痛む頭を押さえながら目を開けると、塔は崩れてしまっていた。危うく瓦礫の下敷きになってしまいそうだったところを、チャオジーさんがぎりぎりのところで守ってくれている。

「チャ、チャオジ…!?」
「ぐぎぎぎぎぎ!!!!」

でも、明らかに限界だ。アレンくんとラビくんもぐったりとして動かない。


「っくそ!!」


逃げ場がどこにも、ない。


今にもこちらへ攻撃を仕掛けてきそうな奴に向かって、私は突っ込んだ。


「滅罪ノ檻!!!」
「ヒキッ」


飛んできた拳を、食い止める力はもうない。わずか1秒も、止めていられない。みし、と骨が軋んで、投げ出される体を止めることが出来ない。とっさに体を庇った左腕には、感覚がなかった。たったの1発くらっただけで、このザマだ。

「がっ…」
「アルヴァさん!!!」

チャオジーさんのすぐ横に、叩きつけられる。たまらず血を吐き出した。

「カカカッ」

奴が倒れた皆さんのところへ近づいてくるのを見て、私は必死にチャオジーさんの前まで這った。イノセンスを使った時の疲労だけじゃない。奴の底知れぬ力を受け続けたせいで、もう体はほとんどいうことをきかなかった。嗚呼、ここに来て感覚を失っていた左腕が悲鳴を上げ始める。それでも、


「や、め…無罪ノ加護」


守らなきゃいけない。

私程度の力が通用しないなんて、百も承知だ。


「アルヴァさん!!もうやめてください!!死んじゃうっス!!!」



それでも。



「や……くそく…」
「!?」
「アニタさん、と…マホジャさん……に」



『いつか時が来るまで、同志たちが幸福に生きる、と』



「…ッアルヴァさ、」
「あなたを……守、り…ます」



「キキッ」


瞬間、チャオジーさんの後ろからアレンくんとラビくんが現れた。苦しそうな表情をしているが、二人はまだ立っている。…よか、った。

「来い…ッ!ここからもう…生きて出られないとしても、命が尽きるまで戦ってやる…っ」

「マナとの約束だ…っ!!!」

アレンくんがそう叫んだ後、辺りはとてつもない衝撃に包まれた。目を開けているのもはばかるような、その激しい爆風に、痛みで朦朧としていた意識さえ戻ってきた。

これは…一体。

霞んだ視界の先に見えたのは、赤い長髪の男性。


「クロス…元帥…」
「!…あれが」


「エ…グゾ…ジズ…ド……」
「ノアにのまれたか…。一族の名が泣くぜ?」

初めて見るクロス元帥は、この場に似つかないような余裕を持って、奴と対峙していた。ゆるく口元を上げて、ニヒルに笑ってみせるそれは、己の力に100%の自信がある。そんな表情だった。


「これ…讃美歌…?」
「ガキ共にはご退席してもらったぜ」

「いいだろ別に。なあ?」


クロス元帥の攻撃が始まる。二つの対アクマ武器が、元帥の手によって操られ力を振るう。

アレンくんたちの声も、今は耳に入らなかった。ただ目の前の戦いに目を奪われて、自らのダメージさえ忘れてしまいそうになる。

絶対的な強さ。元帥の持つそれに、私はただただ魅了されていた。



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