「チョコ、ザイ、ナ」

「「!」」


あまりに突然のことで、何をするにも間に合わない。ほぼ反射で受身を取ったが、危うく倒れてしまいそうになった。

さっきまで並んでいた瓦屋根はもうない。


「倒れっかよボケ…!」


息苦しさに舌打ちを打つ。クソ…めんどくせえ。


「う…、…アルヴァ…」


すぐ近くでぶっ倒れてたラビもようやく起きたらしい。アルヴァは―――


「…っアルヴァ!」
「…おい、」


まるで何事もなかったかのように、気絶したままだった。新たに傷が増えている様子もない。あるのは、あの天パのノアにやられたであろう傷だけ。


「どうなってるんさ…?」


【ラビ…】


アルヴァの声じゃねえ。これは、…リナリー?


「おい…何だアレは…!?」


【神田…、アルヴァ……、皆……皆…っ!!】


ここから少し離れたところで、見たこともない物体が出現していた。しかも、そこからはリナリーの声がしやがる。


「危険だぞ神田!」
「!!」


マリの声に臨戦態勢を取ると、あの天パのノアが斬り込んできやがった。


「もらうよ、彼女」
「チッ!」


互いの力を相殺させて、間合いを取る。さっきので、ゆらりゆらりとふざけたナリをしたこいつが中々の力を持っていることは分かった。



「ねえ、女のエクソシストって結構いるんだね」



よく動く口だ。あの馬鹿ウサギみてえ。



「可哀想に。適合者だったばっかりに戦場にかり出されるなんて、さ」



大きな破壊音が俺の後ろで聞こえる。少し頬を切った。



「やっぱ嫌なんだろうね。こんな血なまぐさいトコなんて」



蹴りを入れてやろうかと思ったがかわされる。俺も奴のひと振りをかわしてから、少し離れた。


「…さっきから何だ」
「んー、ドウジョウ?」
「うるせえからやめろ」
「でもさあ、」


おもむろに攻撃の手を休めた天パ。俺もぴくりと動いたが、黙っていることにする。



「さっき、……ああ、一瞬だったんだけどな?」


「あの子、俺らを殺したくてしょうがないって顔、してたぜ?」



大きく振りかぶって奴の脳天を狙ってやった。ずり、と後ずさったように見えたがすぐ体制は戻る。


「ちょ、おい!少しは話聞けよ」
「知るか。どうでもいい」


あいつが殺したくてしょうがない、だ?意味分かんねえ。ああ、そうかよ。


「まあ、いいけどッ…さ!!」
「!」


一瞬視界が眩んだ。舌打ちを一つ打って、すぐまた見つけた影に【六幻】を振り落とす。


「死ねェ!!」

「うわっ!?」
「神田!?」
「!!?」


気づいたらそこに天パのノアはいなくなっていた。…まあ、それ以上にムカつくモヤシ野郎ならいたがな。





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