俺は、信じているから。疑ってなんかいない。絶対に帰ってくるって、信じているから、大丈夫だ。だからいつもと同じように仕事も出来る。いつもと同じように帰ってくるのを待っていられる。…そう思っていたのに、な。
《全員無事です!これから、方舟を使ってホームへ帰ります!》
アレンからの通信が入って、心がざわつくのを感じた。どくどくと心臓が高鳴って、口が乾く。貧血に似た何かが頭をふらつかせて、鼻の奥につん、と痛みが走った。
「ああ…!みんなで待ってるよ…君たちが帰ってくるのを…!!」
コムイ室長の目が潤むのを見て、俺の目からも雫がこぼれた。ああ、くそ。これじゃあ全然…平気じゃ、ないな。
「アルヴァ…ッ!」
いつの間にか握りしめてしまっていたらしい、少しだけ皺の寄った書類をその辺りに投げて、フロアから出る。すると続いて後ろからバタバタと大勢の足音が鳴り、ずびずびとジョニーが鼻をすする音も聞こえた。
「ホントに…みんな…良かった!」
「まだ早いだろ、ジョニー」
「そうだぞ、たく気が早ェ」
おんおんと泣きはじめたジョニーの頭を、タップがぐりぐりと撫でてやっていた。悪態をつきながらも、その目にはじんわりと光るものが見える。
「リーバー班長、アルヴァを受け止める準備は出来ました?」
「…ば、何言ってんだ」
「あー早く帰ってこねーかなあ!!リーバー班長、絶対泣く!」
「誰が泣くか」
至極楽しそうに笑うマービンを小突いた時も、心臓はうるさく鳴っていた。平然を装おうとしても、どうもうまくいかない。皆不思議と口角が上がって、どこか浮き足立っている。
「素直じゃないなあ、リーバーくんは」
後から遅れてやってきたコムイ室長が、幸せそうに笑った。嗚呼、アンタのその顔見ちゃ、俺たちは何にも言えないな。
教団にいるほとんどの団員が集まって、エクソシストの到着を待つ。みんながもう待ちきれなくなった頃、一瞬だけ眩しい光が走った。目の前には白い光。ゆらりと影が現れて、それは見覚えのある姿たちに変わっていった。