「シンクロ率が…上がっている」
今日はリーバーに連れられて、へブラスカさんの元へ来ていた。長かった私の治療も終わり、今では元気に動き回ることができるようになっている。ヘブラスカさんに顔を見せに行くついでに、と久しぶりにイノセンスを見てもらうとそんなことを言われた。
「本当ですか…!」
これまで、私のシンクロ率はせいぜい50パーセント。6割以上のシンクロは一度もしたことがなかった。
「…80…パーセントまで上がっている…これからもどんどん上がるだろう…」
「やっと…私も…」
皆さんの役に立てるかもしれない。私の力が、皆さんを救う時が来たんだ。
ずっと足手まといだった自分の力が、ようやく認められたような気がした。
込み上げてくる喜びが、笑みとなって溢れてくる。しかし、ふと隣を見るとリーバーは険しい顔をたたえてヘブラスカさんを見つめていた。
「ヘブラスカ…」
「ああ……。アルヴァ、…強い意志を持たなければ……恐らくイノセンスの力は…お前を飲み込むだろう」
すっかり緩み切っていた気持ちが、ぎゅ、と引き締まったように感じた。
「お前は……優しすぎる…イノセンスの力に…負けてはいけない……」
自分の中の異質なモノに、飲み込まれてしまいそうになる感覚。それは今までも何度か経験していたし、それが恐らくイノセンスなのだと、目星もついていた。
「もし…負けたら……私はどうなりますか…?」
ぽろり。意識していないのに口から言葉が零れた。まずい、そう思ったけど言葉にした瞬間にぞわりと体が震えた。
私の中に潜んでいる大きな力。
その力にもし、飲み込まれることがあったら、私は
「…っ、」
想像しただけで、目眩がした。そんなの、いつ来るか分からない。いつ、イノセンスの力が強まって自分がなくなるかも、わからないんだ。
「……その時は「アルヴァ」
「安心しろ」
震える私を優しく包むように、抱きしめられる。私の中の恐怖も、不安も、全て掬ってくれるような優しさ。そんな彼に包み込まれて、強張る体の緊張もみるみるうちにほどけていく。
「そんなこと、させないから」
私を見つめる真摯な瞳に、吸い込まれてしまいそうだった。