「おお、ウォーカーじゃないか!」
もうすぐ食堂が見える、といった時。レニー支部長と、バク支部長、それからアンドリュー支部長とすれ違った。
ちょうど朝食を取り終えたところらしく、その足はラボへと向かっているらしい。
「バクさん!」
「これから飯か?まあ…がんばれよ」
「…?」
居心地の悪そうな表情を浮かべながら、バク支部長はアレンくんと親しそうに話をしていた。…あの噂のことだろうか。
「ではまたな。俺たちはこれから大事な研究がある」
声高々にそう言った支部長は、アレンくんに笑いかけた後で、こちらへ歩いてきた。ふ、と視線が合って軽く会釈を交わす。
「ジュエリー、」
「お久しぶりです。バク支部長」
「おいおいバク!突然止まるな」
バク支部長が突然立ち止まるものだから、後ろにいたアンドリュー支部長がよろめいてしまっていた。昔、神田さんも突然立ち止まったラビくんに怒っていたな、と思い出して少しだけおかしかった。そうだ、神田さんにも会いに行かなくちゃ。
「アンドリュー支部長、壁の塗料がついていますよ」
「ありがとう。せっかくの洋服が台無しだよ、まったくもう」
すっかりむくれてしまったアンドリュー支部長と、それを見て笑っているレニー支部長たちを見送る。
「ほら、アルヴァ行くさよ。遅れちまう」
「あ、はい!」
ぽん、とラビくんに肩を叩かれて慌てて振り返ると皆もう見えなくなってしまっていた。何故だかさっきまでの食欲がなくなったような気がした。
「ジョニー!遅いぞさっさと作業位置につけっ!!」
「あーっっ!バク支部長!ダメっすよ今日は入ってきちゃ!」
「どうせ人手不足なんだろうが。是非手伝ってやる!」
ふわりと零れた小さな危険信号は、誰の目にも触れずに、堕ちた。