今日の鍛錬は名前と組手をすることになった。組手なら神田やマリとも何度かやっているけれど、名前との容赦ない組手は、もはや鍛錬の領域を超えてしまっていると最近感じるようになった。

イノセンスの力で増幅された馬鹿力は、その細くて柔らかい腕からは到底想像することはできないだろう。

「せいやっ!」

今の可愛らしいかけ声と共に振り下ろされた腕が、どれだけの威力をもたらすかなんて、普段の名前を見ていたら皆目見当もつかないだろう。

馬鹿力、なおかつ異常なタフさ。それが名前のイノセンスだ。

「よいしょー」

綺麗な右ストレートが、僕の頭すれすれに通った。がつんと鈍い音がして、後ろの壁が壊れたということを示唆させる。

い、いつの間にこんなに追い込まれていたんだ…。

「ま、参りました…」
「集中力なさすぎ!」

苦笑いしかできない僕に呆れ顔をして、名前は休憩しよう!と僕の手を引いた。

その名前の顔を見て、少しだけ食堂で合った時の着飾った姿が思い出された。いつも最前線で戦っている名前が、年頃の女性と同じように恋をしているのを見て正直驚いた。でも、それと同じくらい、安心した。エクソシストではない彼女の姿を見るのは、あれが初めてだったから。

「なーに考えてたの?」
「いや…、大したことじゃ」
「どうせ、夜ご飯のこととか考えてたんでしょ!」

ジェリーさんからもらったお茶を飲みながら、名前は笑う。こうして見ると、愛嬌があって可愛らしい顔をしていたんだなあ。なんて、柄にもないことを思ってみたり。

「まったく!そんなんだから、いつまでも私に勝てないのよ」
「実戦では負けませんけどね」
「本当かしら!この間の任務の時だってーーーー」

いつもの口喧嘩。名前の口は小さいのに、相変わらずよく動くなあなんて思ってたら、後ろで革靴の音がした。自分の武勇伝を話す名前の耳にはそれは届いていないらしい。

「今度神田が帰ってきたら3人で組「名前」

しばらく前を見続けていた名前は、まだ前を見ていたけれど、僕はすでに名前の後ろの人物ににっこりと会釈をしておいた。どんな反応をするのか、楽しみだ。

「はーい?」

僕側から後ろを振り向いた名前は、名前を呼んだ人物を見た。

「1時間後にリナリーと任務だ。準備の前にちょっと司令室に寄ってくれるか?」
「…」
「名前?」

リーバーさんを視線でとらえた瞬間、名前は文字通り固まってしまった。耳が聞こえているかも怪しいところだ。

「名前!!」
「はいぃいい!」

肩を掴んで少しだけ大きな声で名前を呼んだら、ようやく反応した。よかった。ショックのあまりおかしくなってしまったのかと思った。

「大丈夫か?名前」
「はい!まったく問題ありませんので、司令室まで連れて行ってあげてくださいリーバーさん!」

まだ状況がわかっていないであろう名前の背中をぐいぐい押して、リーバーさんの隣に並ばせた。うん。後は頑張れ。

「あ、アレン…!」
「頑張ってくださいねー!」

任務よりもまず、きちんと会話をすること!


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