清純くんが私の手に自身の手を重ねたのはたぶん私が相当酷く悲しい顔をしていたからだと思う。
清純くんは女の子が大好きで扱いだって人一倍上手で私は清純くんといるとふわふわ宙に浮かんでるような錯覚を覚える。
清純くんが笑った顔はすごく眩しくて幾度も見惚れてしまったし、実は女の子だけじゃなくて友達にも義理堅くて人一倍責任感のある彼の一面を知っていることもみんなみんな私にとって大事な思い出の一ページだ。
「…なまえ、」
「…ど、して、」
「…何かあったのか」
「清純、くん」
ぷつん、と糸が切れたみたいに急に溢れ出す涙に自分でも戸惑った。
昔は当たり前のように隣に居られたけれど今は180°違っていて、折角清純くんを独り占めできる唯一の時間なのに、なのに、
「ごめんね、ごめんねっ…」
「…」
どうして、なんで、 もう時間なんて無いのに もっともっとお話したいはずなのに
目一杯な思考と今の自分がアンバランスでまた戸惑ってしまった。
気がつけば寝ても覚めても目の前の清純くんのことばかり考えてしまっていて自分がすごく怖くなってしまったせいなのか何なのかも分からない
「…っ清純くん、わたし、もっとたくさん清純くんと話したいっ…!どんなときでも、やっぱり清純くんと話すのが一番楽しくて…!だからっ、」
「…なまえは何も分かってない」
私が口を開きまとまりのないあなたへの言葉で精一杯な中、清純くんがぽつりと呟いた。
「なまえは自分だけ、って思ってるかもしれないけどさ、
俺だって目一杯なんだよ?」
いつになったら君が俺の気持ちに気づいてくれるだろうとか、 どう接したら君だけは他の子より飛び抜けて特別な存在だって伝わるかなとか、
君のこと俺でも例えられないほど大好きなこととかさ。
清純くんの切ない顔は初めてで向けられた言葉が冷静に受け止められなかった。 ただ理解できたのは握られた手を引っ張られ今自分が清純くんの胸の中にいる、ということだけだった。
「好きだよ、なまえ」
本当は最初から君しかいらなかったんだ。
お互いが遠回りしすぎて見失ってしまった初恋の道にやっと光が見えた。
*
君のことしか考えられなくなったのはたぶん君よりずっとずっと先であり 君の魅力は誰にも知られたくないと思ってしまったこともたぶんずっとずっと前の話だと思う。
女の子に優しくしようとしたことも紳士な振る舞いが自然と身についたことも全部全部君のせいであり、そのおかげで予想外に不特定多数の女の子にウケてしまったことも君のせいなのだ。
君のためにと思ったことがまさかここまで遠回りになってしまったなんて自分は馬鹿なのか。
それでも彼女の涙の混じった笑顔を見てしまうと何も言えなくなってしまう。
やっぱり君の笑顔は世界で一番俺が敵わないものだ。
終わりを知らない初恋だったね
(回り道なんて金輪際するものか。君が居ればあとは手を取り合って走り出すだけなのだから)
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千石さんは本当に好きな人には奥手で一途だと思う。
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