『…必ず、必ず帰って来い。そしたら、買い物でも何でもつきあってやるし、…ずっと、ずっと一緒にいてやる』



あの時のリーバー、すごく温かかった。お互いに情けないくらい怯えていたのに、彼に触れている間だけはどんなものにも負けない気がした。



『アルヴァが帰ってくるのを、ずっと待ってる』



なんだか不思議。リーバーのこと、たくさん泣かせてしまった。怒られたことも、呆れられたことも山ほどあった。なのに、さ。



『アルヴァ』



今頭に浮かぶのは、優しい笑顔ばかりで。どれもこれも幸せそうな顔をしている。その周りには、室長やジョニーさん、タップさんたちも、私もいて。

なんだかたまらなくなって、手を伸ばす。指の先が届いた、そう思ったら彼らはまるで泡のように消えてしまった。




嗚呼、あと少しだったのになあ。




「アルヴァ…!しっかりして!!」


リナリーちゃんと一緒にゆっくり体を起こしていると、ラビくんが下から勢い良く現れた。その肩に背負われているのは、ぐったりとしたアレンくんで。

「ラビ!」
「アレンくん…!?」
「!?」

ティキ・ミックと対峙した二人の目を見て、気づいてしまった。

「オレにつかまれ!!」

ラビくんが叫んだ時にはもう、下にいたはずの奴は私たちのすぐ目の前にきていた。こちらへ向けられた殺気に身震いがする。…早すぎる。

奴の攻撃にいち早く反応したのは、ラビくんだった。私たちを守るようにイノセンスを発動させている。


「…ぐっ……っか…か、いじん…っ」
「直火判!!!」


決まった。でもきっと、すぐに立ち上がってくる。この隙にどこか…どこかへ避難しなくてはいけない。そう、思った時だった。

「ガフッ……な…?」

滲み出る殺気が、私たちの動きを止めた。

奴の手が、ラビくんの体を切り裂く。火判をもろに食らったはずのティキ・ミックは、全く動じていない。それどころか技を打ったはずのラビくんは、崩れ落ちてしまった。

「…ぁ」

気づいてしまった。今まで戦ってきた経験が、【不可能だ】そう言っていた。置かれている現状、皆の疲労を考えても、打開策が見えてこない。

でも、このまま死ぬわけにも、いかなかった。


「いやあぁぁああぁあ!!!」


アレンくんとラビくんが、潰された。その激しい戦いに、ついに床が崩れる。その瞬間、奴の視線がリナリーちゃんを捉えたのを見逃さなかった。


「滅罪ノ檻!!!!!」


奴のふいを突いたのか、それほど強力ではなかったのか。彼女の首に絡みつくダークマターは、滅罪ノ檻の中でほどけるように砂となった。

「…げほ、っ…アルヴァ…ッ」

すかさず倒れるリナリーちゃんを抱きとめて、間合いをとる。視界の隅にうつ伏せで倒れるチャオジーさんが見えた。

「滅罪ノ檻」

技を放った瞬間に、ばちん、と音がなって発動が解除される。強すぎるダークマターの力に弾かれた。やはり奴本体に真っ向から勝負を挑んだのでは敵わない。


「滅罪ノ檻」


微笑みながら近づいてくる奴の、


「滅罪ノ檻」


足が、


「滅罪、ノ」


止まらない。


「うあぁああああぁあああ!!!」


奴の背中越しに、こちらへ走ってくるチャオジーさんが見えた。わずか一刻だけ、そちらへ視線を投げてしまった。


「…っ!アルヴァ!」


素早く巻きつく奴の手が、私の首もとを捉えて離さない。少しの浮遊感の後に目にうつったのは、迫り来る床。そして次に、衝撃。叩きつけられた頭が悲鳴を上げていた。




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