今までこんな気持ちになったことは一度たりともなかったのに。
みょうじなまえちゃんを好きになったあの日から僕は毎日が君中心に回るようになった。
君がふわりと笑ってくれるだけで一日が薔薇色だったし、少し話ができただけでとろけてしまいそうなくらい心が暖かくなった。
一度も君のことを見かけなかった日は一日溜息ばかりついて三郎に呆れられたし、君が他の男と話している姿を見てしまった時にはどうしようもないくらい黒くて苦い感情が心の中から湧き上がってどんなことにも身が入らなくなったりもした。
そんな毎日はある日を境に少しだけ変化した。
君が僕の彼女になった日から。
「ら、雷蔵くん!」
「…なまえちゃん!」
好きの気持ちが抑えられなくなって勇気を出して気持ちを伝えたら、何となまえちゃんも僕と同じ気持ちだったと告げられ、晴れて両想いになれたのだ。
今こうやって名前で呼び合えるのもあの時気持ちが通じ合ったおかげだ。
「あ、あのね…今日一緒に帰れるかな…?」
なまえちゃんはあまり積極的な方ではなくて、こうして誘ってくれる時はいつもどこか緊張した面持ちできゅっと目をつむって僕に問いかけてくる。
そんな姿が本当に可愛くて、僕はそれだけで心が満たされた気持ちになる。
「…今日は委員会の当番じゃないから一緒に帰ろうか」
そう僕が言うとなまえちゃんは途端にぱあっと笑顔になって心から安心したような表情になる。
「よかった…!雷蔵くんと帰れるの、嬉しいな」
ああもう何でこんなにも沢山僕の心を掴んで離さないんだろう。
「…なまえちゃん、」
「…雷蔵、くん?」
無防備な左手をくいっと僕の方へ引き寄せてそのまま額にキスを落とすと一瞬固まったなまえちゃんはほっぺたをみるみるピンク色に染めていった。
「らら、ら、らいぞう、くん…!」
「…なまえちゃん可愛い」
「!! そ、そんなこと…!わ、わたしなんてそんな、」
「どうしてそんなにも僕を惑わせるのかな?…なまえちゃんが好き過ぎておかしくなりそう」
そう思わず本音を呟くとなまえちゃんは一瞬驚いてそのあと少し俯き僕から視線を逸らしたかと思うと
「…わ、わたしこそ、雷蔵くんがこんなに優しくて格好良くて……
…おかしくなりそう、です」
さらに真っ赤になりながらだんだんと小さくなっていったなまえちゃんの言葉を一字一句間違いなく聞き取った僕は、自分がもう既に取り返しの付かないほどおかしくなっていることに気づいたのだった。
君を困らせる僕になりたい
(僕が君のことで頭がいっぱいな様に、君にも僕のことで頭がいっぱいになって欲しいんだ)
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お題は「確かに恋だった。」様より
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