「婦長さんこんにちは!怪我しちゃいました!」

元気の良い挨拶と共に無遠慮に開けられた扉。眠っている患者もいるっていうのにまったくもう。

「医務室では静かにして頂戴な」
「あっ、ごめんなさい…、」

慌てて口を抑える少女。今まで何度もこの子を診てきたけれど、ここへ来るのは少し久しぶりのような気がする。それだけ名前が傷ついていないということなのだから、安心だ。

「先生にはもう診てもらったんだけど、婦長さんに最近会ってないなって思って!」

溢れる無邪気な笑顔。それを見ていたら、疲れた心が少しだけ洗われたような気分になれる。この子は本当に不思議だ。

「そう。嬉しいわ」
「今忙しいの?」
「いいえ。少しなら平気よ」

そう言うと名前は、私の目の前の椅子に座ってあれこれ話し始めた。おしゃべりな口は止まらないらしく、時々相槌を打つととても喜んだ。

「私、この間ダイエットをしようって決めたばかりなのに、任務先でいちごのタルトを3つも食べちゃったの!また神田に太ったって言われちゃう!」
「私もいちごは好きよ」
「ほんと!今度ジェリーさんのところへいちごのデザートを食べに行きましょう!」

約束よ!なんて。楽しそうに笑うものだから、こっちまで笑顔になる。もう少し名前の話に付き合っていたいところだけれど、もうすぐ点滴の終わる時間。

「さ、私はそろそろ仕事に戻るわね」
「うん!話し相手になってくれてありがとう!婦長さん」
「いいえ。楽しかったわ。怪我をしないようにね」
「はーい!」

最後まで騒々しく出て行った名前を見送って、少し離れたところにあったベッドへ向かう。

「失礼します、リーバー班長」

引かれていたカーテンを開くと、リーバー班長はすでに体を起こしていた。

「騒々しかったかしら」
「いやいや、楽しかったですよ」
「ふふ。可愛いでしょう」

私の娘のような子だ。素直で、愛らしくて、おまけに人懐っこい。その性格からかあの子の周りにはいつも誰かがいて、明るい雰囲気になる。不思議な子だ。

「…そうですね。あんなに話してるところ、初めて見ました」
「あら?名前が静かなんて珍しい」
「でも最近、俺にも話しかけてくれるようになったんですよ」

それを聞いて、今日久しぶりに会った名前をもう一度思い出す。そういえば、任務帰りだというのに綺麗な服を着てお化粧もきちんとしていた。髪だって整えられていて…。ああ、もしかしたら。

「リーバー班長、名前はとっても良い子なのよ」
「へ?」

きょとんとしたリーバー班長を見て、思わず少しだけ笑ってしまう。名前ももう恋を経験する歳なのよね。たくさん恋をして、素敵な女性になるのよ。なんて。


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