっくりと眺められた都会の街に少しくらっときた。 あいつの歩幅は明らかに俺より小さいはずなのにこういうときだけ動きが早かった。
「もうちょっとゆっくり歩けよ」
あいつの隣に戻り俺が呟くと、あいつは一瞬きょとんとしたかと思うとすぐに笑顔を作って
「久々に一緒にいられるんですよ。わたしすっごい嬉しくて、ついはしゃいじゃいました」
と耳障りな人工音に負けないくらいはっきりと言った。 可愛いとは呆れるほど思ってきたけど、どうもそんな感情は変わりそうにない。 あいつは少しは落ち着いたようだったが、隣でまだそわそわしていた。 それが妙に俺の元から離れていってしまうような錯覚を起こさせて、なんだかもやもやした。
「はぐれるぞ、」
あいつの手は小さくて冷たい。 そんな弱っちい手で握り返してくれたことが俺の心をあいつでいっぱいにした。 馬鹿野郎、こんな弱いくせになんで俺から離れていくんだ。
「あの、もう少し近づいてもいいですか?」
控えめに俺の肩によって俺を見る。そんな目と紅潮した頬がいつになく色っぽくて、でもやっぱり可愛くて
「わざわざ聞くことかよ」
まだまだ寒いな。
キスをすると周りの光景が一層眩しく見えた。同時にあいつがいる暖かさは俺の中では計測不能にまで達していた。
「堺さん、すきです」
もし本当にあいつが離れていってしまったら俺はどうしたらいいのだろう。
僕たちは星になれない
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「Love Potion31」様に提出
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