「そうだね、仕事だ」
「私も、仕事だ」
「はじめましょう」
ぞわりと全身の毛が逆立った。みるみる血の気が引いて、一瞬で目の前が真っ白になった。
「ジョニー!!!!!!!」
タップの叫び声が聞こえる。力なく倒れるジョニーが見える。パニックになる班員たちの悲鳴が聞こえる。じわじわとジョニーの足下に広がる血液が、止まらない。
黒々と聳える扉が、アクマでひしめき合っていた。あれは、アンドリュー支部長ではなかった。もしかして、あれがノアだろうか。
レベル3のアクマはケタ外れに強くて全く歯が立たなかった、とリナリーが言っていたことをふと、思い出した。
さっきから震える手で室長に何度も通信を試みているが、応答がない。
嗚呼、悪夢だ。
そう思った。
「…っジョニーを運べ!!!!!みんな出口を探すんだ!!!」
「お前達とはすぐ《さよなら》なんだけれど、挨拶はちゃんとしなさいと主人は言うから」
アクマを構成しているのはダークマターで、それを破壊できるのは、エクソシストのイノセンスだけで、
「うわあああああああああああ」
神の使徒の力が無ければ、この力を止めることなんて出来ない。
「ギャギャギャギャギャ!!!!」
不気味な笑い声が、そこらじゅうに響いている。不快な音が、きんきんと耳に突き刺さる。恐怖に竦んだ体から、自然と涙が溢れ出る。
その中で、すぐ耳元で聞こえた。
鈴の転がるような透き通った、声。
「ーーー滅罪ノ、檻」
突然辺り一面に広がった真白い光に目が眩んで、反射的にまぶたが降りる。見なくても分かった。声色、空気、この、温かさ。
「もう、大丈夫です」
嗚呼、来て、ほしかった。
「…アルヴァっ…!」
来て、ほしくなかった。