「ん……」

まぶたにかかる光が眩しくて、目が覚めた。薄く開けたまぶたの隙間から見えるのは随分と眩しい景色だった。

「ん?」

そこらじゅう痛い体を起こそうとした時、ちょうどオレの腹の辺りには重みがあった。まだ明るさに慣れない目を擦りながら、その重みの正体を確認する。それは、小さく丸くなって眠っていた。

「アルヴァ…」

無防備に晒された寝顔を見ていたら、やけに愛おしく思えてきて困った。かんわいーなあ、やっぱり。少しだけ開かれた口が、まだあどけなさを感じさせていて、いつも気丈に振る舞うアルヴァも年相応に見えてくる。あーあー、綺麗な髪も砂ぼこりだとか、血だとかでどろどろさ。まあ、それでもかわいー!なんて思っちゃうんだけど。



「……?」



オレ、こんな呑気にアルヴァを観察してていいんだっけ?



あれ…?



「オレら落ちたんじゃ……」
「う…ラビく、ん」
「おう」
「…!ここは!?私たち…どうして…!!?」


ようやく状況が把握できたオレは、意識が戻ったアルヴァと一緒にあっという間に元の形に戻っていく景色を見ていた。ついさっき壊れた塔も、オレたちが一番最初に通った白いレンガの連なる街も、全部、全部…


「どうなってんだ!?消滅した街が…っ!?」
「も、戻ってる…」


え、えーと…。突然のことに頭がぜんっぜん追いつかないさ。とりあえずオレ、生きてる。アルヴァ、生きてる。ノアはいない。あれ?結構、良い状況?……でもなんで。


「う…」


後ろで小さく呻き声が聞こえて、振り返るとそこにはチャオジーがいた。


「…………あ」





………オレ、アルヴァ助けんのに必死でチャオジーのことすっかり忘れてたさ…。





「チャオジーさん!」
「だ、だだだいじょぶか…ち、チャオジー…」
「あれ…オレ、…………これ、どうなってるんスか?」


目の前の光景に慌てるチャオジーは、オレがすっかり忘れてたってことに気づいてないらしいさ。はあ…よかった……。


「それが、私たちにも分からないんです」
「んー…、とりあえず歩いてみねえ?アレンたちがいるかもしんねーさ」
「そうですね」


そうして、歩きだそうとした時だった。オレの横に立っていたアルヴァがふら、と体を倒した。ほとんど条件反射で支えようと手を出すと、驚いた顔をしたアルヴァと目が合う。

「ぁ…」
「、おっと」

かくん、と膝を負って座り込んでしまったアルヴァ。その足は少し震えていた。…恐らく激しい戦闘で体がもう限界なのだろう。

「わ!アルヴァさん大丈夫っスか!!」
「ご、ごめんなさい!大丈夫です!ちょっとふらついちゃったみたいで…」

自分がふらついたことに驚いているところを見ると、アルヴァは体の限界に気づいていない。ということは、…終盤はほとんど気力だけで動いていたに違いない。


「んじゃーアルヴァはお留守番な!ぐるっと回ったらすぐ帰ってくるさ」
「は、い…すみません…」


その気力の源は、きっとあいつなんだろうなあ。なんて思うと、やっぱりちょっと悔しいさ。でもアルヴァを早くあいつに会わせてやりたいなんて思ってるんだから、オレってやっぱり報われねー。



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