白石くんは万人受けするタイプだ。

その整いすぎてる容姿は女子の心を掴んで離さないし
話し上手で付き合いの良いところは男友達を呼び寄せるし
おまけに品行方正成績優秀ときたら先生や大人達までに一目置かれるのは当然すぎること。


しかしそんなハイスペックで稀な存在にも関わらず、白石くんはみんなに気さくで平等に接している。
そんなところが憧れから恋に変わってしまう女子を増やしてしまう原因だと思う。




かくいう私もその一人だ。




こんな人に惚れない方がおかしい。
私はいつでも無意識に目で彼のことを追いかけてしまう。





ああ、もうどうしよう。

白石くんの仕草一つ一つに心拍数が加速していく


毎朝必要以上に洗面所独占して
髪の毛を結わえてみたり、香水変えてみたり

白石くんと話せる保証なんて全くないのに




なのにこんなに意識していると余計に期待してしまう。

一人で落ち込んで馬鹿みたくネガティブになったり
少し目が合うだけでその日は何もかも上手く行く気がしたり





白石くんは本当に凄い存在だ。






そんな白石くんが今日誕生日だと知ったのは当日の朝だった。



いつも以上に周りにいる女の子達に違和感を覚えながら席につくと隣の謙也くんが耳打ちしてきたのだ。








「なあ、なまえ」



「謙也くん?おはよう、どうしたの?」




「今日白石の誕生日やん」




「えっ…?」





「?…まさか知らんかったか?」











「う、うん…だから今日はあんなに女の子居たんだ…」





「す、すまんなあ。もうちょい早う言うとけば良かったな…」




「う、ううん!謙也くんが気にすることじゃないよ!」






私が白石くん好きになったのは去年の4月の終わりくらいだったかな、
謙也くんから




「せや、うちの部な、今年の部長2年になったんやで!部長が同じ学年っちゅーことは俺にもレギュラー取れるチャンスがあるっちゅー話や!」




と聞いてから。

それがきっかけで白石くんを意識し始めたのだ。





私ってば馬鹿すぎる






「な、何も用意なんてせんでええって!白石は物で人の価値決める奴やあらへん。…話しかけてきいや。おめでとう一つくらいなら言えるやろ!」





「で、でも」




「いいから行ってきい。なまえが行かんかったら俺が責任感じてまうやろ…」





「…謙也くん自分の心配?」





「そうやで。俺が可哀想やでー」






「…っふふ、何それ!



…心配しなくてもちゃんと話かけるよ!」









謙也くんはやっぱり世話焼きだ。


でもそんな遠回しな優しさがとても嬉しかった。










*







「し、白石くん!」




「…おお、みょうじさんか」





白石くん今日もかっこ良い!








「あ…いきなりごめんなさい!」






「はは、どしたん?そんな急に」








白石くんスマイルに心拍数が加速していく



こんなところでときめいちゃだめ!


…このままじゃ絶対にもつわけない…!








蕩けるような思考を何とか取り戻して伝えたかった言葉を口にする。










「あ、あの…お誕生日おめでとう!


そ、その…ついさっき知ったから…何も用意できて無いんだけどね、おめでとうだけは言いたくてその、」






「…っはは!みょうじさんかわええな」




「へっ…!」





「あ、笑うて堪忍な。あんまり真面目やからつい…。


俺はみょうじさんが祝ってくれたっちゅーことのが大事やからごっつ嬉しいで?

…おおきに」







ああこの白石くんの笑顔は私だけに向けられてるんだ



そんな幸せに浸っていると白石くんは何時の間にやらさっきより私の近くにいる。



気のせい?…いや、気のせいじゃない










「あっ…えと、白石くん近」












「…みょうじさん久しぶりに見た気いするわ…」







「えっえとあの、」












なんでなんでなんで



どうして白石くんがこんな近くに…!











「ん…みょうじさん香水変えた?」





「はははははいっ!!変え…ました!」





「…こっちのが、みょうじさんに合っとる」









もうどきどきなんてものじゃない。


眩暈がして脳が機能しない







白石くんにどきどき聞こえちゃいそうなくらい近くにいて



顔なんて耳元まで近づいてて






あんなこと囁かれてしまったら、













「白石ー!早よせえ!そろそろ5時限目やでー!」



「っと、そうやった。おうー!ちょい待っとって!










…みょうじさんもそろそろ移動した方がいいで?…ほな、またな」









「…」





駆け足で教室を出て行った白石くんを見届けるとやっと身体の自由が戻った。







ああ、あれだけで動けなくなるなんて。



これ以上近づかれたら私…






今だに侵食されている左耳が熱くなり
堪らなく切なくなってしゃがみ込む。






「…はあ…」







もっと振り向いてくれたら、すら言えないなんて






春のやまいだそうです



(次 目が合ったらわたし、)












*




みょうじさんがまさか俺の誕生日を知ってるとは思っても見なくて
おめでとう言われたときはほんま心臓止まるかと思った。





「白石、ちゃんとお返し出来たか?」




「…返し以前に死ぬかと思ったわ。


…あんな可愛え顔して見つめられたら敵わん」




「…白石にしては慎重やな」




「…何言うてんねん、こっちはもう精一杯やあほ」





香水まで変えて更に追い打ちかけるつもりなん?




みょうじさんの中にある白石蔵ノ介が壊れるのももう時間の問題や。












(次目が合ったら抱きしめてしまいそうで、)






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お題は「brooch」様より





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